夏の猛暑の影響などによる生育不良で一部の野菜の高騰が続いている。福岡市中央卸売市場の担当者は「今後、入荷量は回復の見込みだが、現状と同じ高値が続くのではないか」と予測する。また、異常な暑さは落ち着いたが、農家は別の異変に悩まされていた。

「こんなに高値が続くというのはなかった」

安さが売りの福岡市中央区の青果店では、取材した10月12日、ホウレンソウが181円、アオネギが257円、ハクサイが289円などとなっていて、葉物を中心に例年の倍以上の値段だという。

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野菜の価格高騰に買い物客たちも悲鳴を上げていた。

「かいぶつくん薬院店」篠原加代子店長:
夏からずっと高いです。青物とかキャベツ、ダイコン、ハクサイ。そういうのが高い。こんなにずっと高値が続くというのは、私も八百屋さん20年くらいしていますけど、なかったです

「現状と同じ高値が続くのではないか」

なぜ高値が続いているのか?福岡市中央卸売市場「ベジフルスタジアム」を訪ねた。セリ場には全国の生産地から届けられた新鮮な野菜がずらりと並べられている。

午前7時。セリ開始のベルが鳴る。セリ人の威勢のいい声が飛び交い、買い手が次々と品物をセリ落としていく。気になる価格はどうなっているのか?

「福岡大同青果営業促進部」仲野有真さん:
ニンジン、キャベツ、シロネギなどが前年より3~4割ほど高値となっています

2023年は全国各地で高温だったこともあり、生育不良や品質不良、病気などが発生したことで全国的に出回りが少なくなり、高値になっている状態だという。

特に入荷量が減っているというトマト
特に入荷量が減っているというトマト

夏の猛暑の影響などによる生育不良で一部の野菜が高騰。トマトは特に、このところ入荷量が減っているという。

円安などの影響で輸入品のアボカドなども高値に
円安などの影響で輸入品のアボカドなども高値に

またパプリカやバナナ、アボカドなどの輸入品も円安などの影響で高値となっていた。

いま減っている品目は、今後、入荷量が回復する見込みとなっているとのことだが、仲野さんは「現状と同じ高値が続くのではないか」と予測する。

暑さは落ち着いたが…別の異変が

福岡県内有数の野菜の生産地、久留米市北野町。異常な暑さは落ち着いたが、農家は別の異変に悩まされていた。

ホウレンソウなどを栽培している農家に話を聞くと、夏以降、まとまった雨が降っておらず、水不足で野菜の生育に影響が出ているという。

「JAみい青果ほうれん草部会長」荒巻耕太さん:
水分が足りない、雨が…。芽が出ない。種が割れなくて。その雨不足の分、水をかけてあげればポンプやホースなどの設備、人員、燃料も要るんで、いろいろとコストがかかってきますので…

燃料費や人件費などの値上がりで、膨れ上がる経費。さらに肥料の価格高騰が追い打ちをかけている。

「リン酸」などの肥料の原料は、ほとんどが海外からの輸入に頼っている状態だが、ロシアのウクライナ侵攻の影響などで輸入がストップし、価格が2倍以上に跳ね上がっている。

「何もかも上がっているのに収入は減っている…」

現在は、福岡市とJAが協力して開発した割安の肥料を使用するなどして経費削減に努めているものの、それでも限界だと農家は嘆く。

「JAみい青果ほうれん草部会長」荒巻耕太さん:
以前の2倍ちょっとの価格ですね。それこそウクライナの戦争からいきなり上がった状態で…。生産コストが上がった分を販売価格に転換してもらえればですね…。何もかも上がっているのに、自分たちの収入が減っているっていうのが、一番のきつい部分であって、やる気が出ない部分なんですよ

野菜の小売価格の上昇分は、生産コストの上昇分をカバーしきれておらず、経営は年々厳しさを増している。

荒巻さんによると、いま、高齢の同業者は「もう辞めたよ。お前たちがしていいよ」という人が増えているという。「自分たちもこんな状況で、いまから農業ができるのかという心配はある」と不安を語る。

私たちの食卓に欠かせない野菜。どう守っていけばいいのだろうか。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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