愛媛県は、人口減少が大きな問題となっており、特に若い女性の県外流出が一因となっている。若い女性を県内に残すため子育て支援や働きやすい環境を積極的に取り組み「ひめボス宣言事業所スーパープレミアム」の認証を取得した企業を取材した。
年間約1000人が県外へ
愛媛県では現在、年間1万人以上のペースで人口が減り続けている
大きな理由の一つとして行政が特に頭を悩ませているのが「若い女性の県外流出」だ。
街の若者は「愛媛県だと就職先がないかなと思って出ようかなと考えてます」「私の住んでる家がすごく田舎なので、(大学卒業して)たぶん戻ってくるとしたら田舎ら辺に戻ってくることになるので、それだったら都会に行きたいなと」「みんな『県外』って言いますよ。都会の方がやっぱり魅力があるんじゃないですか」と、愛媛県から出る選択肢を考えている人が多い。
中でも多いのは22歳~24歳の女性の流出だ。年間約1,000人が就職などで県外へ出てそのまま愛媛に戻って来ない。若い女性が少なくなると必然的に生まれてくる子どもの数も減り、人口減少がさらに加速するという負のスパイラルに。
では、若い女性が県内に残ろうと考えるポイントは何だろうか。
街の大学生は「子育て支援とかが充実してる方が。(子どもが産まれても)働きたいタイプなので、そういうのがあると残りたいな」と話す。
愛媛県男女参画・子育て支援課 横山真紀担当係長:
人口減少は労働力人口や消費の減少につながるもので、企業経営や事業継続に大きな影響を及ぼすものです。地域が持続的に成長していくためには、雇用の場を提供する県内企業・事業所が若年者にとって魅力であるとともに、すべての労働者にとって子どもを産み育てやすい環境になることが鍵になる。
10年ほど前から女性を積極的に管理職へ
従業員約100人でパッキンなど工業部品の製造・販売を手がけている、四国中央市の「ジャスティン」は、若者に選ばれる地域へ、職場環境の改善に積極的に取り組む企業だ。
10月に「ひめボス宣言事業所スーパープレミアム」の認証を取得した。
「ひめボス宣言事業所認証制度」とは愛媛県が2023年8月にスタートさせたもので、女性が職場で活躍し仕事と家庭を両立できるよう取り組む事業所を県が認証し、奨励金で後押しする新たな制度だ。
ジャスティン・種田宗司社長:
愛媛県の人口減少対策につながると信じて、今後とも努力していければと思っております。
基本認証を受けると「出産や育児のため退職した女性の再雇用」「男性従業員の育休取得率アップなどの実績」に応じて20万円の奨励金を県がから支給される。
さらに、「出産した女性従業員の8割以上が仕事を続けている」「男性従業員の育休取得率が100%」など、より厳しい条件をクリアした事業所には「スーパープレミアム認証」として、奨励金100万円が支給される。
その第1号の事業所が「ジャスティン」だ。
ジャスティン・種田万葉企画室長:
みなさん思っていることは一緒なんだなと思うのは、「子育てしながら働けますか?」「これから子どもができるかもしれないが私は大丈夫ですか?」みたいな声をいただく。女性はライフイベントとして「出産」という男性とは違うライフイベントがあります。出産・子育てをしながらどうやって女性がここで輝けるのか。
ジャスティンはすでに10年ほど前から女性を積極的に管理職へ登用するなど、女性目線に立った職場作りに取り組んできたという。
管理職も育休取りやすい環境に
入社9年目の石川千春さん(30)は3人の子どもを育てながら仕事を続けている。
入社9年目・石川千春さん:
正直(働きながら子育ては)大変な面もあるんですけど。子どもが体調悪い時とか休むことも結構あるんですけど、みなさんがサポートしてくれるおかげで私も続けてこられてると思う。(産休から)戻ってくる時もみなさん「お帰り」って迎えてくださって、私を受け入れてくれる環境もあるので、すごくありがたかった。
子育てしやすいのは女性だけではない。
2022年に第一子が生まれた製造部の係長・田中さん(45)は現場の生産ラインには欠かせない存在だが、会社の後押しで平日5日間の育児休業を取得した。
製造部係長・田中誠さん:
妻の助けになりたいという思いがありまして、思い切って取らさせていただきました。子どもを抱いたりできましたし、家事・育児の手伝いもできたのでよかったです。
子育てしやすい環境で人口減少に歯止めを
中小企業にとって従業員が1人休むことは大きな負担だが、「ひめボス」の認証を得ることが一企業だけでなく愛媛全体の明るい未来につながればと考えている。
ジャスティン・種田万葉企画室長:
お母さんが子育てしながらキャリアを積める会社。お父さんが子どもの成長を見守りながら仕事ができる環境。そういう企業がプレミアム認証を取得することで愛媛県で子育てしたいな、子育てしながら家庭を築いていきたいなと思う人が増えていくと、愛媛県全体の人口減少の防止につながると思う。
ひめボス宣言の認証制度が始まって3カ月。認知度は徐々に上がってきたという。
愛媛県男女参画・子育て支援課 横山真紀担当係長:
現在、ひめボス宣言事業所の基本認証を取得したところが105社。
上位認証にあたるスーパープレミアム認証が1社認証している状況。まだまだスタートしたばかり。もっともっと多くの企業に申請していただきまして、この制度が「愛媛のスタンダード」として広く根付くことを期待しておりますので、ぜひ多くの企業に申請していただけたら。
企業の賛同の広がりが期待される。
(テレビ愛媛)