11月1日、品川駅にあるJR東海本社ビルで、ロボット開発などイノベーション創出促進に係る連携協力協定の締結式が行われた。

出席者は、黒岩祐治神奈川県知事と本村賢太郎相模原市長、丹羽俊介JR東海社長。
現在 相模原市内にリニア中央新幹線神奈川県駅(仮称)が建設中だ。リニアが開通すれば品川駅まで約10分、名古屋駅まで約60分で移動することが可能になる。

神奈川県、相模原市、JR東海が協定締結 提供:JR東海
神奈川県、相模原市、JR東海が協定締結 提供:JR東海
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時速500キロで走行するリニア中央新幹線を軸に、新幹線・高規格道路ネットワークが形成されると、移動時間の大幅な短縮をもたらすため、現状の地理的に結ばれていた経済圏という概念を覆す「世界に類を見ない魅力的な経済集積圏域」、つまり「リニア経済圏」の創出が期待されている。

神奈川県、相模原市、JR東海は、このリニア経済圏のなかで、連携してイノベーション創出を目指すという。

リニア経済圏で研究開発を

その具体的な手段として、ロボットの実用化、宇宙開発、新素材発明などに係る研究開発の推進などがあげられている。宇宙開発が入っているのは、相模原市にJAXA・宇宙航空研究開発機構があるからだろう。神奈川県と相模原市は、県の指定する「さがみロボット産業特区」制度をバネに、企業誘致、起業支援などを通じて雇用創出と地域活性化を目指す。

リニア新幹線 山梨実験線
リニア新幹線 山梨実験線

JR東海は、リニア中央新幹線沿線の価値を向上させるべく、周辺開発の一環として神奈川県駅(仮称)のできる橋本駅南口付近にR&D拠点を建設し、運営を開始、「人々の日常生活を豊かにするための技術の社会実装」に取り組むという。

R&D拠点のイメージ図 提供:JR東海
R&D拠点のイメージ図 提供:JR東海

同拠点には、既に自動運転システムの開発を手掛けるティアフォーをはじめ、自動運転や宇宙開発等に関して先端技術を保有する複数の企業からオフィス利用に向けて内諾を得ているという。

 本村相模原市長は、「神奈川県、JR東海、相模原市の3者で連携して、多くの皆様が『訪れたくなる駅』、そしてやはり中間駅として世界に先駆けた拠点になれるように取り組んでまいりたいと思います」と述べた。

 黒岩神奈川県知事も「県としても『ロボットあふれるまち』を目指し、3者でしっかり連携して取り組んでいきたいと考えています」と述べた上で、「リニア中央新幹線は、日本がガラッと生まれ変わる国家プロジェクト。神奈川県全体としても大きな飛躍のチャンスで、私自身、ワクワクしている」と期待をにじませた。

神奈川県駅(仮称)は全長約680mの巨大な地下駅
神奈川県駅(仮称)は全長約680mの巨大な地下駅

JR東海の丹羽社長は、「当社は『日本の大動脈と社会基盤の発展に貢献する』という経営理念を掲げており、この橋本駅前の拠点開設を契機に、神奈川県様、相模原市様、地域の皆様と連携して、当社路線の沿線都市の皆様が将来にわたって、希望や豊かさを感じられるイノベーションの創出に貢献していきます」と決意を述べた。

リニア中央新幹線は、単に乗客を速く運ぶだけでなく、移動時間短縮による沿線都市でのイノベーション創出につながるという1つの前例にするため、今回のさがみロボット産業特区制度が生まれた。

今後、ほかの沿線都市でどんなイノベーション構想が発表されるか、注目される。

リニア中央新幹線は品川―名古屋間の2027年開業を目指していたが、静岡工区の工事が進まず、開業は遅れる見通し。開通すれば、品川と名古屋を40分で結び、新たな巨大都市圏が誕生すると見込まれている。

大塚隆広
大塚隆広

フジテレビ報道局国際取材部デスク
1995年フジテレビ入社。カメラマン、社会部記者として都庁を2年、国土交通省を計8年間担当。ベルリン支局長などを経て現職。
ドキュメントシリーズ『環境クライシス』を企画・プロデュースも継続。第1弾の2017年「環境クライシス〜沈みゆく大陸の環境難民〜」は同年のCOP23(ドイツ・ボン)で上映。2022年には「第64次 南極地域観測隊」に同行し南極大陸に132日間滞在し取材を行う。