2023年4月に愛知・名古屋市千種区にオープンした「TOMO CAFF’E(トモカフェ)」は、おいしいだけでなく、麹などの発酵調味料で体にやさしくヘルシーと評判になっています。カフェのオーナーは50代の女性で、起業のきっかけは40代に患った大病。今も病気と付き合いながら、食の大切さを伝えたいと奮闘しています。

栄養バランスに気遣った品ばかり…新しくオープンした総菜店

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名古屋市千種区の「星が丘テラス」に、2023年4月にグランドオープンした、食の館「ザ・キッチン2」。

「TOMO CAFF’E」はその1階に入っています。

ショーケースにずらりと並ぶのは、でき立てのお総菜です。

ここから好みのメインメニューを1品と、サイドメニュー3品を選ぶ「えらべるプレート」(1,350円~)は人気の看板メニューです。

他にも、野菜の水分だけで煮込み、ルーやラードを使わずスパイスで仕上げた「トマトで煮込んだキーマカレー(1,100円)」や…。

米麹と納豆を合わせた腸活におすすめの「米麹×納豆のW発酵!こだわり納豆麹丼(1,000円)」など、どれも栄養バランスに気遣ったヘルシーメニューばかりです。

「えらべるお創菜だけ弁当」は1,500円からで、テイクアウトもできるとあって、オープン以来、その人気は高まり続けています。

ほとんどのレシピを考案したのが、この店のオーナー・早川友子さん(58)です。主婦として2人の女の子を育てながら、2015年、自ら会社を興しました。

献立作りでこだわりっているワードが“まごわやさしい”です。

早川友子さん:
大事にしているのが、“まごわやさしい”という合言葉がありまして。まめ、ごま、わかめなどの海藻類、やさい、さかな、しいたけなどのきのこ類、いも類。7つの食材を揃えると、おのずと栄養バランスが取れる

和食の基本食材の頭文字を並べた「まごわやさしい」。7つの食材をなるべく1食で全部とれるよう、各レシピにバランスよく取り入れています。

早川友子さん:
どこかで何かを買えばお腹が満たせる時代になってきて、消費者として何を食べてお腹を満たすかを考えなきゃいけないと思っていたんです。1人でも多くの人に伝えられるのであれば、伝えたいという思いで

仕入れや材料にこだわり 特徴は塩麹などの自家製発酵調味料

早川さんのポリシーは、必ず自らの目で確かめて仕入れていることです。この日やってきたのは、豊富な生鮮食品が揃う愛知・尾張旭市のローカルスーパー「生鮮食品市場 アロス 尾張旭店」。

このスーパーは、特に鮮魚が充実していることで知られていて、「まごわやさしい」の魚を仕入れに来ました。

早川友子さん:
「これをやったらおいしくなりそうかな」が1番なので、主婦の目線の方が強いかもしれないですね

食材選びは、おいしさ第一の主婦目線です。この日は、氷見漁港直送の天然ブリを購入しました。

その場でメニューを考え、食材を買い足すこともあり、毎日でも食べたくなるような品揃えを心がけています。

自ら厳選した食材で作るカフェの料理の大きな特長といえるのが、塩麹をはじめとする自家製の発酵調味料です。

早川友子さん:
腸にいいんです。日本の食に麹は欠かせないものだと思うんです

氷見の天然ブリの下味にも塩麹を使います。麹に含まれる酵素は消化・吸収を促して腸内環境を整えるほか、食材を柔らかくし、うま味を引き出してくれます。

塩麹だけではありません。トマト麹や、ごまだし麹など、10種類ほどを手作りしてあります。

これらをあらゆるメニューに使っています。

がん治療を契機に塩麹の魅力にハマる

早川さんが、徹底して「おいしく、体に良い食事」にこだわるのには、理由がありました。

早川友子さん:
がんになって、抗がん剤で髪の毛が全部抜けてしまって。長女の高校の卒業式にウイッグをかぶって参列した

45歳で子宮体がん(しきゅうたいがん)を患って手術し、一時は抗がん剤治療による体の痛みで、日常生活を送れない状態にまでなりました。苦しみのさなか、一番の気がかりだったのが2人の娘でした。

早川友子さん:
お弁当を作ってあげられない、朝ごはんも作ってあげられない、「いってらっしゃい」も言ってあげられない自分がすごく情けなくなって…

その頃、ちょうどブームになっていたのが「塩麹」でした。「おいしくて体にいい」、その魅力にハマり、それから6年、50歳の時に転機が訪れます。

早川友子さん:
次女が高校3年生の時、夜10時まで塾に行っていて、昼と夜のお弁当を持たせていたんですけど、夜の弁当が傷み始めたころに、どこかで買おうと探しに行ったんですけど、安心なお弁当を見つけられなかったんです。ないのであれば、自分が欲しいものを作ればいいと思って、会社を立ち上げたんです

早川さんは「DEAR FRIENDS」を立ち上げ、娘が通う塾でお弁当の販売を始めました。これを皮切りに、幼稚園などの給食をプロデュース。

その後、名東区のカフェなど3店舗を運営するまでになり、今回3つの店を統合し、新たなスタートを切りました。

早川友子さん:
がんを見つけてもらった私は運がいいんだと思ったんです。ポジティブに考えると、きっと世の中のために必要だから、あの時に見つけてもらったんだと

小さな子供にも伝わるおいしさとこだわり 「1食の大切さを伝えたい」

塩麹に漬けたブリは、ジャガイモ、スナックエンドウ、レモン、トマトと一緒に炒め、店で引いた一番だしで味を整えました。

スタッフに食べてもらい、確認します。

スタッフの女性:
おいしいです

早川友子さん:
メインの料理できました。完成です

この日のメインは、「塩麹漬けブリのレモングリル」に…。

「タラフライ 塩レモン麹タルタル添え」など。

麹の発酵調味料をぜいたくに使った、6種類が並びました。

午前10時にオープンすると、続々とお客さんがやって来ます。

ランチタイムも盛況です。

男性客:
適度な食感、たぶんこれは塩麹のおかげ。発酵食品の力はすごいです。何を食べてもおいしい

女性客A:
デトックスしに来ました。いかに病院にかからずに老後を過ごすかというのは、今の食事にかかっているかなと感じるんで

女性客B:
愛情が伝わるおいしさで、食べていて飽きないし、どの料理も健康にこだわっていてすごくおいしいです

野菜を食べない小さな子供に「食べてほしい」と、来店した女性もいました。

子供連れの女性客:
すっごく食べて。白酢和えとかニンジンとかはいつも食べないんですけど、ご飯もすごく食べてくれた。嬉しかったです。気が休まりました

早川友子さん:
一歩前進ですね。(子供に対して)おいしかった?

大人はもちろん、その思いは小さな子供にまで届いているようです。

早川さんは、がんの闘病後に多発性硬化症という難病を患い、今も頭痛などの症状と闘っています。それでも時間があれば試作を繰り返し、新メニュー作りには余念がありません。

早川友子さん:
気持ち的に楽しさが先になって、頭痛もなくなっちゃっているのかなと思えるぐらいですね。思いは1食の大切さを伝えたいっていう気持ちなので。大変な事があるぶん、すごく嬉しい事もあるので幸せ。会社を作ってよかった

(東海テレビ 2023年6月7日放送より)

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