愛媛・宇和島市の商店街で行われたイベント。そこにはたくさんの人があふれていた。しかし、平日の商店街は閑散とし、シャッターを下ろして営業していない店もある。
進む「シャッター街化」を防ぐため、活気を取り戻そうとする活動を取材した。

人通りないことをメリットにして開催

9月24日、宇和島市の恵美須町商店街には行列ができ、アーケードは人でいっぱいだった。行列の正体は、この日行われていたイベント「えびすまち商店街マルシェ」だ。

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商店街のアーケード内には、揚げたてのからあげに、イチゴがふんだんに使われたスムージーなどの飲食店や、木材を使って雑貨やおもちゃを作るワークショップ、さらにはストリートサッカーのコーナーなど、17のブースが登場した。

地元から来た客:
結構人が多いと思いました。すごくにぎわってて楽しい感じ

北宇和高校三間分校の生徒:
いつもは人通りが少ないんですよ。だけどきょうは多くてびっくりしています。人通りが多いので、私たちも頑張って売ろうと思います

近くでお店を営む男性:
そこでお店しよるんで、仕込み抜けて来ました。やっぱりいいと思いますよ。若い人もいっぱい出ていて、日曜日はこんな感じであってほしいですね

このマルシェイベントを企画したのは、商店街でベーグルのお店を営む細川晋介さんと、商店街の近くにある宇和島オリエンタルホテルでゼネラルマネージャーを務めていた松田優さんだ。

松田優さん:
(最初は)ホテルでやるマルシェで近くのお店を呼んだりとか、いろんな出店者さんに来ていただいてやっていたんですけど、映画イベントからこちらの商店街をお借りして参加しています

松田さんは元々、ホテルの敷地内でマルシェのイベントを開催していて、その時に出店していた細川さんと意気投合した。商店街の活性化につながればと、2023年6月にアーケードで映画を上映するイベントを開催したところ、立ち見の客が出るなど大盛況となった。

これを受け、今回企画したのが「商店街全体を大きな遊び場」として、一日中遊んで楽しめる「マルシェ」だったのだ。

恵美須町サービスエリア・細川晋介オーナー:
(商店街に)これから店舗が入るという未来がなかなか無いんですね。
そこで、人通りがないことをメリットにして、新しい使い方が何かないかなっていうので、マルシェをする側の方もこういうきっかけで使ってもらえたら、周囲一帯人通りが多くなればいいかなという目的で、お互いに意見があってスタートさせていただきました

この取り組みに恵美須町商店街振興組合の代表は…。

宇和島恵美須町商店街振興組合・矢野博司代表理事:
商店街で今やっているイベントは、行き詰まっているところがあるんですよ。今までの商店街の来客の年代層が若返った、それが一番ありがたいですね

加速する店の撤退…静まる商店街

10月3日に改めて、普段の恵美須町商店街を矢野さんに案内してもらった。平日の商店街は人通りもまばらで、シャッターを下ろしたまま営業していないお店も多くある。マルシェが行われた時のようなにぎわいはない。

宇和島恵美須町商店街振興組合・矢野博司代表理事:
これがここ数年の景色なんですよ。イベントをやると人が集まってくるんですけど、平日イベントが無い日は閑散とした通りになっている

今、全国的にも問題となっている「シャッター街化」は、この恵美須町商店街も例外ではない。中小企業庁の調査では、全国の商店街の平均空き店舗率は13.59%だが、これに対し恵美須町商店街は約27%だという。
大型店の進出や道の駅のオープンなどの影響で、商店街にあった店の撤退が加速した。

このままでは人通りも、お店も無くなってしまう。そこで力を入れたのが、商店街を広場として活用したイベントの開催だ。今回のマルシェをはじめ、現在は週に3回、朝市を行うなど、定期的なイベントの開催を計画し、集客は一定の効果をあげている。

宇和島恵美須町商店街振興組合・矢野博司代表理事:
商店街に目を向けていただくことが今、非常に必要なことなので、なるべく商店街に来て雰囲気を味わっていただきたい

商店街の維持管理は組合員で賄っているが…

しかし、イベントの開催だけでは解決できない厳しい実情もある。

宇和島恵美須町商店街振興組合・矢野博司代表理事:
商店街の維持管理は組合員で全部賄っているんですよ。そのお金がつきたらこのアーケードを維持できない

商店街の顔でもあるアーケードの補修にかかる費用は、年間200万円ほど。各店舗の大家が組合費を支払うことで維持してきたが、これ以上シャッター街化が進むと組合費では賄いきれなくなる。

宇和島恵美須町商店街振興組合・矢野博司代表理事:
僕たちがこの街をもう一度生き返らせるにはあと数年しかないです。ネットで売れるものを商店街で売ってても勝てないんですよ、値段的にも。きょう頼めば、あした(商品が)来るような社会ですからね。
だからこの商店街で、フェイストゥフェイスで売れるもの、そういったものを増やしていって、お客さんと僕らのコミュニケーションが大事になってくると思います

人口減少やネットショッピングの普及が進む中で、岐路に立たされている商店街は、生き残りをかけた新たなカタチを模索している。

(テレビ愛媛)

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