美しい波に夕日が立ち止まる町として全国的にも有名な、愛媛・伊予市双海町。
そんな町の魅力に引かれ、双海町に住み込みで働き始めた大学生に密着した。大阪の大学に通いながら、愛媛との二重生活を送るその理由とは。
愛媛で暮らしながら大阪で学ぶ
「全部好きですね、双海のことは海も山も川も夕日もやし、地元の人もみんな温かい。めっちゃええところやなって感じですね」と伊予市双海町について語るのは、大阪・近畿大学4年生の山岸茶太郎さん。
この記事の画像(21枚)山岸茶太郎さんは「愛媛で暮らしながら大阪で学ぶ」という、ユニークな二重生活を送る大学生だ。
現在、大阪の大学に週1回通いながら、伊予市双海町にある喫茶ポパイで1年間限定で“住み込み”で働いている。初めて愛媛に来たのは2023年の3月だ。
大阪出身・近畿大学4年 山岸茶太郎さん:
農業したいってなって、愛媛にミカン農家さんのお手伝い、まず体験でやってみようかと
人と人をつなぐ喫茶ポパイ
農業に興味を持ち、ミカン栽培が盛んな愛媛へやってきた。宿泊先となったのが、レトロなたたずまいに歴史を感じる、この喫茶ポパイのゲストハウスだ。
大阪出身・近畿大学4年 山岸茶太郎さん:
ここおる方が色んな人と知り合えて、いろいろ大阪ではできんかったこと経験できるんで、経験値アップ的な意味も込めて1年はやり切ろうかなという感じ。でも1番は、オーナーの上田沙耶さん。沙耶さんのおかげで色んな人ともつながれた。そんなつながり、こんな愛媛の田舎でできるのすてきやなと思って双海で働くことを決めました。
喫茶ポパイのオーナーで、伊予市双海地区の地域おこし協力隊として活動する上田沙耶さん。
ここ双海で、祖母の千代子さんが営んでいたレストランを約10年ぶりに再開させ、念願だったゲストハウスも完成させた。
茶太郎さんにとっては尊敬できるお姉さんといった感じだが、そんな上田さんも茶太郎さんの好奇心と行動力には一目置いている。
伊予市双海地区の地域おこし協力隊 上田沙耶さん:
おもてなし精神を豊富にお客さんと話したり、案内してあげたりとかしてあげているのでありがたいなと思います。「茶太郎、茶太郎」ってみんなに覚えてもらって、すごい大事にしてもらっている。
アメリカへの留学経験がある茶太郎さんは英語が堪能で、喫茶ポパイを訪れる外国人観光客には、英語で双海の魅力を発信している。
大阪出身・近畿大学4年 山岸茶太郎さん:
外国人のお客さんが来てここで双海を案内した時に「ここめっちゃええとこやわ」、帰る時に「また絶対に来る」とか言ってくれたらやっぱりうれしいですね。外国人が心地よく過ごせる環境作りに徹したいなと思っています
常連からの叱咤激励で料理も上達
JR伊予上灘駅のすぐ側にある「海に恋する泊まれる喫茶店ポパイ」。
時刻は朝9時。茶太郎さん、きょうの仕事にとりかかる。
大阪出身・近畿大学4年 山岸茶太郎さん:
今から弁当を作るんですけど、仕込みを1時間位でぱぱっと作りたいなと思ってます。料理はほんま全然やってなくて、1カ月くらいでたぶん大体ここのメニューは作れるようになって、お客さんには「きょう味薄いわ」とか言われたりしつつ、改良を重ねつつしていったら、もうだいぶできるようにさすがになりましたね。
未経験だった料理も上達してきた。
そしてこの日、キッチンにはスタッフがもう1人。茶太郎さんと同じ年で現役の学生の鈴木健さんがいた。鈴木さんは東京大学在学中で現在は休学し、この4月から双海に住んでいる。
東京大学・鈴木健さん:
最近、意思疎通が言葉じゃなくてもできてて、良き理解者。同じ学年の人あまり双海におらんので、そういった点でもめちゃくちゃ良き理解者だなと思います。
時刻は午前11時、「喫茶ポパイ」オープンの時間。喫茶ポパイの店一番の人気メニューが、昔懐かしい「中華そば」だ。
大阪出身・近畿大学4年 山岸茶太郎さん:
双海の海でとれたイリコからだしをとって、しょうゆと塩で味付けしている。シンプルなんですけどだいぶ優しめの味で、どこか昔懐かしい味も感じる中華そばになっているかなと思います。
常連のお客さん:
僕、ここのおばあちゃんがやってた時に来てたんですよ、10年くらい前
大阪出身・近畿大学4年 山岸茶太郎さん:
薄かったやつが…
常連のお客さん:
そうそう、しまりが良くなった
こうした常連さんとの何気ないやり取りや、愛ある叱咤(しった)激励も、茶太郎さんがこの場所を愛する理由の1つだ。
破天荒にもみえる二重生活に両親は…
愛媛と大阪の二重生活を送る茶太郎さんは、週1で大阪の大学に通っている。
大阪出身・近畿大学4年 山岸茶太郎さん:
今から大阪に帰りたいと思います。
この日は大学の講義を受けに、なんと8時間かけて車で大阪へ向かう。
―ー大変じゃないですか?
大阪出身・近畿大学4年 山岸茶太郎さん:
もう慣れました、8時間運転。最初の前期は徳島とかで車中泊しなやってられへんかったんですけど、この後期9月くらいから体が慣れてきた。
一見、破天荒にも思えるこの二重生活だが、茶太郎さんのご両親も後押ししてくれたという。
大阪出身・近畿大学4年 山岸茶太郎さん:
愛媛に来ることの抵抗は何もなくて親が。「就職よりお前のやりたいこと見つけてやれ」的な感じで、僕は愛媛来るっていうのも2日前に言ったんですけど、「お前がそうやって愛媛行ってくれる方が、俺は嬉しいわ」みたいに言ってくれて。僕もこんなんやると思ってなかったんで、喫茶店で料理やるとか、ゲストハウスで働くとか、全く考えてなかったんでそれもまたおもろいなって思います。
愛媛での生活も残りわずか… 茶太郎さん将来の目標とは
愛媛にきて8カ月、茶太郎さんの一番のお気に入りの場所がある。喫茶ポパイの屋上だ。
大阪出身・近畿大学4年 山岸茶太郎さん:
ポパイの屋上は高いところにあるので、海が全部見渡せて山もあって、この開放感が抜群にリラックスできる。
愛媛での生活も残りわずか。茶太郎さんにこれからの目標を聞いた。
大阪出身・近畿大学4年 山岸茶太郎さん:
日本の田舎で外国人向けにツアーガイドをやりたくて、双海にきたおかげで僕の将来の道が見えたんでめっちゃよかったなと思います。お世話になってるんで第二の家みたいな感じ。夏休みとか時間あれば、双海に帰ってこようとは思ってます。
双海の二重生活で得た出会いと経験がどんな風に未来を彩っていくのか、その可能性は無限大だ。
(テレビ愛媛)