使っていない時期の田んぼに水を張り地下水を生み出す「湛水(たんすい)事業」。これまで熊本県の白川流域では春から夏にかけて行われてきたが、これをさらに冬の期間も行おうという取り組みが2023年度から大津町の一部の地区で始まり、11月なのに田植え前のような光景が広がった。

年間100万トンの水を地下に蓄える

熊本・大津町の瀬田地区で2023年度から始まったのは、冬の間に水を張る「冬期湛水事業」で、11月1日に田んぼに水が入れられた。

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冬期湛水は地元の土地改良区が、上井手など6つの用水路の水を冬の間も使用できる「慣行水利権」を2022年12月に取得。
さらに地元の農家が立ち上げた協議会が協力することで実現した。

協力農家15人が、11月から3月まで6.7ヘクタールの水田に水を張り、少なくとも100万トンの水が地下に蓄えられる計算だ。

瀬田地区水田湛水協議会 瀬川友次会長:
河川の今流れている上井手、下井手の水源地、堰は全部、瀬田地区なんです。瀬田の方たちが先代からずっと水門の管理をされて大津、菊陽を潤す上井手・下井手の川を管理をされていた。農業があって水があるということで、熊本の水を守っていかなきゃならないかなという気持ちに、皆さんがご賛同いただいたということだと思います

熊本県環境立県推進課 吉澤和宏課長:
地下水を守る大きな取り組みになると思います。まずは、この地域で冬期湛水が成功する。それを見ていただいて次の地域、次の地域と広がっていければと思います

地下水を使う量と蓄える量のバランスを

この地域は熊本市の地下水にとって重要な場所で、2004年から熊本市と大津町、菊陽町の3者で協定を結び、湛水事業が始まった。

これまで行われてきた湛水事業は、ニンジンや麦と大豆などの畑の使っていない時期に水を張り、地下水を生み出すというもので、春から夏にかけて行われてきた。

地下水減少を食い止めるなど大きな効果があったものの、涵養(かんよう)量は近年頭打ちで、台湾の半導体製造大手・TSMCの進出で想定される取水量増加分をどうまかなうのかが課題となっていた。

そこで目を付けたのが、稲作を行っている水田の使っていない時期に水を張る冬季湛水で、瀬田地区の取り組みで生み出される地下水は、少なくとも年間100万トンだ。
これは、TSMCの年間取水量の3分の1となっている。

(テレビ熊本)

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