静岡市にある呉服店が開発した“魔法のおくるみ”。その裏には「シルクのよさを伝えたい」という思いと共に、スタッフの9割が子育て中という特色を生かしてママたちの悩み解決に貢献したいという願いが込められている。

悩み多き赤ちゃんの“眠り”

“夜泣き”や“寝ぐずり”など、赤ちゃんの眠りに関することで頭を悩ませたことのあるママや今まさに悩んでいる産後ママも多いのではないだろうか?抱っこしていた時はおとなしかった赤ちゃんや眠りについている赤ちゃんでも、布団や床に下したとたんに泣き出してしまい、1日中抱っこで過ごさざるを得ないというママや夜中に何度も目が覚めてしまうというママも少なくない。

下ろしたとたんに泣き出す赤ちゃん
下ろしたとたんに泣き出す赤ちゃん
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おはな助産院(静岡県御前崎市)の野口智美 院長によれば「今まで10カ月狭いところ(お腹の中)で丸くいたのに、急に何もなくなると不安そうに泣く赤ちゃんが多い」という。

シルクの良さを伝えたい!

こうした時に役立ち、赤ちゃんの眠りに有効とされているのが“おくるみ”だ。赤ちゃんの体を温めたり、姿勢を保ったりすることを目的に世界中で使われていて、一説によれば紀元前から“おくるみ”は存在。野口院長は「赤ちゃんの姿勢をお腹の中にいる時と似た姿勢にしてあげて、体が楽になることでよく寝てくれる」と、その効果を説明する。

おはな助産院・野口智美 院長
おはな助産院・野口智美 院長

現在、様々な素材の“おくるみ”が市販されているが、おはな助産院では絹を編み込んだシルクニット製の商品を使用している。

KIMONO梅千代
KIMONO梅千代

ただ、この“おくるみ”は赤ちゃん用品を専門とするメーカーが作ったものではなく、静岡市葵区の呉服店・KIMONO梅千代が開発したものだ。

着物の素材として古くから使われてきたシルク
着物の素材として古くから使われてきたシルク

着物の素材として古くから使われてきたシルクは人の肌と同じタンパク質からできた天然素材で、保湿性や吸水性に優れる。このため、夏は涼しく、反対に冬は暖かく過ごせるほか、紫外線を約8割吸収するともいわれている。しかし、着物を着る機会が少なくなった現代にあって「どうしたら良さを伝えられるのか?」が課題となっていた。

KIMONO梅千代・漆畑千恵美マネージャー
KIMONO梅千代・漆畑千恵美マネージャー

漆畑千恵美マネージャーによれば「シルクの効能を調べると肌に優しいということを知り、肌が敏感な赤ちゃんをシルクの素材で包んであげたいと赤ちゃん用品を作り始めた」という。

先輩ママたちの思いと願いを込めて

実はKIMONO梅千代のスタッフは9割を子育て中のママが占めていて、赤ちゃんの夜泣きや寝ぐずり、肌トラブルは、まさに“自分たち”も抱えてきた悩み。そうした経験を持つママたちが作った“おくるみ”なら、産後のママたちの悩みを少しでも軽減させられるのではないかとの思いがあった。だからこそ、赤ちゃんが快適で、誰でも簡単に扱えるようにとシルク生地の中でも伸縮性に富んだシルクニットを採用した商品を開発。

スタッフの9割が子育て中のママ
スタッフの9割が子育て中のママ

冒頭のおはな助産院でもKIMONO梅千代が作ったシルクニットの“おくるみ”を使っていて、生後2カ月の男児のママは「上の娘の時に使った“おくるみ”よりすごく伸びが良いので、巻いたことがない人でもしばりやすいし包みやすい」と太鼓判を押し、別のママも「すごく寝てくれるし、授乳もしやすかった」と話した。

シルクニットを使った“魔法のおくるみ”
シルクニットを使った“魔法のおくるみ”

おはな助産院では退院後もこの“おくるみ”を貸し出していて、その理由について野口院長は「生後1カ月までの赤ちゃんは『屈曲』といって体に引き寄せることが大事で、それができて次は(手足を)伸ばすことが出来る。子宮の中の姿勢と同じようにコンパクトにまとめてあげることで伸ばす動きが出来るようになり、すごく発達にいい」と話す。

また、何でも口に入れたがる赤ちゃんだが天然のシルクは口に入れても安心で、“おくるみ”として使わなくなった後もブランケットや日よけ代わりに転用できる。

赤ちゃんが口に入れても安心
赤ちゃんが口に入れても安心

KIMONO梅千代の漆畑マネージャーは「この“おくるみ”を使って少しでも悩みが減って子育てが楽しくなり、ママもパパも赤ちゃんもみんな幸せで笑顔になってほしい」と話し、シルク生地の良さを生かした別の商品開発にも意欲を燃やしている。

使い方には注意も必要

一方で“おくるみ”が苦手な赤ちゃんもいるほか、使い方を間違えると赤ちゃんが脱臼するおそれもある。このため野口院長は「股関節をMの字型にしっかり広げて使うことが重要」と注意を呼び掛ける。さらに“おくるみ”に包んだままの状態で赤ちゃんがうつ伏せになると窒息するおそれもあるため、寝返りを打つようになったら使用しないことも忘れてはならない。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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