大阪の天王寺動物園で、木の上にのぼって枝を揺らしているチンパンジー。実は、オリから脱走してしまったチンパンジーだ。今日いったい何があったのか、1日の動きを振り返る。

天王寺動物園は来場者を避難させ臨時休園に

カメラマンリポート:
逃げたチンパンジーでしょうか、木にぶらさがっています。周りには飼育員たちが確保する準備をしています

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天王寺動物園を管轄する大阪市によると、チンパンジーが脱走したのは17日の午前10時15分ごろ。動物園はすぐに「猛獣脱出対策本部」を設置したが、捜索にあたっていた獣医師の男性(42)が顔面をかまれてけがをした。

その頃、園内にはまだ遠足の子供たちなど多くの来場者がいた。

場内アナウンス:
園内で緊急事態が発生しております。園内にいらっしゃるお客さまは、落ち着いて職員の誘導に従いながら、移動していただきますようにお願いします

天王寺動物園は安全を確保するために、来園者を全員、園の外に避難させて臨時休業になった。

Q.動物園行く予定だった?
先生:
行けなくなりました。もう帰ります

子供:
サルが逃げた

母親:
今、主人に今日、臨時休業だから困ってるからどこ行こうかなって(相談中)。
そうだね、“てんしば”行ってなんかお昼ご飯食べるわ

Q.どこから来たんですか?
父親:
青森です
Q.動物園行きたかった?
子供:
はい

チンパンジーが園内の木の上にいるのが見つかったため、職員たちは周りで網を準備し、捕獲作戦に乗り出した

午前11時ごろ、チンパンジーに麻酔銃を発射し、命中したということだったが、麻酔がすぐに効くことはなく、落ち着きのない状態が続いた。

その後、追加の麻酔銃が撃たれるも、チンパンジーはなかなか落ち着かない。麻酔銃の針か何かを手に持って遊ぶようなしぐさも見られ…。

しかし午後1時すぎになって、チンパンジーが徐々にぐったりとし始める。木の下には動物園の職員が集まり捕獲の準備を始めた。

そしてついに午後1時半過ぎ、麻酔銃を撃たれてから約2時間半後、チンパンジーは木から落ちて捕獲された。職員数人がかりで運ばれ、獣舎に収容された。

天王寺動物園前の当時の状況を取材

天王寺動物園の前から、当時の状況を伝えてもらった。

坂元龍斗キャスター:
天王寺動物園は臨時閉園となり中に入ることはできません。関係者によると10発以上の麻酔銃を撃って、何発が命中したのか分かっていませんが、途中からぐったりしてきて、徐々に木の下の方に移動していって、午後1時半ごろ木の下に落ちた形になりました

坂元龍斗キャスター:
今回のチンパンジーは、「レモン」という名前で、20歳のメスだということです。天王寺動物園のブログによると、6頭いるチンパンジーの末っ子で慎重な性格であるということです。逃げた理由について明確な情報はまだ出されていません。関係あるかもしれないのが、 実はチンパンジー舎がある目の前の大きなエリアを工事中だそうです。工事中、音がすごくてストレスになってしまうので、仮のチンパンジー舎を北側に設けている状態で、チンパンジーを移動させている最中、あるいは移動させ終わった段階で例えばドアが開いてしまって逃げてしまったのか、そういったことはまだ発表されていなくて、後ほど発表があるのかと思われます

坂元龍斗キャスター:
獣医師の方がけがをしましたが、速やかに閉園してお客さんを外に出し、お客さんにはけががなくて良かったと思いますし、チンパンジ-が園の外に出ることもなく本当に良かったと感じています

専門家「鍵が掛かっていなかったか、何かの拍子に開いたのか…」

チンパンジーはなぜ逃げたのか?動物園の対応に問題はなかったのか?京都大学野生動物研究センターの伊谷原一センター長に聞いた。

逃げた理由について、チンパンジーを仮の住まいに移す期間だったという話があった。今回、脱走ということを聞いて、どういう状況であったと想像できるか?

京都大学野生動物研究センター 伊谷原一センター長:
野放しにしているわけではないので、オリの中か獣舎にいて、たぶん鍵が掛かっていなかったのか、何かの拍子に扉が開いてしまったのか。逃げるとしたらそういった状況かと思います。 あと考えられるのは移動中です。移動させようとした時に隙間ができたのか。普通は獣舎に移動用のケージをぴったりつけて固定して入れるんですね。どうやって逃げたか分からず、はっきりしたことは言えませんが

少しでも隙があればチンパンジーは逃げようとするものなのか?

京都大学野生動物研究センター 伊谷原一センター長:
野生の動物ですから、オリに入れられていれば、外の広い所に出たいです。チンパンジーは好奇心も高いですから、外の世界に出たいと思うことはあるでしょう。知性が非常に高く、身体能力も高いです。映像ではすぐ木の上に登っていたみたいで、あそこまで人間はいけないですよね

知能も身体能力も高く、大人になると“凶暴な一面”も

生態についてまとめると、チンパンジーは知能が高く、身体能力も高い。大人になると凶暴になるという一面もあるという。

過去2007年にも天王寺動物園で1頭脱走していて、 2016年には宮城で、2019年には宮崎で脱走し、いずれも捕獲されている。他の動物よりも逃げようとする性格が強いといったことはあるのか?

京都大学野生動物研究センター 伊谷原一センター長:
逃げるというか、やはり自分の知らない世界が広がっているから、興味を持って出て行くことがあるでしょう。鍵が開いているかどうかは分かります。腕の力が強くて人間は到底勝てない。“凶暴”とありましたが、裏返したら臆病なんです。危険が迫ったら抵抗します。 野生のチンパンジ-が人を襲うことはまずありません。ただ人に慣れている飼育下のチンパンジーですと、人の行動をよく見ていますから、おそらく“自分の方が強い”と分かっています

逃げ出すと捕獲するのは大変なのか?

京都大学野生動物研究センター 伊谷原一センター長:
チンパンジーは危険動物ですから、獣医師さんがかまれたということですが、近づいたらかまれることもあります。だからもう逃げたら麻酔銃で撃つしかないです

音に敏感で騒音がストレスになっていたということはあるのか?

京都大学野生動物研究センター 伊谷原一センター長:
人間より耳がいいです。ただストレスというのはあまり気にする必要はないというか、ストレスがかかっていない動物はいませんから

天王寺動物園では動物の逃走を想定した訓練を実施

天王寺動物園もこれまで動物が脱走した際の訓練はしているのか?

関西テレビ 加藤報道デスク:
天王寺動物園では、例えば大災害が起きた時に猛獣が逃げ出すケースを想定した訓練を毎年やってるんです。各自治体で防災計画の中に、動物園で逃げ出した時の訓練みたいなものもあります。ただあまり細かく書かれてはいなくて、例えば動物にどれぐらいの負荷がかかっているのかをどこまで想定しているかというところは、今後動物園側も考えていかなきゃいけないかもしれません

対策は「逃げないような飼育の仕方」

これからどのような対策が必要だと思われるか?

京都大学野生動物研究センター 伊谷原一センター長:
ちゃんと逃げないような飼育をする必要があります。よくあるミスは鍵の掛け忘れだったりするので、例えば鍵が開いてる時はランプがつくようにしたり、飼育する人間が対策するしかないです。 閉園にしたのは正しいと思います。子供もいっぱいいたようで、獣医師さんのけがはありましたが、他に大きい事故につながりませんでした

 万全を期して対策してもらい、安心して楽しめる動物園にしていただきたい。

(関西テレビ「newsランナー」 2023年10月17日放送)

関西テレビ
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