静岡県議会は1日に12月定例会が開会したがまたしても不穏な空気が漂っている。川勝平太 知事の発言をめぐり、常任委員会が閉会中調査をした上で“不用意である”として訂正を申し入れたにも関わらず拒否したからだ。
県議会に諮っていない案件を懇談で…
6月定例会で川勝知事に対する不信任決議案が提出された静岡県議会がまたまた荒れ模様になっている。
事の発端は10月12日。
川勝知事は経済界との懇談の席で、現在開催中の東アジア文化都市事業に関連して「三島を拠点とした東アジア文化都市の発展的継承センターを置く」「いま土地を物色している」「国の土地を譲ってもらおうと詰めの段階に入っている」「買わないで定期借地で借りる」などと述べたという。
この記事の画像(6枚)この発言が翌13日に報じられると、県議会は最大会派の自民改革会議を中心に「寝耳に水」と困惑した。“発展的継承センター”という構想など知事や県当局から説明を受けたこともなければ、言わずもがな予算化もしていない案件だからだ。
特に川勝知事の場合、前述の不信任決議案の採決で可決まであと1票に迫られたことを受け、7月以降、たびたび「議会とのコミュニケーションを密にする」と“約束”していただけに、自民改革会議は「議会軽視があからさまとなった」と反発。
知事は意に介さずも閉会中調査
川勝知事は「私の思いを語ったもの」「1つのアイデアに過ぎないので何も決まっていないのが現状」と本会議で答弁し意に介さなかったが、発言の真偽や現況について確認するため県議会の常任委員会で閉会中調査が行われることになった。
こうした中、文化観光委員会では県の村松毅彦 スポーツ・文化観光部長が「知事の思い・アイデアが言葉になったもの。まだ検討できる環境には至っていないと認識していた」と明らかにしたほか、総務委員会では京極仁志 経営管理部長が「知事の発言に正直驚いた」「実務的には詰めにまだ至っていなかった」と証言。
また、知事が示した国有地の活用に関わる協議状況について確認するため参考人として招致された東海財務局管財部の野口雅人 次長は「県側との打ち合わせでは利活用方針は検討中で、方向性が見えた段階で相談があると聞いている」と述べた。
訂正申し入れも噛み合わず
このため、総務委員会は調査の結果、知事の発言は「不用意であることが明らかになった」と前置きした上で「何も決まっていないことを『詰めの段階』などとする発言が県議会や県当局はもとより、関係する多方面に混乱をもたらしたことは事実」として、発言の速やかな訂正と今後は軽率・不用意な発言を慎むよう申し入れる方針を決めた。
ところが11月29日。川勝知事は申し入れに来た総務委員会の正副委員長に対して「どういう事情であったのかということをほぼ正確に議員にわかってもらい感謝している」「構想を言うのが私の仕事」と持論を述べた上で「訂正するほどのことではない」と突っぱねた。
さらに12月1日に開かれた県議会の本会議でも「申し入れを真摯に受け止めている」と話す反面、「思いを語ったものであり現時点で何も決まっていない。そのため訂正はしないが今後、県議会で広く議論してもらいたい」と頑なな姿勢を貫いた。
この態度に我慢ならなかったのが自民改革会議のベテラン議員だ。本会議終了後の議員総会では会派の執行部に対して「完全に舐められている。真摯に受け止めるが訂正はしないなんて言葉はない。訂正させなければダメだ」と詰め寄った。
自民改革会議では今後、発言の訂正に向けて県議会全体として何らかの提言を決議できるよう調整していくという。
申し入れには知事に近い会派も同意
これまで自民改革会議と川勝知事は幾度となく対立してきたことから、今回の問題について、中には自民改革会議の“揚げ足取り”と見る向きもあるかもしれない。
しかし、この件に限ってはそうではない。
なぜなら、発言訂正の申し入れは県議会 総務委員会の“総意”として行われたものであり、総務委員には川勝知事を支える会派・ふじのくに県民クラブ所属の議員も複数含まれているからだ。
さらに言えば、申し入れの内容はふじのくに県民クラブの意向を受けて当初の文案よりも“柔らかく”したという背景もある。
川勝知事が今後、訂正に応じることはあるのか。それとも、拒否し続けてさらなる火種となるのか。先行きはまったく見通せない。
(テレビ静岡)