中国で犬が人を襲う被害が相次いでいる。
10月には襲われた子どもが肋骨(ろっこつ)を骨折し、腎臓を損傷する重傷を負ったケースも。当局が取り締まりに乗り出す一方で、それに便乗した人間による犬への暴力行為を捉えた映像がSNSで拡散。2021年時点で約4000万匹の野良犬がいるというが、動物虐待に関する法律はない。そうした中、北京市の保護施設では2000匹以上の犬が保護されていたーー。

四川省で…子どもが肋骨骨折に腎臓損傷

10月16日、中国・四川省で犬が人を襲撃する一部始終を防犯カメラが捉えていた。

映像には道路の真ん中を歩く黒い大型犬が映っていて、建物の中から母親と子どもが出てくると、その犬が近づいていく…。すると突然、2人に襲いかかり、母親は犬と子どもの間に入って必死に止めようとするが転倒してしまう。それでも母親は必死に犬と格闘し続け、そのうちに別の人が助けに駆けつけて棒で応戦し、なんとか犬を追い払うことができた。

中国メディアによると、子どもはこの犬に数回かまれ、肋骨を骨折したほか、腎臓を損傷する重傷を負ったという。親子を襲った黒い犬の飼い主がその後、逮捕された。

中国ではこの事件以外にも、道を歩いていた小さな子どもが複数の野良犬に襲いかかられたり、母親に抱きかかえられた子どもが突然、犬にかみつかれるなど、犬が人を襲う被害を捉えた映像がSNSに相次いで投稿されている。

こうした事件を受けて、中国当局は野良犬や大型犬の取り締まりに乗り出した。

人間による“便乗暴力”も

しかし、この動きに便乗し、犬に対して暴力を振るう映像がSNSで拡散されている。

犬が悲鳴を上げているにもかかわらず、何回も何回も犬を殴る男性の映像などが投稿され、「こんなに残忍なんて人間なの?かわいそうなわんちゃん」といった批判や反発の声も上がっている。

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中国メディアによると、2021年の時点で中国国内には約4000万匹の野良犬がいるという。

それでも街中にいる多くの犬はリードがなく、放し飼いされている。
四川省や貴州省など一部ではリードの配布を進めるなど対策を講じているが、中国全体では浸透していないのが実情だ。

北京市保護施設には2000匹超の犬

こうした中、野良犬の問題を解決したいという思いで運営している北京市の施設を取材した。

北京市にある保護施設
北京市にある保護施設

施設には、北京市周辺から2000匹以上の野良犬や飼い主が飼えなくなった犬が保護されていて、去勢や避妊の手術もできるという。

数多くの犬を引き取ってきた施設の代表者・王京涛さんは「中国の野良犬の根本的な原因は、飼育放棄と繁殖の2点であり、この2点をコントロールできれば、この問題は解決できます」と訴える。

中国には動物虐待に関する法律はなく、法制化を進めていくことが重要だとしている。
(「イット!」 11月10日放送より)