男性から金をだまし取るマニュアルを作った“頂き女子りりちゃん”と呼ばれた女による詐欺事件。11月2日、初公判が行われ、女は詐欺ほう助の罪について起訴内容を認めた。

“りりちゃん”と名乗る住所不定無職の渡辺麻衣被告(25)はSNSなどで出会った男性から恋愛感情を利用して金をだまし取っていた。

渡辺被告が名付けた「頂き女子」は、なぜ増えているのだろうか?そして、なぜ男性はだまされてしまうのだろうか?「頂き女子」やホストクラブの実態に詳しいライターの佐々木チワワさんと番組コメンテーターの菊地幸夫弁護士に聞いた。

「頂き女子」とは一体なんなのか?

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そもそも「頂き女子」とは何なのか、言葉の定義から見ておこう。

近頃よく耳にするようになった「パパ活」と「頂き女子」の違いは、「パパ活」とはデートや性行為の対価として年上の男性から金銭的支援を受けることだ。一方、「頂き女子」はパパ活をさらに悪質にしたもので、恋愛関係を作りウソの悩みを打ち明け、大金を「頂く」。

佐々木チワワさん:
あくまでパパ活は体の関係やデートをする対価として、サービスを提供してお金を頂いているわけですが、頂き女子というのは、うその理由、借金や困っている設定を引き合いに出して男性から多額のお金を引くという行為です。

「頂く」と言っているが、うそをついて金をだまし取っているれっきとした犯罪だが、罪の意識はあるのだろうか。

佐々木チワワさん:
もともと風俗の店舗やキャバクラのお店を通さないで、お客さんから直接金銭を受け取ることを「裏引き」と表現します。そこからこうした行為は「お金を引く」と呼ばれていました。それを渡辺被告が「私たちはお金を引くのではなく、頂いているんです」ということで、「頂き女子」という名前を作って布教し始めたということです。マニュアルの中にも「アフターケアが大切」という文言があるので、バレたらまずいという意識はあったと思います。ただ、お金を引っ張ること自体が達成感や成功体験のようになっている印象があります。

「頂く」という言葉を使っていることから、罪の意識が希薄なように感じるが、やっていることは詐欺だ。

「おぢ」は真面目にコツコツ働て貯金がある男性を選ぶ

頂き女子の生みの親、渡辺被告の手口を見ていく。

渡辺被告は「アパレル会社を立ち上げたが失敗。借金が残った」などとうそをつき、54歳の男性から現金5200万円をだまし取った詐欺容疑で逮捕された。

渡辺被告はターゲットとなる男性を「おぢ」と呼んでいた。どういう人がターゲットになりやすいのだろうか。

佐々木チワワさん:
お金持ちでたくさん毎年稼いでる人よりは、真面目にコツコツ働いて貯金のあるような男性が狙われていた印象があります。具体的に言うと、独り身だったり、もともと風俗店や出会い系で女性を買うような男性。そこから「この子のためなら助けたい」という気持ちを利用されて、中には借金までしてしまう男性もいるという印象です。

だまし取られた金額が5200万円と大きな金額であることにもおどろきだ。

菊地幸夫弁護士:
マニュアルの内容もさることながら、(ターゲットにする男性の)人選ですね。よくこれだけの金額を払える、渡せる、だまされるという人を見抜く力というのが、1番ポイントになるんじゃないかなと思います。

佐々木チワワさん:
出会う手口は自身の勤める風俗店やキャバクラ、出会い系アプリで出会った男性です。LINEを交換したあとで「お金に困っている」等の発言をした時に、「大丈夫?」と事情を聴いてくれたり、何か助けるようなそぶりを見せる男性からはお金を引っ張りやすいとみられていたと考えられます。

近づいてくる男性の資力はどのように確認しているのだろうか。

佐々木チワワさん:
まずは少ない金額からコツコツ初めて、大きな理由をつけて金額を大きくしていくのだと思います。

「頂き女子」立件のポイント

渡辺被告は自分が作成した「頂き女子りりちゃんのみんなを稼がせるマニュアル」を1セット3万円で、約1000人に販売していて、詐欺を手助けしたとして詐欺ほう助罪でも逮捕されている。

渡辺被告が作成したマニュアルがどういうものなのか、一部抜粋してみていく。

・設定が大事!例えばDV家庭内暴力を受けていたから家が嫌だと伝える
・お金が欲しいと伝えるのはNG。助けるよと相手に先に言わせましょう

このマニュアルのどこが男性をだます上で効果的なのだろうか。

佐々木チワワさん:
渡辺被告の手口として、「助けたい」と思わせたりとか「この子には僕しかいないんだ」という風に思わせるところと、「僕が助けたら一緒に幸せになれる」「一緒になれる」といった恋愛感情を利用したという印象です。

さまざまな設定をしているが、どこからが詐欺あたるのだろうか。

菊地幸夫弁護士:
なかなか難しいと思います。例えば適当なことを言っておごってもらうことなんて日常茶飯事でたくさんあると思います。厳密にいえば、それもうそを言って相手から金品をもらうという意味では詐欺なんですけども、よくあることということで、違法性は高くないと判断されます。だけど今回のは最初からだますという意図が明らかで、金額が非常に大きかった。あとは繰り返されている、マニュアルをたくさん売って被害が非常に広範囲にわたっている。そういうところでこれが明確な詐欺であると立件されたのだと思います。

“貢がせた男”も異例の容疑で逮捕

頂き女子は何のためにお金を取ろうとしているのだろうか?

佐々木チワワさん:
ほとんどがホストクラブであったり、整形費用、中にはメンズ地下アイドルやコンカフェなどの男性への使うお金として頂いているケースが多かったようです。

渡辺被告も同様だったということだ。

頂き女子の背景には、ホストに依存してしまうという負の連鎖がある。

いまSNSで簡単に稼げるお金が増えているので、ホストに貢ぐお金も増えている。そうした状況を知っているホストたちは、より貢いでくれる太客を求めるようになっていて、アイドルのようにSNSで発信したり、恋人のように24時間メンタルケアなどするそうだ。その結果、女性はよりホストにハマっていき、「私が貢いで彼をナンバー1にするんだ」という思いがステイタスになっていってしまう。こういう構図がホストの世界にあるということだ。

佐々木チワワさん:
ただ貢ぐというよりは、それだけの価値を相手のホストに感じていたり、「私が彼の1番でありたい」という感情で、プライドを持ってお金を使っている女性が多いという印象です。

SNSによって依存しやすい状況が作られていることや、パパ活などの簡単に稼ぐ方法への入り口が身近になっているという実感がある。

佐々木チワワさん:
(お金を稼ぐために働く場所が)もともとクローズドだった世界でしたが、今はインスタグラムなどでキラキラした女の子を見つけて、どうしてこんなにお金があるんだろうと思ったら、パパ活のサイトのあっせんだったというケースが非常に多く、夜の仕事やそのような業種へ手を出してしまうハードルが下がってきてしまっているように感じます。

渡辺被告に貢がせたホストの男も異例の容疑で逮捕された。

ホストの田中容疑者らは、渡辺被告が男性からだまし取った金と知りながら、現金約4000万円を受け取ったとして、組織犯罪処罰法違反の容疑で逮捕された。

業界にとってはどのような意味があるのだろうか。

佐々木チワワさん:
今回はあまりに物的な証拠が残っていたことと、客側であった渡辺被告が顔出しをしてどういう風に稼いでいたのかを発信しすぎていた、そしてそのお金を使った相手が田中容疑者であることが分かっていたということが決め手であるとは思います。ホストクラブで大金を使う女性の中には風俗店だけではなく、中にはうそをついて男性からお金を頂いている女性もいると思いますので、今回の件でかなり戦々恐々としていたのではないかと思います。ホストも女性側も今後の身のふるまい方には気を付けるようになるのではないかと思います。

マニュアルの販売が行われていたため、そのマニュアルを手にしてしまう「頂き女子」がいて、そういうお金とわかって使わせるホストもいるという状況だが、この状況をなくすためにはどうしたらいいのだろうか。

佐々木チワワさん:
ホストクラブでホストに使ったお金をもし支払いが遅れてしまうことになれば、その場合はホスト側がそれを負担することになります。なのでホストにも同じようにリスクがあります。その「売り掛け」というシステムや、法外な値段を支払い能力の分からない、不透明なお金を持ってくる若い女性に使わせるというシステム自体を考えるべきだなと思います。あくまで依存症としてこの問題は考えていくべきだと思います。

そこに居場所を求めてしまう人を離れさせるという問題として考えることが必要なのだ。

だまされないためには自分を客観的・俯瞰的に見ることが大切

視聴者からの質問が届いている。

Q:だまし取った金銭が、反社会的勢力に流れている可能性は?

佐々木チワワさん:経営者やホストクラブの店舗によっては可能性は0ではないかなという印象です。確実に100パーセントないとは言い切れないと思います。

菊地幸夫弁護士:
可能性としてはあるでしょうね。歌舞伎町でお店をやるというのはそういうリスクとうらはらという面があると思います。

Q:だまされて取られたお金は戻ってきますか?

菊地幸夫弁護士:
なかなか難しいでしょう。ただ今回、組織犯罪処罰法という普通暴力団相手に使うような法律がホスト側の摘発に使われていて、それは場合によっては裏にそういう組織がいる可能性もあるということです。取られたお金が戻って来るかというのは、(お金のやり取りが)ほぼ現金でやっているので、場合によっては立件の時に押収されてお金が少し残っているという可能性はないとは言えないかもしれないです。

Q:なぜ人はだまされるのか、だまされない対策を知りたいです。

佐々木チワワさん:
本当だと思っていなくてもお金を使ってしまうところがあると思っています。ホストに貢ぐ女性にしても、男性側であっても、お金を払うことで相手に感謝されたい・必要とされたい、「もしかして」という恋愛感情が絡むと特にそういうことが起きると思います。まずは人に相談することや、自分を客観的・俯瞰的に見るといったことから一歩ずつはじめていくことが大切だと思います。今まで使ったお金に後悔がなくても、これから相手に使ったり、わたすお金にためらいが生まれた時点で一回引くべきなのかなと思います。

(関西テレビ「newsランナー」2023年11月2日放送)

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