富山県の石川県との県境に近い小矢部市の北蟹谷地区で、約60年前まで行われていた力比べ大会「盤持ち石大会」が復活した。地域の恒例行事が復活するきっかけは、ある男性の“驚きの行動”だった。

昭和時代に衰退したはずの大会が…

小矢部市北蟹谷地区では、明治から大正初期にかけて「盤持ち石」や「力石」と呼ばれる重い石を持ち上げて力自慢を競う大会が盛んに行われていたが、昭和の時代に衰退。今では神社の境内に石が置かれているだけだった。

境内に石が置かれているだけに…
境内に石が置かれているだけに…
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しかし10月21日、北蟹谷地区にある棚田神明社では、約60年ぶりに復活した「盤持ち石大会」に子どもから大人まで25人の力自慢が集まった。

ひときわ大きな石を持ち上げる男性
ひときわ大きな石を持ち上げる男性

会場には、ひときわ大きな石を持ち上げる男性の姿があった。実は、この男性の“驚きの行動”が、大会を復活させるきっかけになっていた。

「盤持ち石が勝手に動いた」

金沢市に住むこの男性「そばつぶ」さんは2年ほど前から、各地にある「盤持ち石」を持ち上げ、その様子をSNSに上げている。

2022年9月、棚田神明社にあった盤持ち石を持ち上げることにしたそばつぶさん。

木の陰りに石が6個あったが、この場所だと持ち上げにくいと思い、違う場所に勝手に移動させてしまったという。

そばつぶさんは盤持ち石を動かしたあと、元あった場所に戻さなかった。しばらくすると「神明社の盤持ち石が勝手に動いた」と地元は大騒ぎに。地元の女性は「神様が石を引っ張ったと思った。神様、仏様がここにいると思って信じた」と話す。

さらに地元の新聞社などが取り上げたことから、騒動が大きくなっていることを聞いたそばつぶさんは、棚田神明社の神主に正直に告白し、真相が判明した。

盤持ち石の知名度を上げたかったと話す「そばつぶ」さん
盤持ち石の知名度を上げたかったと話す「そばつぶ」さん

そばつぶさんは、盤持ち石が世に知られていないことはわかっていたため、知名度を上げたいと思っていたというが、「まさかニュースになるとは思っていなかった」と話す。

これまで盤持ち石の存在すら忘れられていたが、この出来事をきっかけに、自治会で地域の交流を増やそうという機運が高まり、復活することになった。

60年ぶりの大会で地域に笑い声響く

約60年ぶりに復活した盤持ち石大会。小学生から大人まで5部門に分けて、膝まで上げると「初級」、腰まで上げると「中級」、胸まで上げると「上級」の認定書が交付された。

胸まで上げると歓声が沸いた
胸まで上げると歓声が沸いた

参加した人からは「楽しかった」「地域の振興にもつながるし、地域の団結、温かさを感じたのでいい大会だと感じた」と弾んだ声が聞こえた。

北蟹谷地区盤持ち石大会実行委員会の福原英樹実行委員長も「棚田地区は農村地区で人の出入りも少ないが、かつてのにぎわいを復活できて喜んでいる」とうれしそうだ。

「これからも知名度・理解を広めたい」

1人の男性がとった驚きの行動がきっかけで、復活した恒例行事。当の本人も、盤持ち石を知る機会が増えることを望んでいる。

そばつぶさんは「最初、私が起こしたことで皆さんに迷惑をかけて申し訳ないと思っていたが、まさかこのような明るい展開になるとは思っていなかったので、本当にうれしい」と話す。そして「力石(盤持ち石)はまだまだ世の中に埋もれた存在なので、知名度と理解を広めたい」と意気込んだ。

60年ぶりの復活。何がきっかけになるかわからないものだ…。小矢部市の北蟹谷地区では2024年以降も、地域持ち回りで「盤持ち石大会」を継続していくことにしている。

(富山テレビ)

富山テレビ
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