富山・高岡市の「土蔵造り」の建物が残り、曳山の町であることから山町筋(やまちょうすじ)と呼ばれる街で、伝統建築とアートを掛け合わせ、新たな魅力を生み出そうと取り組む男性の活動を取材した。

建築士目線で伝える「土蔵造り」の魅力

ヘリテージネットワークとやま 一級建築士・林芳宏さん:
高岡の山町筋は、明治33年6月に市街地の約6割を焼き尽くす大火にあった。建物の新築の際は、防火構造の建築物にすることが義務付けられたことにより、当時の防火建築物であった土蔵造りが建てられた

山町筋の歴史について解説する、ヘリテージネットワークとやま 一級建築士・林芳宏さん
山町筋の歴史について解説する、ヘリテージネットワークとやま 一級建築士・林芳宏さん
この記事の画像(13枚)

11月、高岡市の山町筋で行われたモニターツアー。
土蔵造りの町屋を建築士の解説でめぐるもので、インバウンドの誘客も視野に、県内に住む外国人も招待して行われた。

3つの町屋をめぐり、土蔵造りの特徴や魅力などを建築士目線で伝えていた。

ヘリテージネットワークとやま 一級建築士・林芳宏さん:
この建物を支えるのに柱がいるが、木だと燃えるので、防火ラインから外は燃えないもので作る。しかも明治なので、すでに洋風のデザインを取り入れている

解説を聞いたオーストラリア出身の参加者は「とても素晴らしいし面白い。歴史も学べるし。また参加してみたい」と話し、フィリピン出身の参加者も「(建物の説明を聞くと)印象が変わった。外国人にも地元の人にも参加してほしい(ツアーだと)思った」と笑顔で話していた。

伝統建築×アートで観光客誘致へ

このツアーを企画したのは、2023年から土蔵造りのまち資料館を管理している東海裕慎さんだ。

東海さん制作のパンフレットと入場券
東海さん制作のパンフレットと入場券

東海さんの本業はデザインやホームページの制作。
パンフレットや入場券は、東海さんが、資料館にある大工道具や金具隠しなど、山町らしい図柄を取り入れ製作したもの。

土蔵造りのまち資料館・東海裕慎さん:
私たちの見せ方というのをデザインなりマーケティングなりで広めて、もう一度、伝統建築として、みんなに見てもらうというのが存在意義でもあるし、やはりデザイナーがやるということで、ここにしかない体験やアートを見てほしい

東海さんは高岡で、今も息づく伝統建築とアートをつなぎ合わせ、観光客を呼び込もうと模索している。

ものづくりの街、高岡で毎年行われる手作りのクラフトを中心に、芸術や文化など新たな魅力を発信する街一体型イベント「クラフト市場街(いちばまち)」。

ことしのクラフト市場街に関わったことで、東海さんは、その思いを強くした。
土蔵造りの歴史ある建物に、現代アートの作品を展示するという新たな活用法を見いだし話題になったからだ。

“すごい”を心の中まで刻む

東海さんはアートの発信拠点にと、これまで活用されていなかった蔵も整備した。築150年のこの蔵は、明治の大火で焼け残ったもの。

土蔵造りのまち資料館・東海裕慎さん:
建物を見るだけだと、すごいねで終わってしまうので、この中でゆっくり過ごすことによって、すごいねを心の中まで刻むというか。(この蔵は)アートの展示にも使えるし、ここでワークショップもできたら楽しいと思う

現在は、資料館で新たに行うワークショップの内容やグッズの販売に向け、富山大学芸術文化学部と共同で開発を進めている。

伝統建築の要素を取り入れ、修復の時に出た木材などの活用も視野に入れている。

富山大学芸術文化学部大学院 人文社会芸術総合研究科・渡邊雅志准教授:
(蔵の棚板)それも削ればきれいになるけど、きれいにした面と経年変化した面をちゃんと残しておいて、フレームを作るといいと思う。何年前ものが分かれば、また違う価値がつくので

土蔵造りのまち資料館・東海裕慎さん:
(観光客が)何回も足を運べるような街が一番いいと思うし、アーティストの方がここにきて新しい発想を湧かせてもらうとか、ここを活動拠点にするとかそういった形で山町筋が発展していけば楽しいと思う

伝統建築×アートで街を盛り上げていきたい。

東海さんは2024年1月にワークショップを公開するほか、アーティストを招き、蔵の中で作品を制作する活動も行いたいと話していた。東海さんの挑戦は続く。

(富山テレビ)

富山テレビ
富山テレビ

富山の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。