教育現場の活性化支援のため、博報堂教育財団が優れた教育活動を表彰する「博報賞」。11月10日に東京都内で表彰式が行われ、愛媛県内からも2校が選ばれた。

愛媛県で選ばれた2校の取り組み

博報堂教育財団が1970年から毎年、国語教育、日本語教育など、6つの領域で優れた教育活動を表彰する「博報賞」。54回目となる2023年度は、全国27の学校や団体などが選ばれた。

西条市立西条小学校
西条市立西条小学校
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西条市立西条小学校
「外国にルーツをもつ子どもが自分らしく生きるための個別最適な学びの追究」
 

新居浜市立別子中学校
「地域とのパートナーシップで、共に未来をつくる“別子ファーム”」

新居浜市立別子中学校
新居浜市立別子中学校

さらに、西条小学校の取り組みは、その中でも特に優れた活動に贈られる「文部科学大臣賞」にも輝いた。両校の取り組みとは?

理解度に合わせて工夫した授業「能力は個々で違う」

西条小学校・藤原利恵校長:
日本語が苦手なことは個性の一つ。苦手なことやできないことは周りの人に助けてもらえばいい。そして、得意なことで困っている人を助ければいい。とてもシンプルですが、これからの社会で誰もが幸せに生きていくためには、とても大切な力と考えております

2023年6月末現在、在留外国人の数は全国で322万人余りと過去最多を更新した中で、愛媛・西条市も近年、造船業などの企業で働く外国人が増え、10月末時点で1,680人、このうち16歳以下は44人で、日本語を母国語としない子どもたちが増えている。

こうした中、西条小学校は2016年に、愛媛県内で初めてとなる「にほんご指導教室」を立ち上げた。
日本語の理解度も学びのレベルも様々な児童ひとりひとりの状況を丁寧に把握することを心がけたという。

現在「教室」には10人が在籍していて、所属する学年の通常クラスで授業を受けるか「にほんご指導教室」で受けるかは本人が自由に選べる。

西条小学校・藤原利恵校長:
能力ってそれぞれ個々で違いますから、このような個別最適な学びが実現できることがすごく大事だなと

9月に転校してきたばかりで日本語がまだうまく使えない人には、それぞれ補助員がつき、丁寧に日本語の指導を行う。

11月10日、通常クラスで道徳の授業に参加した1年生。
感情の絵文字が書いてあるボードを使い、補助員の助けを借りながら、紹介された場面の感情を表す日本語を学んでいた。

社会科を「理解できてうれしかった」と喜び、「楽しかった、楽しい、めっちゃ楽しい」と感想を話していた。

日本語通級クラス担任・吉田薫先生:
子どもたち自身の性格とか特性もあるので、それに合うもの、その子に合うものを支援員とも相談をしながら、子どもたちに合わせて事前に準備をしたり、授業の中で方法を工夫しながら取り組んでいる

今回の受賞では、理解度に合わせて教材や教え方を工夫する丁寧な授業が、子どもたちの前向きな学習姿勢を引き出していると評価された。

ただ、それでも日本語をうまく話せず、小学校を卒業した後、行き詰まる子もいるという。

西条小学校・藤原利恵校長:
社会的な自立であったり、進路ですよね。「進路保障」っていうのを考えた時に、中学校とのつながりであるとか、就職とか進路というところを見据えたサポートとか、体制づくりっていうのが必要じゃないかなと

中学校になった途端、支援が手薄になるのが課題だと話し、今後も増加が予想される、外国にルーツを持つ子どもたちの継続的な支援を呼びかけている。

日本語通級クラス担任・吉田薫先生:
子どもたちは大変やる気はあります。でも、日本語がわからないので授業の内容がわからないってことがたくさんあるので、子どもたちの助けに少しでもなれればなと思って、毎日授業しています

この取り組みが今後、他の小学校や中学校に波及することが期待される。

野菜づくりで地域とつながり、地域を元気に

愛媛・新居浜市の山間部、別子山地区ではとある日、大きく育った野菜の向こうで、生徒が操る小型の耕うん機が勢いよく土を耕していた。
別子中学校が4年前から運営する農園「別子ファーム」だ。

人口120人と、深刻な過疎化に直面する地域の課題を解決しようと、区域外から入学した中学生が提案したこの農園では、中学生自ら野菜づくりから販売までを行う。

別子中学校2年・長尾怜央菜さん:
腐葉土と牛ふんを混ぜて、これから玉ねぎとか植えるんですけど、土を良くするようにやっています

使われていなかった広さ150平方メートルの畑を借りて始めた農園では、農業初心者の生徒たちが、地域の人たちに教えてもらいながら野菜を栽培している。

別子中学校の全校生徒19人は、「総合的な学習」の時間を中心に、栽培だけでなく、野菜の販売を通じて別子山の情報を広報するなど、地域と連携した活動を展開。事業運営の形を学びながら、別子山の活性化を目指している。

今回の受賞では、「何のための活動か常に意識していた点」や、「自己決定から始まり、子どもたちの『やりたい』を大事にしている点」などが評価された。

別子中学校2年・長尾怜央菜さん:
自分たちで様々な案を練って実行していくというところも評価されたと思いました。これからももっと地域の方と、よりつながっていけるような「別子ファーム」を私たちが作っていきたいなと思いました

この快挙に地域の人は…。

生徒たちに野菜づくりを指導した 近藤利枝さん:
(受賞は)励みになると思いますよ。他のメンバーも関わり合いを持ってくれると思う

別子中学校・池田光希教諭:
野菜を作ることが目的ではないので、地域の方といかにつながっていって、地域を元気にしていくのが目的なので、それに沿った活動が、子どもたちから色んなアイデアが生まれてきて、地域の方と関わりながら発展していく、そんなことを期待してます

過疎の地域とつながり、活性化を目指す別子ファームの活動。

丹精込めて育てた野菜は、生徒たちが11月20日にもマイントピア別子で販売し、別子山をPRしたいとしている。

(テレビ愛媛)

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