寛永11年(1634年)から続く、長崎の氏神「諏訪神社」の秋の大祭「長崎くんち」。毎年10月7、8、9日に行われているが、新型コロナ感染拡大などの影響もあり、2023年は4年ぶりの開催となる。
本番まで1カ月を切り、準備は奉納踊(ほうのうおどり)をする踊町(おどりちょう)だけではなく、ご神体を担ぐ神輿守町(みこしもりちょう)でも進んでいる。最後の稽古に密着した。

「長崎くんち」開幕まであと1カ月

航海の女神・媽祖(まそ)様が祭られているお堂に、十善時地区の稽古用の神輿が置かれている。7月の顔合わせから2カ月、この日が3回設定された稽古の最終日だ。

稽古用の神輿に重りを入れる
稽古用の神輿に重りを入れる
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神輿は、木の枠組みだけで重さ約100kg。それでは軽すぎるため、20kgの砂袋20個を積み込み、総重量が500kgになるように調整する。

神輿に結び付けるのは「命綱」。男衆は神輿を担いで坂を勢いよく駆け上がったり、下ったりするため、転んだ時に踏みつぶされないように身体を神輿に固定しておくために使われる。

十善寺地区・柿田修也総宰領(66):
本番のようにして、県庁坂の上りと一緒で。最後の最後が一番バテるので、最後の時に気合を入れて上りきってほしい

十善寺地区の男衆:
せーの!じゅーぜんじー!

かけ声と共に神輿を上げようとするが、うまくいかない。心を合わせないと神輿は簡単には持ち上がらない。

長崎くんちのお下りとお上りの神事は、神輿守町では諏訪・住吉・森崎3体のご神体を神輿に乗せ、初日の10月7日にお旅所に運び、最終日の9日に諏訪神社に帰す。

道中では、担ぎ手が勢いよく駆け出す「もりこみ」を行う。見せ場であると同時に重要な役割があるという。

担ぎ手が勢いよく駆け出す「もりこみ」
担ぎ手が勢いよく駆け出す「もりこみ」

くんち研究家・土肥原弘久さん:
神輿を揺さぶることによって、神様の神霊の再生を願う、祭礼の根幹に関わる重要な儀式。神輿守というのは、くんちにおける中心行事と言える

約110人の力自慢が集結

稽古最終日で時間を割いたのも、最も体力と集中力を使う「もりこみ」。地元にある約70メートルの坂道を、本番で「もりこみ」を行う旧長崎県庁前の通りに見立てて駆け上がる。

500kgの神輿を16人で担ぐので、1人当たりにかかる重さは、単純に計算すると約30kgだ。重量を支える肩に負担が集中する。

十善寺地区・柿田修也総宰領(66):
本番はもっと速くなる

神輿を支える男衆は、消防士や龍踊(じゃおどり)の経験者など力自慢の110人の精鋭たちだ。十善寺地区は、長崎くんちが中止された3年間で自治会が3つなくなったこともあり、人集めに非常に苦労し、一時は辞退を考えたが、他の神輿守町などの協力を受けて、どうにか奉仕の準備を進めてきた。

初参加・中島大和さん(20):
肩に食い込む感じでアザが取れなくなるくらい。前回の練習でついたのがまだ残っている

3回目の参加・柴原将仁さん(35):
タオルを何層かに折り畳んで(肩に)入れる。負荷軽減、痛み軽減。痛い。過去の練習もそうだが、終わった後に青タンできるくらい。あと擦り傷、皮もむけるので、すごく(神輿の)重みを感じる

初参加・境泰樹さん(27):
きょうの夜は筋肉痛。長崎のためなら身体を張る

厳しい練習…だが“本番は別物”

お上りでは、最後に諏訪神社の石段を駆け上がる。この日の稽古でも石段を上る感覚を確認した。

諏訪の宰領・秋浦利栄さん:
1段目、2段目、走って上った場合どういう違いがあるか分かってもらいたい。2段目から行くと(ヒザが)がくっとなる

十善寺地区・柿田修也総宰領(66):
きょう重りを入れて稽古をしているが、「あんなもんじゃない」というのを常に伝えている。いざ本番で担いだ時に分かってもらえると思う

4年ぶりの長崎くんちで、神様を担ぐ約110人の十善寺地区の男衆。役目への誇りと祭りに参加できる喜びが彼らの原動力となっている。

【長崎くんち・2023年の踊町】
 

長崎くんちとは
「長崎くんち」の始まりは、寛永11年(1634年)にさかのぼる。

キリシタン弾圧が強化されつつあったこの頃、長崎の氏神「諏訪神社」で再興・神事が始まり、
遊女が神前で舞を奉納したのが起源と言われている。

幕末になると、歌舞伎を模した奉納踊、明治期には外国船の曳物が登場するなど、長崎が貿易で栄えた様子などが表現され、時代とともに、世相や流行を取り入れながら約400年の歴史を紡いできた。

演し物には、龍踊やコッコデショ、鯨の潮吹きなどがあり、国指定重要無形民俗文化財となっている。

現在、長崎市内には58の踊町があり、全町が7つの組に区分され、
奉納踊の担当は7年に一度、まわってくる。

毎年10月7・8・9日に開催され、祭の3日間は、長崎の町は笛や太鼓の音、男たちの威勢の良い掛け声で熱気に包まれる。特に2023年は、4年ぶりの開催とあって、踊町や関係者たちの意気込みは一層高まっている。

<2023年出演の踊町>
桶屋町・本踊/船大工町・川船/栄町・阿蘭陀万歳/本石灰町・御朱印船/丸山町・本踊/万屋町・鯨の潮吹き

(テレビ長崎)

テレビ長崎
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