新たな旅のきっかけとして人気を集めている「鉄印帳」。神社や寺でもらう御朱印の鉄道バージョンだ。鉄印コレクターを探し出し、そのディープな魅力を探った。

ローカル鉄道の救世主!?

ゆったりと流れる時間。車窓から眺める美しい景色が、日々の忙しさを忘れさせてくれる。そんなローカル鉄道の新たな魅力として鉄道ファンを楽しませているのが、鉄印帳だ。第三セクター鉄道等協議会などが2020年7月に販売を開始した。1冊2200円の鉄印帳を持って指定された駅に行けば、御朱印ならぬ「鉄印」を1枚購入することができる。加盟するのは全国40社のローカル鉄道。石川県内ではIRいしかわ鉄道とのと鉄道が参加している。

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IRいしかわ鉄道営業係の濱田知幸さんは「10代から70代くらいまで幅広い年齢の方に購入いただいております。鉄印には社名が入っているので、この鉄道を選んで乗ってわざわざ来ていただいているんだな、というのを感じています」と話す。

IRいしかわ鉄道 濱田知幸さん
IRいしかわ鉄道 濱田知幸さん

印帳が生まれたきっかけは2020年、新型コロナの流行で観光業が大きな打撃を受けたことだった。のと鉄道の山崎研一さんは鉄印帳について「コロナ禍、お客さんがいない中結構売れて、私たちもだいぶ助けていただいた」と話す。のと鉄道ではコロナ禍前の2019年度に61万7000人余りだった乗客数が、感染が拡大した2020年度には約42万人と3割以上落ち込んだ。のと鉄道は鉄印帳の発売当初から期間限定の鉄印を積極的に打ち出してきた。「一番すごい人だと2巡目3巡目、全部集められても2回目3回目というお客様もいらっしゃるので、結構浸透してきているのかなと思います」。

のと鉄道 山崎研一さん
のと鉄道 山崎研一さん

すべて集めると鉄印帳マイスターに

熱心な鉄印コレクターは全国各地にいる。石川県金沢市に住む池田知歌子さんもその一人だ。鉄印を貼る鉄印帳だけで11冊集めた。「もともと鉄道好きで、鉄道にいろいろ乗りに行ったりはしていたんですけど、御朱印みたいに集めるものを作るっていう情報が入ってきて、鉄道好きな仲間の中でちょっと盛り上がりまして」と鉄印集めを始めたきっかけについて話す。

池田知歌子さん
池田知歌子さん

池田さんが最初に買ったのは紺色の鉄印帳。発売直後、金沢駅の窓口で手に入れた。鉄印帳を開いてみると表裏すべてのページに鉄印が貼られている。なんと池田さんは全国のローカル鉄道40社をすべて回っていたのだ。各社の鉄印を全部集めるともらえるのが「鉄印帳マイスター」という称号だ。「鉄印帳を送って承認がもらえる。番号もちゃんと入っているんですけど」。鉄印帳マイスターを示す公認カードを手にした池田さんはどこか誇らしげだ。全国で延べ約1800人に与えられた名誉ある称号が、鉄印帳マイスターなのだ。

めくるめく鉄印帳の世界

池田さんに自慢の鉄印を紹介してもらった。「とってもたくさんあるんですけど、これはくま川鉄道さん。天竜浜名湖鉄道さんのコラボのやつですかね。明知鉄道さんとか…ここもなんか売っている駅が三つあるので。特別鉄印というのもありましたね」と語りだしたら止まらない鉄印の数々。

わたらせ渓谷鐡道は織物の産地ということで、鉄印が記されているのはすべて布だという。「桐生の方なので、織物の産地で有名なところなので。秋は秋の鉄印、冬は冬の鉄印が売っているという感じ」。

わたらせ渓谷鐡道の鉄印
わたらせ渓谷鐡道の鉄印

どんどん紹介してもらっていると机いっぱいに鉄印が広がり、収拾がつかないレベルになってきた。池田さん自身、数が多すぎて枚数を把握できていない。そんな中でも特にお気に入りの鉄印は新潟県の北越急行だ。「一番最近は社長の直筆鉄印で、社長自ら書く日っていうのがあって、この日しかやっていないんですけど」。ローカル鉄道の“社長直筆”が価値を持つのが鉄印の世界だ。

北越急行社長直筆の鉄印
北越急行社長直筆の鉄印

「新しいものが出たらほしいなというのもありますけど、あそこゆっくり見る暇なかったなとかもあるので、一回目で回りきれなかった所を違う視点で見て回りたいし、あと現地でゆっくりできなかったのでおいしいものとか温泉とか、そういうものを楽しみたいというのもあります」と話す池田さん。鉄印帳をきっかけにしてそれまで知らなかった町にも足を伸ばすようになったという。「よく言うところですけど『人生の豊かさは思い出の量で決まる』って旅行好きの集まりで言っているんですけど。まさにその通り。思い出の数が多いほど豊かな人生になるんじゃないかなと思うので」。抱えきれないほどの思い出の量を、あふれんばかりの鉄印が表している。

(石川テレビ)

石川テレビ
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