広島のカキをヨーロッパへ。広島県がいま消費拡大のターゲットとして狙いを定めているのがEUだ。美食の国、フランスにのり込み、カキとマリアージュが最高の日本酒を現地のシェフやメディアの力をかりて仕掛けた売り込みに密着した。
広島のカキは仏産より大きく肉厚 火を通してもOK
2月に広島県は日本で初めてフランスへカキの輸出を実現。これまで輸出先は、中国、香港、台湾などアジアだったが、中国の日本産水産物輸入規制で影響が懸念される中で、EUへの輸出に期待がかかる。
この記事の画像(26枚)フランスは世界屈指のカキ消費大国として知られるが、広島のカキは、果たして受け入れられるのか?広島県は工夫を凝らした秘策で打って出た。
広島のカキの特徴は大きさ。フランス産のものと比べて大きく肉厚。厚みがおよそ1,5倍ほどあるため火を通しても小さくならないのが持ち味。
ただ、フランスはカキを生で食べる食文化。果たして加熱調理したカキは受け入れてもらえるのか?
そのリサーチのため広島県は、フランスで開催された日本の食文化と観光のイベントに参加した。そこで振る舞ったのは焼きガキ。
加熱したカキを受け入れてもらえるのか実際にフランス人に食べてもらう。
イベント来場者:
初めて焼いたカキを食べた。とてもおいしかった
イベント来場者:
生のカキはよく食べるけど、焼いたカキを今まで食べたことがなかった。生のカキとは違うおいしさがある
用意した焼きガキはあっという間に完売。来場者に広島のカキについてアンケートを行うと、97パーセントが好きと答えるほど反応は上々だった。
カキと日本酒のマリアージュは最高 広島の日本酒もあわせて輸出
広島の日本酒は2014年からフランスに輸出されている。その輸出量は国内でもトップクラス。
フランスでは、パリ以外の地方都市のイベントにも参加している。
フランス・ディジョンで行われた「サロン・デ・ディジョン」はワインのイベントにも関わらず、ワイン以外のアルコールで広島の日本酒が唯一出店を許可された。
イベント来場者:
フランスの“酒”は“日本酒”ではないが、これは本当においしい
イベント来場者:
海の幸やチキンに合うと思う
ブースには日本酒を求める人が次々とやって来た。
そして広島県はパリのミシュラン星つきのレストランで、カキと日本酒のペアリングイベントを開催。星つきシェフに考案してもらったカキ料理に広島の日本酒を組み合わせ7品の特別コースを提供。
このイベントでは広島のカキと日本酒の輸出拡大の相乗効果を狙うことが目的。そこで、食に関する情報を主に発信しているメディアを招待した。
ここで、新進気鋭の星付きシェフが考案したカキ料理が登場。ただのカキフライではなく、表面をアーモンドパウダーで味付けし衣をまとわせカリっと表面を揚げている。
中はタタキ風で生の食感を残し、フランス人に合わせたアレンジでいただける一品。
シェフ シルヴァン・サンドラさん:
カキの身が大きいのでフランス人に合わせてどのように調理するのかをいろいろ考えた
さらにもう1品カキ料理が…カキをシャーベットやムース仕立てにして様々な食感が楽しめるものも登場。
日本酒とのマリアージュも好評 カキと輸出の相乗効果を狙う
ZOOM JAPONジャーナリスト ソフィ・ガレソアさん:
広島のカキは料理にピッタリだと思います。火を通したらとてもおいしくなる
FIGARO VIN ジャーナリスト ジャン・ピエール サッカニさん:
相性は抜群だと思います。日本酒は白ワインと比べてすっきりしているのでカキと相性がいい
広島産カキと日本酒の組み合わせは狙い通りフランス人に好評だったようだ。イベントの成功をきっかけに広島産カキの消費拡大が期待される。
フランスの地元メディアは「広島県のカキはフランス料理を一段と豊かにする」と評価。
「まるで美しい宝石のよう」との声も聞かれた。
広島県 湯崎 英彦 知事:
広島の食材やお酒、カキを含めてとても深い理解をいただけたのでは、素晴らしい手応えがあった。ヨーロッパ全体に知ってもらえるようなイベントや広報をやっていかなければならない
フランスへの広島産カキの輸出は始まったばかり。身の大きさが売りの広島のカキと日本酒のマリアージュはフランスでは、まだ”知る人ぞ知る”味だが、じわじわと広がりを見せる気配がある。
(テレビ新広島)