夏休みに入り、キャンプや帰省先で、川に入る機会があるかもしれない。しかし自然のままの川には、管理されたプールや海水浴場とは違った危険がある。実際に死亡事故が起きた現場で、川に潜む危険を検証した。
川で遊んでいた大学生が死亡
7月20日、岡山・新見市の高梁川で、川に飛び込んで遊んでいた21歳の男子大学生の行方がわからなくなった。大学生は川底で発見されたが、その後死亡が確認された。

高梁川の川岸の近くは浅く、底のゴツゴツした岩も見ることができる。しかし、少し真ん中に行くと一気に色が変わって水面は深緑になり、深くなっていることが伺える。

川幅は約50メートル、水深は当時約6メートルあり、大学生は3人のグループで遊んでいた。

近所の人:
大きな岩があるでしょう。岩の飛び出た所。あそこから飛び込んで、最初は大丈夫だったけど、川の真ん中あたりまで来たら、おぼれた。友達が潜ったけど、深くてダメだった
川に潜む危険とは
新見市消防署の林望署長に、現場周辺を説明してもらった。川には、ポイントごとに違った危険が潜んでいる。

新見市消防署・林望署長:
流れ込みの水流が速い所は、川底が掘られて急に深くなっている可能性がある。波が立つ所の頭には、岩がある。固定されていると考えないで。乗っただけで岩が動くこともある。流れが緩やかになっている部分は渦を巻いていて、岸の方に泳ごうとしても、押し戻される流れがある

流れが速ければあっという間に下流や川底に流されることも。また、水温も注意が必要だ。

新見市消防署・林望署長:
水深2メートルで急激に水温が下がり、足がつったり、体力の消耗が激しくなることも十分考えられる。本当に自然の中に入って行くのが川に入ること
「おぼれないことを一番に考えて」
川はプールや海水浴場のように管理された場所ではない。今回、比較的流れの穏やかな場所に案内してもらい、ライフジャケットをつけて中の状況を確認した。川の環境は、一言でいえば不規則だ。

川は夏でも冷たく、3~4メートルほどでも一気に深くなった。川底は岩でゴツゴツし、安定しない。水温は生ぬるい所もあれば、冷たくなる所もあった。

流れの速い川の中央付近に行くと、状況は一変。取材した記者は、流れの速い所で凍えるような冷たさを感じ、ライフジャケットをつけていなければ、こうした急激な変化に動揺し、混乱するかもしれないと振り返った。

また川では、ダムの放水により急激に水かさが増すこともある。
新見市消防署・林望署長:
十分な備えを。ライフジャケットを着るなど、おぼれないことを一番に考え準備し楽しんでほしい
いざというときの対応は
新見市消防本部の協力で、川遊びでどんな準備が必要か、万が一の時の対応を教えてもらった。用意されたのは、長い竹の棒や、ロープ、ペットボトルなど。

新見市消防署大佐分署・日傳逸平主任:
近くにあるものを何でも使って。川の中に入るのは危ないので、岸から救出できる方法、長い木を使う、ロープを投げる、ペットボトルを投げる等で救出するのが一番

ペットボトルは少し水を入れると投げやすくなる。ペットボトルにつかまると少し余裕ができる。長い竹の棒は、つかまれるように岸から差し出す。

救助を待つ人は慌てず、背泳ぎのような形で流れに身を任せるディフェンシブスイミングが有効だ。体力を温存し、助けを待つ。

美しい自然に触れることができる場所が多くあるのは、岡山の誇りだ。しかし、美しい自然も接し方を誤れば牙をむくことを肝に銘じなければいけない。
川の事故は「瞬間的に発生し、すぐに致命的な状況になる」といわれている。周りの人が気づいて助けようとしても間に合わない可能性もある。ライフジャケットは数千円程度のものからある。十分な備えをして、夏のレジャーを楽しみたい。
(岡山放送)