新型コロナウイルスの影響などで奉納踊が中止となり、2023年10月に4年ぶりに通常開催された長崎の秋の大祭「長崎くんち」。待ち望んだくんちに、だしものを披露する踊町(おどりちょう)の人たちの思いはひとしおだった。
「本踊」を奉納した桶屋町(おけやまち)に密着した。
桶屋町 10年ぶりの奉納踊
くんち初日の前日(まえび・10月7日)、諏訪神社で一番町を務める桶屋町は、午前7時の奉納に向けて子どもたちも早くから着付けをしてもらい、本番に備えていた。
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小森咲和さん(6):
午前3時11分くらい(に起きた)
紅を差して、準備は整った。新型コロナの影響などで奉納踊が3年連続で中止になったことから、桶屋町にとっては10年ぶりの奉納だ。
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長崎くんちの開幕を藤間金彌さんの社中の6人の弟子が飾る。そのうちの1人、近藤礼音(れおん)さん(14)は、今回最年少の踊子だ。
近藤礼音さんの父・信也さん:
頑張ろうね、2人とも
妹の安穏(あのん)さん(11)も子ども踊りでくんち初出演。姉妹の共演がかなった。
![娘の安穏さん(左)に声をかける信也さん(中央)](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/1/5/700mw/img_15349b6ee80a3b8b31de68dd3d1534fd605054.jpg)
近藤礼音さんの父・信也さん:
ちゃんと神様見て踊らないとだよ、しめ縄の方を見て。神様がいるからちゃんとあいさつしてね
“くんちの再開”祝う華やかな舞
いよいよ奉納踊をする諏訪神社に向けて出発だ。
桶屋町 くんち奉賛会・白山光男会長:
4年間待ちに待ったくんちが、やっとその当日を迎えました。思いっきりこの3日間を楽しんで、いい思い出をつくってもらって、来年の踊町につないでいきたいと思います
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諏訪の杜には、長崎くんちを待ち望んだ大勢の見物客が集まった。
神官(しんかん)と巫女(みこ)に扮した踊子が露払いの舞で踊り馬場を清めると、町内の子どもたちが、町を象徴する白い象と秋祭りの開催を祝った。
![長唄「諏訪祭紅葉錦絵(すわまつりもみじのにしきえ)」](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/7/b/700mw/img_7b7990562a47e74f2f46fd2667a4bc27884547.jpg)
華やかな踊りの一座が姿を見せた。藤間さんならではの演出で長坂を盛り上げる。
本踊 長唄「諏訪祭紅葉錦絵(すわまつりもみじのにしきえ)」は6人が3つの役柄に分かれて、錦絵のように華やかな舞でくんちの再開を祝う。
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近藤礼音さん:
3年延びて大人の踊子として出られて、とてもうれしかった。練習の成果を発揮できたのでは
振付・指導 藤間金彌師匠:
どうにか大役を果たすことできて、ほっとしている。「ようやった」「よく頑張りました」(と声をかけたい)
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近藤安穏さん:
お姉ちゃんも絶対緊張していると思うけど、2人で力を合わせて頑張りたい。お母さんも号泣するくらい感動してもらいたい
「庭先回り」ならではの魅力
長崎くんちの初日である前日の夜、町の関係者は翌日からの空模様に頭を抱えていた。
![空模様を気にかける桶屋町 くんち奉賛会・白山光男会長](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/3/5/700mw/img_35df46fe5b6dee49121b6be357f15d58473721.jpg)
桶屋町 くんち奉賛会・白山光男会長:
雨がひどくないことを願うばかり
くんち2日目の中日(なかび)の8日、踊り馬場の石畳は雨にぬれていた。奉納踊は翌日に繰り延べとなった。
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衣装や三味線がぬれないよう雨を避けられる場所で、お世話になった家々や企業を回ってだしものを披露する「庭先回り」を行う。
福をお裾分けする意味もあり、町の人との距離が近いことから踊り馬場とは違う楽しさがある。
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近藤さんの同級生:
きれいで感動した。学校の姿と違うところがあってぐっときた
一方、町内を歩き回るため体力的には「山場」だ。
藤間星弥さん:
あすもあると思ったら大変だが、それ以上にお客さんの期待があるので頑張っている
![華やかに舞う踊子・藤間星弥さん](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/a/a/700mw/img_aa500cd8fb07d27b10147dcc35d153fd700794.jpg)
職場の上司や親しい人からの激励を受け、にこやかに踊る。
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沿道の人:
ショモー(所望)ヤーレ
「ショモーヤーレ」は、「所望」や「(もう一度)やれ」といった言葉に由来するとされる。
藤間星弥さんの上司・千々岩源大さん:
介護職の両立は本当に大変だと思うが、仕事を頑張ってこそのくんち。「頑張って」と日々伝えていた。実現できてよかった
ついに最終日…駆け抜けた3日間
雨の影響は、最終日の9日・後日(あとび)まで続いた。奉納踊の時間も1時間繰り下げとなり、3日間で約2,000件を訪問する庭先回りの予定も組み直した。
最後の奉納となる八坂神社には、沿道を埋め尽くすほどの人が集まった。
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締めの奉納を見届けた踊子の母親たちにもこみ上げるものがあった。
夜が更けてもくんちの熱気は冷めず、沿道からの掛け声や拍手がなかなかやまなかった。
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沿道の人からの掛け声:
ヨイヤー!
庭先回りは雨の影響で予定の半分も回れなかった。それでも、遅い時間まで店先で待ってくれている人たちがいた。
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庭先回りを待っていた店:
待ってました。シャギリの音だけでわくわくする
この日、庭先回りを終えて、自分の町・桶屋町に帰ってくる頃には午後9時半を過ぎていた。
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稽古始めとなる「小屋入り」から本番まで支えてくれた町の人たちに感謝の気持ちを込めて踊る。
近藤礼音さん:
最後まで無事に奉納できてよかった。これからも稽古頑張って、次もくんちに出させてもらえるよう頑張りたい
近藤礼音さんの母・由紀さん:
色々な人からお世話してもらって3日間を迎えることができた。誰一人欠けてもきょうは迎えられなかった。娘の最後の涙を見た時に達成感として伝わった、皆さまのおかげ
桶屋町 くんち奉賛会・白山光男会長:
7年後、次へとつながっていければいいなと。本当にいいくんちでした。皆さま、ありがとうございました
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10年分の思いを胸に駆け抜けた3日間。人と人、町の伝統をつなぐ長崎くんちは晴れやかに幕を閉じた。
(テレビ長崎)