秋の味覚の王様「マツタケ」の収穫量が激減している。福井ではピーク時の100分の1になっていて、スーパーなどに並ぶことすらなくなっている。専門家の1人は「化石燃料の増加」がマツタケ激減の背景にあると分析する。
今や“絶滅危惧種”マツタケはどこに…
マツタケは、赤松の根に寄生する菌が地上に伸びてキノコになったものだ。香りがよく、また秋を代表する高級食材として人気が高い。2023年は猛暑の影響で、マツタケの収穫時期が2週間ほどずれ込み、10月中旬から本格的な収穫シーズンを迎えた。
この記事の画像(10枚)ただ、マツタケの数は激減しているという情報を聞き、キノコ研究歴45年、福井きのこアドバイザー会・笠原英夫名誉会長と共に山を調査した。訪れたのは福井市にある健康の森周辺の松林だ。
アミタケやヌメリイグチなどの食用キノコはすぐに見つかった。これらのキノコは例年並みだという。しかし、肝心のマツタケはいくら探しても見つけることはできなかった。
笠原さんによると、マツタケは絶滅危惧種になっているという。
実はマツタケは2020年、国際自然保護連合が作成した「レッドリスト」に加わった。レッドリストとは、絶滅の恐れのある野生生物のリストだ。
「化石燃料の増加」などで絶滅の危機に
笠原さんは、「マツタケはずっと減少してきている」と話す。その原因は「燃料革命。それに追い打ちをかけたのはマツクイムシの被害」だという。
戦前、マツタケが共生する赤松は、まきや炭の燃料として利用されてきた。植林や伐採などのため、人が頻繁に山に入っていた。赤松は乾燥した、やせた土地を好む。人が山を往来することで、腐葉土となる落ち葉がたまりづらくなり、結果、やせた土地が生み出されていた。
しかし、高度経済成長とともに木質燃料から、石炭・石油といった化石燃料へと転換した。これにより山に入る人は激減。山林の土は豊かになり、赤松は育たなくなったという。
それを裏付けるデータがある。約120年間のマツタケの生産量の推移からは、化石燃料の使用量が増加すると、そのすぐ後からマツタケの生産量が減少していることが分かる。回復の兆しはみられない。
さらに、追い打ちをかけるように松の天敵「マツクイムシ」が全国に拡大した。松枯れを引き起こし、マツタケの生育が困難になった。
笠原さんは、福井県内のマツタケの生産量について「ピーク時の1%あるかないか。福井にはほとんど市場に出回っていない」と話す。
マツタケを守るためには、数百年かけて赤松の再生を待つしかないという。現在は高級食材として認識されているが、将来的には食することすらできなくなるかもしれない。
(福井テレビ)