愛媛・大洲市の老舗漬物店が、この秋から、壺で焼いた“壺焼き芋”の販売を始めた。なぜ、漬物店がサツマイモなのか。高齢化が進む地域で、サツマイモ栽培を復活させたいと願う老舗漬物店の取り組みを取材した。
漬物店が“焼き芋”を販売するワケ
大洲市の老舗漬物店「玉井民友商店」の直営店「玉井漬庵」にポツンと置いてある壺。
玉井民友商店・玉井友和専務取締役:
この壺で焼いております。この中に今、焼き芋があります
壺の中には芋がぐるっと一周並んでいて、この時点でいい香りがした。蜜もたっぷりでおいしそうだ。
焼きたてを割ってみると、湯気が立ち上るホカホカの壺焼き芋。玉井民友商店が栽培から携わり、2022年から売り出している大洲産のサツマイモだ。
しかし、なぜ、漬物店でサツマイモなのだろうか。
玉井民友商店・玉井友和専務取締役:
大洲で昔から契約してくださっている農家さんの高齢化が進んでまして、ゆくゆくは弊社の方でも農業に踏み入れていかなきゃいけないなということから。大洲の上須戒の地区で昔から観光いも園をやっていたということで、今は閉園されてやっていなかったんですけど、たまたま弊社の方で携わっていた方がいらっしゃったのと、若手の農家さんが興味を持ったということで、地域活性化につながればと思って
上須戒地区は、大洲市中心部から車で20分の山あいにあり、玉井さんが農家に声をかけ、2022年からサツマイモの栽培を始めた。上須戒地区には、2006年に観光いも園ができ、子どもたちでにぎわっていたという。
大洲市の農家・米澤宏仁さん:
そのときは団体さんとか、保育所とか、大洲市の全部の保育所に来ていただきましたね
そんな観光いも園も、5年前に閉園、サツマイモ栽培も途絶えてしまった。
上須戒のおいしいサツマイモをもう一度
日当たりと水はけがよく、サツマイモ作りに合ったこの上須戒の地で、2022年、サツマイモ復活を目指す取り組みが始まった。
現在、6アールのほどの畑でベテラン農家と若手農家の3人が、紅はるかと金時芋の2種類を栽培している。
大洲市の農家・米澤宏仁さん:
ここで作った芋に関しては、昨年もおいしかったし、ことしも甘みもあるって近所の人らの声も聞きます。自信を持っております
大洲市の農家・水本福泉さん:
大きさもですが、形がいいのもできればいいなと思って作っております
丹精込めて作った上須戒産のサツマイモのおいしさを広く知ってもらおうと、玉井さんが2023年に始めたのが、壺焼き芋の販売だ。
玉井民友商店・玉井友和専務取締役:
壺焼きっていうのが和のイメージにも合いますし、じっくり焼いて、サツマイモのおいしさを一番引き出すので、壺焼きっていうスタイルにしようと思いました
専用の壺の中に、炭火と芋を入れ、3時間かけてじっくり焼いた焼き芋は、サツマイモ本来の甘さを引き出すという。
テレビ愛媛・鈴木瑠梨アナウンサー:
しっとり!甘いです!蜜がものすごく多くて、かまずとも、口の中でとろけていくような食感です
驚きのおいしさにリピーターも
壺焼きいもの販売はスタートしたばかりで、現在、週1の不定期で限定10個ほどだが、一度食べた人は、そのおいしさに驚き、リピーターも多いという。
玉井民友商店・玉井友和専務取締役:
過疎化が進んで人が減っている状況なんですけど、こういったプロジェクトを含めて、若い方に参画していただいて、また昔みたいに盛り上がってくれたらと思います
大洲で漬物店が始めた新たな取り組み。サツマイモで、大洲の農業の活性化を目指す。
(テレビ愛媛)