500年以上の歴史を持ち、2022年にユネスコの無形文化遺産に登録された長崎・大村市の「黒丸踊」に初の小学生の「囃子方(はやしかた)」が誕生した。地域の大人たちの指導を受け、たくましく成長する姿を追った。

500年以上の歴史…伝統芸能「黒丸踊」に挑戦

長崎県立諫早特別支援学校小学部5年の陳内遼樹さん(10)は好奇心が旺盛で、下級生の面倒もよく見るクラスのムードメーカーだ。

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そんな遼樹さんの下級生からの印象はというと…。

ーー遼樹君のいいところは?

下級生:
真剣なところ

別の下級生:
笑顔のとき

陳内遼樹さん:
校外学習が楽しい。食べたりおしゃべりするのが一番楽しい

遼樹さんは2022年12月から、地元・大村市に伝わる伝統芸能「黒丸踊」に挑戦している。

黒丸踊は国の重要無形民俗文化財に指定された伝統芸能で、今から500年以上前の戦国時代に、領主・大村純伊が領地を取り返したのを祝って踊ったのが始まりとされている。

直径5メートル、重さ60kgにもなる大花輪を背負った演者が太鼓を打ち鳴らしながら踊り、若武者に扮(ふん)した子どもたちが謡(うたい)やお囃子に合わせて舞う。2022年にユネスコの無形文化遺産にも登録された。

幼少期の経験がきっかけに

2023年7月、保存会が地元の夏祭りでの披露に向けて練習を始めた。

遼樹さんは、囃子を奏でる地太鼓として初めて参加。音のテンポや打つタイミングに気を配りながら地太鼓を打つ。

陣内家は代々、黒丸踊りの演者を務めてきたことから、祖父の明さん(72)が遼樹さんに地太鼓を勧めたのだ。

祖父・陣内明さん:
(遼樹が)障害があって不自由なので、黒丸踊の手踊りとか鉦(かね)たたきとかは無理なので、遼樹に向いているといえば地太鼓が一番いいと思った

遼樹さんは680グラムの未熟児で生まれ、脳性まひを患った。後遺症で手の力や足腰が弱くなったものの、幼少期に太鼓のゲームに興味を持ったことがきっかけで太鼓が大好きになった。

陳内遼樹さん:
太鼓だったらここまで楽しめるんだという世界を広げてくれた

小学生が囃子方を務めるのは遼樹さんが初めてだ。迎え入れた地太鼓の大人たちが、丁寧に細かく指導に当たる。

地太鼓・堀内勉さん:
最初はたたくタイミング、手がうまく返せないとかリズム的に悪いとかあったけど、最近はだいぶよくなった

母・陣内桂子さん:
囃子方は大人しかできないものと思っていたので、最初はびっくりしたというのが正直なところ。(遼樹が)できるんだと思ってびっくりした

父・陣内秀樹さん:
できるようになったとか成長とか、それは結構、他のことでも日々感じられることはあるが、黒丸踊でうれしいのは、他の人から(息子を)受け入れてもらっている。彼の居場所があるというのがうれしい、親としては

陣内遼樹さん:
やっぱりお囃子を選んでよかったなって。地太鼓の先生が本当に僕に優しくしてくれてうれしい

祭りに響く“地太鼓の音色”

黒丸踊りを披露するおおむら夏越まつりの日がやってきた。緊張しながら先輩たちと会場へ入り、踊りが始まるのを待つ。

遼樹さんは、終盤の連打では音を乱さず最後までたたき切り、囃子方として見事なデビューを果たした。初舞台が終わると、遼樹さんは見守った大人たちへ誇らしげな表情を見せた。

陣内遼樹さん:
かっこいいでしょ

父・陣内秀樹さん:
完成度を上げてやりたいということで指導して下さったから、本当にいい初舞台になったと思う。それは障害があるからどうこうではなくて、頑張ったということでよかったなと思う

陣内遼樹さん:
やっぱり最初は緊張していたけれど、後から考えてみれば自分ってこんなにできるんだなと思った

地太鼓の音をさらに磨いて、黒丸踊の魅力を多くの人に伝えたい…。遼樹さんの精進の日々はこれからも続く。

(テレビ長崎)

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