日本を訪れる外国人の数が戻ってきている。2023年4月に日本を訪れた外国人の数は、2019年の4月と比べて約7割まで回復した。京都や大阪・ミナミは連日、観光客でにぎわっている。
そんな中、観光客には今一つ知られていない大阪・泉佐野市で、“1泊15万円の富裕層向けツアー”が企画された。その狙いとは?

観光地として認知されずツアーを企画

大阪の南西部に位置し「関西国際空港」がある泉佐野市では、近年、ホテルの建設が相次ぎ、2023年に入ってからすでに3棟がオープンしている。

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中でも、3月に開業した「OMO(オモ)関西空港 by 星野リゾート」は、関西国際空港から電車でひと駅とアクセスが良く、客室から飛行機を見ることもできる。

OMO関西空港・中里剛総支配人:
たくさんいろんな国から来ていただきまして、国内で旅行された後、最後に関西国際空港から帰国予定のお客様が宿泊されるケースが多いと思います

外国人観光客のおかげで潤っていそうな泉佐野だが、ホテルが立ち並ぶ南海・泉佐野駅周辺の商店街では、こんな声が…。

街の人:
目的はここ(泉佐野)ではないと思います。みんな大阪(市内)とか京都の方へ行くんですよ

街の人:
大阪(市内)に行くんちゃいますか?皆さん

街の人:
(泉佐野に)留まってはいないですね、少ない。スルーですね

泉佐野は空港から近すぎるあまり、京都や大阪市内に行くための“通過都市”になっているということだ。日本に訪れた外国人観光客に、泉佐野を知っているか聞いてみた。

アメリカから訪れた人:
旅行の前は知らなかったけど、今は分かったよ

香港から訪れた人:
分からないね

オーストラリアから訪れた人:
泉佐野は関西国際空港からとても近い。きのう遅くに到着したので、宿泊に便利だなと思いました

泉佐野は、外国人観光客に“観光地”として認知されていないようだ。そこで、“関空から近いだけじゃない!京都や大阪に負けない魅力がある”と、泉佐野市と民間業者が協同し、一般社団法人「泉佐野シティプロモーション推進協議会」を立ち上げ、市の魅力を発信することになった。

そこで協議会が企画したのが「インバウンド狙い撃ち!1泊2日15万円の富裕層向けツアー」だ。なぜ、このようなツアーを打ち出したのだろうか?

泉佐野シティプロモーション推進協議会・森川武CFO:
このツアーでは、富裕層のインバウンドの旅客をターゲットにしております。その中で、やはり唯一無二の滝行体験やクルーズ体験という、その価値を提供したいなと思いましたので、あえて高価格帯を設定しました

ツアーのモニターに密着!

泉佐野ならではの体験とは?外国人観光客は本当に満足できるのか?フィリピン、ロシア、カナダ、アメリカ出身の男女4人がモニターとして参加するということで、密着取材した。

まずは「大阪湾」を満喫する体験だ。泉佐野が誇る大阪湾で爽快なクルージングを楽しむ。空を見上げると頭上近くを飛行機が通り過ぎ、迫力満点!

アメリカ出身のシェイさん:
すごくかっこいいね。最高だわ

ロシア出身のリザさん:
素晴らしい

まさに、泉佐野の立地を活かした体験だ。

クルージングの後は、大阪湾の新鮮な魚が水揚げされる「青空市場」へ。外国人観光客には黒門市場が有名だが、地元の買い物客でにぎわう青空市場は、観光客が来ることも少ない穴場スポットだ。

アメリカ出身のシェイさん:
とても安いね。買いたいけど、保管しておく場所がないわ

カナダ出身のベンコさんは、新鮮な生ガキを購入した。一口食べて「おいしい!」と笑顔を見せた。さらに、午後2時から行われる“競り”は一般客も見学可能なので、見学すればより貴重な体験ができそうだ。

続いては、初代の泉佐野市長が住んでいた古民家でお抹茶を点ててもらい、日本文化を堪能する。しかし一人、辛そうな表情の人が…。

茶道の先生:
どうぞ足を崩してください

フィリピン出身のジャンさんは、正座が耐えられなかったようだ。

温泉や地元の美食を堪能

泉佐野といえば、大阪随一の温泉郷「犬鳴山温泉」が知られている。今回は「不動口館」という旅館に宿泊する。お部屋には露天風呂がついている。

カナダ出身のベンコさん:
すごい!素敵な部屋だね

女性陣は浴衣を着て夕食を楽しんでいる。泉佐野が誇るブランド豚「犬鳴ポーク」など、地元のグルメを味わえるメニューだ。

アメリカ出身・シェイさん:
とても柔らかいね

ロシア出身のリザさん:
クリーミーだね。とてもおいしいわ

さらに、泉佐野で採れたお米を使った釜めしを食べようとしたが、「少し休憩しようかな」とリザさんはお腹いっぱいの様子だ。地元の美味を堪能した後はゆっくり温泉に浸かり、旅の疲れを癒した。

ツアーの目玉は“滝行体験”

ツアー2日目は、一番の目玉「滝行」体験だ。澄み切った小川が流れる山道を、森の香りを楽しみながら散策すること30分…。まずは七宝瀧寺で、滝行の指導をする修験者に挨拶する。4人は修験者の衣装に興味津々だ。安全祈願し、白装束に着替えたら、いざ滝行へ。

修験者に気合いを入れてもらい、冷たい滝に打たれた一行。初めての滝行体験の感想は?

フィリピン出身のジャンさん:
とても寒くて震えていました。(滝行)体験が終わった後は、爽快な気分になってリラックスできました

アメリカ出身のシェイさん:
滝行を体験することは私の夢で、自分の中に宿っている力を感じたかったんです。まさにそんな経験ができたと思います

滝行の後に参加者に配られたのは、ふるさと納税の返礼品で有名な“泉州タオル”だ。ここでも泉佐野をアピールする。

カナダ出身のベンコさん:
とても柔らかいね。水をしっかり吸収してくれそう

この日はもう一つ、「護摩祈祷体験」にも参加した。アメリカ出身のお坊さんに祈祷してもらい、神秘的な時間を過ごした。

「もう少し付加価値をつけられる」

これで1泊2日のツアーは終了だ。参加した4人は、15万円の価値を感じたのだろうか?

アメリカ出身のシェイさん:
コスパがとても良い旅だったと思います

泉佐野ならではの体験がたくさんできたと満足した一方、こんな意見も。

ロシア出身のリザさん:
護摩行はとても素敵でした。でも何が起きているかよく分からなくて。もう少し説明があっても良かったかもしれないです。もし私が旅行客であれば、それぞれの体験を楽しむ時間があまりなかったと思います

改善すべき点もいくつか見つかったようだが、今後は?

泉佐野シティプロモーション推進協議会・森川武CFO:
15万円の価値があったのかお尋ねしたところ、十分価値がありますよとのお話もいただきましたので、むしろもう少し付加価値をつけられるところはつけて、少し高くても、価値が分かるお客様には受け入れていただけるのではないかと思います

強気な泉佐野だが、1泊15万円の“体験”を売りにしたツアーに、富裕層は来てくれるのだろうか。ローカルならではのコンテンツを発信することで、グローバルに通用するのか、泉佐野の挑戦は続く。

(関西テレビ「newsランナー」10月18日放送)

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