首里城の火災から2023年10月31日で4年となった。首里城正殿の再建工事は2022年11月に起工式が行われ本格的に進められている。「見せる復興」をテーマに槌音が響く現場で、若き職人と宮大工を束ねる棟梁に工事にかける想いを聞いた。

建方工事を指揮する27歳の若手職人

直径40センチ、長さ7.2メートル、重さは500キロのヒノキの柱。

2023年9月4日、首里城正殿の中央部に位置する国王の玉座・御差床(うさすか)の周囲を支える最初の柱が建てられた。

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正殿の基礎の上に柱と梁を組み立てる「建方(たてかた)工事」は本格的に進み、1階と2階にあたる正殿の下層の部材は、あらかた組み上がった。

提供:沖縄総合事務局 国営沖縄記念公園事務所
提供:沖縄総合事務局 国営沖縄記念公園事務所

建方工事を指揮してきた27歳の若手職人、奥野晃輔さんは、「まず規模がでかいというのと、部材が多いので、足場との取り合いが結構大変ですね」と工事の苦労を述べた。

正殿の柱と梁は500本以上。どこにどの部材を用いるのか、正確に組み上げるための「墨付け」は、奥野さんが事前に施した。

奥野晃輔さんは、「自分の墨付けしたやつが間違ってないか、ひやひやしている状態」「よりよい首里城を建てられるように、自分でできることは全部やろうと思いますし、逆にこの現場を活かして、自分もスキルアップしたい」と意気込む。

30人の宮大工を取りまとめる棟梁

建方工事と並行して木材の加工も進められている。

20代の若手から80代のベテランまでおよそ30人の宮大工を取りまとめるのが棟梁の近藤克昭(かつあき)さん。図面からではわからない屋根の形や反りなど実物大の寸法で描く「原寸図」を1人で手がけてきた。

龍頭棟飾(りゅうとうむなかざり)が乗り、首里城の顔となる唐破風(からはふ)の屋根。

何度も原寸図を書き直し、形を定めてきた。

近藤棟梁は、「原寸で言ったら、やはり唐破風の原寸がなかなか決まらなかったので、本当に大変でした」と苦労を語った。

黄金御殿(くがにうどぅん)の復元にも携わっていた近藤棟梁は、首里城火災を2019年の当日にニュースで知り、何か首里城の力になりたいと思っていたそうだ。

近藤棟梁は、「県民の皆さんが、燃えてしまった首里城を見て悲しんでいる姿とかもテレビで拝見したので、沖縄の人たちが喜んでもらえるような建物になったらいいなと思っています」と、再建への強い思いを語った。

妥協はしたくない 何百年と残ってほしい

2023年10月23日、柱と梁の組み立ては折り返しを迎え、建方を担う奥野さんの姿もあった。

長さ7.2メートル、重さはそれぞれ1.3トンと1.7トンある2本のオキナワウラジロガシは、国王の玉座の真上に位置する「小屋丸太梁(こやまるたばり)」となる。

国頭村で切り出されたオキナワウラジロガシは、2022年に県内各地を巡って首里城まで運ばれた。

多くの人々が直接触り、多くの人々の目に触れた大木は、正殿を象徴する場所の部材に、1本ずつ慎重に据え付けられた。

槌音(つちおと)が止むと、奥野さんもほっとした表情になった。

正殿の建方工事は、屋根を支える「小屋組」を年内に終えることを目標に進められる。

近藤棟梁は、「来年になったら今度は軒廻り、屋根の方の工事が始まっていくので、だんだん形になっていくようになっていきます」と話す。

奥野晃輔さんは、「何百年と残ってほしいですので、妥協はしたくないといです。多くの方にも、見に来てほしいです」と笑顔を見せた。

「見せる復興」がテーマの首里城正殿の再建。

県民や国の内外の観光客のエールを励みに、宮大工たちはきょうも完成の日を目指して黙々と作業を進めている。

(沖縄テレビ)

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