10月から変更になった、新型コロナに関する国の支援。治療費が一部自己負担となるなど、患者に負担が求められるようになる。こういった現状に、医療関係者からは受診を我慢する人が増え、治療のタイミングを逃してしまうことを懸念する声が挙がっている。

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新型コロナ 変わる医療提供体制

感染症法上の位置づけが、2023年5月に「5類」になった新型コロナ。国はその後も支援を一部継続してきた。この支援が10月から変わる。主な変更点は以下の通りだ。

新型コロナに関する10月以降の国の医療提供体制変更点
新型コロナに関する10月以降の国の医療提供体制変更点

全額公費負担だった高額な治療薬 一部自己負担に
…治療薬は高いもので9万円を超えるものもあり、
 年齢や所得に応じて3000円から9000円の自己負担となる。

入院治療費補助 最大2万円から半減
…5類移行後、基本自己負担となった入院治療費。
 高額療養費制度を適用し、最大2万円が補助されていたが、半額の1万円に

医療機関「空床補償」を 条件付き支給に
…医療機関が新型コロナの入院患者受け入れのために病床を確保しても、
 感染状況が一定の基準を超えるまでは支給されない。

治療薬自己負担で「薬控え」懸念

これまで新型コロナ患者の診察を続け、必要に応じて薬を処方してきた仙台市内のクリニックの医師は、治療薬が一部自己負担となることで、患者が処方を断る「薬控え」が出てくる可能性を指摘する。

コロナだけ3年間ずっと補助が出て無料。検査も無料から始まった。自己負担となったことで、薬を遠慮する方は一定数出てくるのかなと思う
(めざきクリニック 目崎亨院長)

実際に新型コロナの治療薬を例に見てみると、「ラゲブリオ」は5日分でおよそ9万4千円。こうした高額な治療薬に対し、国は年齢や所得に応じて1割負担の人には3千円。2割負担の人には6千円。3割負担の人には9千円の負担を求められることになる。少なからず、薬を遠慮・辞退する人は出てくる可能性があるだろう。

新型コロナ治療薬「ラブゲリオ」価格は5日間分で9万4000円だ
新型コロナ治療薬「ラブゲリオ」価格は5日間分で9万4000円だ

そんな中で求められているのが、「薬の必要性」について医師が正しく判断し、患者としっかりコミュニケーションをとって適切な対応をしていくことだと、目崎院長は強調する。

薬を必ず飲まなければ重症化するわけではなく、治療薬を飲まなくても自然に完治するケースも多い。個々の症例を丁寧に説明して、薬を飲んだ方が良い、飲まなくて良いよという判断をしていかなければならない。一方で、症状が強い人や基礎疾患がある人は薬を飲んだ方がいい。そういった説明を今一層丁寧にしていく必要がある。
(めざきクリニック 目崎亨院長)

めざきクリニック 目崎亨院長
めざきクリニック 目崎亨院長

金銭面への不安から「薬控え」の懸念がある一方、薬が必要でないと想定される患者から「金を支払うので薬を欲しいと言われるケースも出てくるだろう」と話す目崎院長。そうなった場合、医師は処方せざるを得ないのが現状だ。

「病気自体は変わっていない」

また、今回の支援見直しで懸念されることはほかにもある。入院患者や救急患者の対応も行う東北医科薬科大学病院の遠藤教授は、治療のタイミングを逃す「受診遅れ」が出てくるのではないかと話す。

新型コロナに感染したときに、病院に行くとお金がかかるので我慢する。そして本当に我慢できなくなって救急車で運ばれる。その時には病気がかなり進行していて、治療のタイミングを逃してしまっているケースが増えてくる可能性がある
(東北医科薬科大学 遠藤史郎教授)

東北医科薬科大学 遠藤史郎教授
東北医科薬科大学 遠藤史郎教授

上記のケースのような事態にならなかったとしても、病院の受診を控えた結果、投薬のタイミングを逃すといったことも想定できると遠藤教授は話す。症状が出た場合、なるべく早いタイミングで病院を受診してほしいと強調した。
5類に移行されたからといって、病気自体は何も変わっていないのだ。

一般的な感染症へと対応が変わっていく、新型コロナ。国は2024年4月以降、季節性インフルエンザなどと同じ対応にする方向で検討を進めている。

薬の処方や治療を「必要な人が適切に受ける」ことができる環境へ。
今まさに新型コロナの医療提供体制は大きな転換期を迎えている。

(仙台放送)

仙台放送
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