長崎の離島・対馬で続いてきた原子力発電から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分場をめぐる議論。処分場選定の第一段階、文献調査の受け入れについて、比田勝市長は「反対」を表明した。

市長は調査受け入れを反対

2023年9月12日、対馬市議会は処分場選定の第一段階、文献調査の受け入れについて推進する請願を賛成10、反対8の僅差で採択し、最終的な判断が比田勝尚喜市長に委ねられていた。そして9月27日の議会最終日、注目された比田勝市長の発言。

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対馬市・比田勝尚喜市長:
特定放射性廃棄物、最終処分場の文献調査を受け入れない

調査受け入れにNOを突きつけた市長。その理由として「市民の合意形成」を挙げた。

対馬市・比田勝尚喜市長:
それぞれの主張による市民の分断が起こっていることは、まだ市民の合意形成が十分でないと判断しております

傍聴席から見守っていた反対派の市民団体のメンバーからは拍手と喜びの声が上がった。

「核のごみと対馬を考える会」・上原正行代表:
やっぱり市長の“生の声”を聞くまで、安心できなかったけれど、ちゃんと自分の信条で反対されたんだなということで、非常に歓迎をしております

「市民の分断を深めたくはない」

今回の市長の判断を対馬市民はどのように受け止めているのか。

賛成の市民:
気に入らん。人口はピークの時の半分以下よ。生まれてから80年ここに住んでるけど…寂しい

反対の市民:
風評被害とかイメージが、いま観光客がせっかく増えよるのに…。結局、最終的に処分場を持って来るようになる可能性があることを残したくないですね

議会終了後、会見を開いた比田勝市長は、対馬を支える産業に風評被害が発生する恐れがあるとの考えを示した。

対馬を支えるマグロ養殖などの水産業の漁獲高は毎年100億円を超え、漁協によると2022年は160億円にも上ったという。また、韓国からの渡航客を対象とした観光業も盛んで、こうした産業への影響を懸念しているのだ。その上で議論に決着をつけることを強調した。

対馬市・比田勝尚喜市長:
風評被害等が起きれば、水産関係では1割であっても16億円近くが被害に遭う。20億円の交付金ではなかなか耐えられない。私の、この見解を持って「終止符を打ちたい」というのは、私の希望的なものかもしれませんけども、これ以上市民の分断を深めたくはない

しかし「分断を深めたくない」とする市長の思いとは裏腹に、議論が再燃する可能性が浮上している。

「住民投票」で民意を問う動きも

推進派の議員からは「住民投票」で直接、民意を問う動きが出始めているのだ。

対馬市・小宮教義市議:
議会のですね、意思決定を無視した行為だと言わざるを得ません。市長は誰であれ、変わりなく市民そのものの判断ということが、基本だと思いますので

2024年の春には市長選も控えていて、推進派が対抗馬を擁立する可能性もあるという。さらなる分断を招きかねない「核のごみ」をめぐる議論。火種がくすぶり続けている。

(テレビ西日本)

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