秋を迎え、登山する人が増えるシーズンとなった。岡山県北では9月に遭難事故が発生したが、実は今、一人で山に入り、遭難する人が増えているという。
リスクが増加する“単独登山”
コロナ禍の影響で、人の密集を避け、感染リスクが低いアウトドア活動が注目されている。一方で、山の事故は遭難件数、遭難者数ともに2022年、過去最多を記録した(警察庁調べ)。

遭難した人のうち、死者・行方不明者の割合は、複数登山が6%なのに対し、単独登山は14.4%(警察庁調べ)。一人で山に入り遭難するとリスクが高くなることが分かる。
9月3日、津山市と鳥取県にまたがる三原山に一人で登っていた総社市の男性(59)が行方不明になった。

男性はGPSで位置を確認する“登山アプリ”を使って山に登っていた。しかし、山頂目前でアプリの入ったスマホを落としてしまう。そして不明から4日後、男性は登った側と逆の鳥取県山中で見つかり、その後、死亡が確認された。
男性が見つかった場所に近い、鳥取市佐治町余戸地区に住む大野一好さん(75)に話を聞くと、ここ数年、遭難とみられる救急の出動が増えていることが分かった。

余戸地区に住む大野一好さん:
いきなり救急車や救助工作車が、物静かな集落にけたたましいサイレンを鳴らして飛んでくる。そういう事例が近年何回かあった。行方不明・捜索活動というショッキングな場面に出会う
地元民も訪れない“険しい渓谷”
三原山は、余戸地区の人に親しまれた山だ。地元の公民館には水墨画も飾られている。
しかし実際に現場を訪れると、頂上のマッコウを目指す道は、線状降水帯の影響もあって荒れ果てていた。滑落の危険を感じる崖も存在する。そして、男性がスマホを落とした藪(やぶ)は根曲竹(ねまがりだけ)と呼ばれる笹が生い茂り、一度入ると出口が分からなくなった。

余戸地区に住む大野一好さん:
藪をこいで体力を消耗し、疲れた状態の中で根曲竹の藪を通り抜けた。やれやれとホッとしたが、方角も分からないので急峻(きゅうしゅん)な所で足を踏み外した可能性もないとは言えない
スマホを落とした男性は山をさまよったとみられる。
余戸地区に住む大野一好さん:
(男性が見つかった場所は)結構険しい渓谷になります。今、地元で行く人はいません
「安全装備」と「登山届」の重要性
山では何が起きるか分からない。まして、頼る人のいない一人歩きではリスクが増す。
余戸地区に住む大野一好さん:
一人というのは致命傷というか。自分のペースで行動できるのはいいが、いざという時になかなか…
今回の遭難事故で捜索に当たった津山警察署は、登山ブームに理解を示しつつ、こう呼びかける。

津山警察署・原田洋平副署長:
低い山、手軽に登れる山に登る方もいると思うし、登山に慣れている方もいると思う。そうしたケースでも、天候が急変したり、道に迷ったり、ケガをしたり、想定していない形で事故や遭難に巻き込まれるケースもある。自分の安全を守るための装備を用意していただく、それから入山に当たっては登山届を確実に提出するように心がけてほしい
警察は、山の最寄りの駐在所などに登山届を提出してほしいとしている。
(岡山放送)