華やかなウェディングドレスを身にまとい、乳がんを経験した女性たちが撮影会に臨んだ。闘病中の抜け毛などが原因で、おしゃれに尻込みしてしまう人たちを励まそうと企画された。結婚式場の他、ヘアメイクなどのスタッフもボランティアで、乳がんサバイバーを応援だ。

苦しむ友人を見て ウェディングプランナーが企画

結婚式場での撮影会(2023年8月・静岡市)
結婚式場での撮影会(2023年8月・静岡市)
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2023年8月 静岡市駿河区の結婚式場で開かれたのは、華やかなドレスを着て写真を撮る”変身イベント”だ。参加したのは乳がんを経験した20代から70代の女性13人、「乳がんサバイバー」だ。
「頑張った自分へのご褒美」「第2の人生スタートの記念」「家族との思い出を残すため」など、参加の理由は様々だ。撮影は無料で行われた。

撮影会を企画した松永直子さん
撮影会を企画した松永直子さん

撮影会はフリーのウェディングプランナーの松永直子さんが企画した。今年で3回目だ。
乳がんの友人が薬の副作用で抜け毛や肌荒れに苦しみ、治ってからもおしゃれに踏み出せないでいるのを見て、がんと闘ってきた人たちに自信をもってもらおうと企画した。
結婚式場が閑散期に会場を無料で貸してくれた他、知り合いのドレスショップやヘアメイク、カメラマン、スタイリストもボランティアで協力してくれた。

撮影会を手伝う学生たち
撮影会を手伝う学生たち

また乳がんが若い世代にも多いことから、病気のことや検診の大切さを知ってもらおうと、松永さんが講師をしている専門学校や大学の学生などにも声をかけ手伝ってもらっている。

乳がんの次は肺がん 前向きに生きるために

撮影会に参加した山本千鶴さん
撮影会に参加した山本千鶴さん

山本千鶴さんは2023年9月に孫が生まれる予定で、「新しい自分で、前向きに生きる覚悟をする」ため、参加を決めたそうだ。
山本さんは12年前に40代前半で乳がんを発症した。当時3人の子供は高校2年・中学2年・小学6年で、「せめて一番下の子が20歳になるまでは」と必死に頑張り、2021年には乳がんの10年検診を無事に終えた。
がん克服と子供の20歳のお祝いに親戚を招いてパーティーをしたが、その後 肺がんが見つかった。2023年6月に肺がんの手術を終えたばかりだ。
ウェディングドレスを着るのは結婚式以来で、32年ぶりだ。

山本さん「パジャマの日が多かったので楽しみ」
山本さん「パジャマの日が多かったので楽しみ」

山本千鶴さん:
(ドレスは)やっぱり、うれしい。乳がんからの肺がんもあったし、(入院などで)パジャマを着ていた日も多かったからすごく楽しみ

プロのメイクで輝きが増していく自分を鏡で見つめ、徐々に気分が高まっているようだ。

乳がん克服10年の節目に

撮影会に参加した大向貴子さん
撮影会に参加した大向貴子さん

大向貴子さんは夫の仕事で駐在していたインドで、がんが見つかった。帰国して診察を受け「良性の腫瘍」と診断されたが、医師から「大きさが気になるので3カ月後にもう一度検査を」とすすめられ、再検査の結果 悪性腫瘍とわかった。
「あの時に放っておいたら今の私はなかった」と振り返り、「少しでも気になったら検査を」と呼びかける。
乳がんを克服して10年目の節目を迎え、撮影会への参加を決めた。入院中は毎日「来年も生きていけるか」と不安にかられ、希望を見出すのに必死だったという。今 思い返してもつらい思い出だ。ドレスを着て撮影ができる日が訪れるなど、想像さえできなかった。

大向さん「きょうの姿を闘病中だった私に見せたい」
大向さん「きょうの姿を闘病中だった私に見せたい」

大向貴子さん:
きょうの姿を、闘病中の あの時の私に見せたい

メイクを終えると淡いピンクのドレスを着て、いよいよ撮影だ。

「闘病中の方へのエールになれば」

プロのカメラマンが撮影
プロのカメラマンが撮影

カメラマンが「深呼吸をして~。めっちゃいい、OKです」など気分を盛り上げ、撮影を進めていく。
さまざまな思いや希望を抱えながら参加した女性たち。より一層輝く自分の姿を目に焼き付けているようだ。

大向さん「病気を乗り越え本当に良かった」
大向さん「病気を乗り越え本当に良かった」

大向貴子さん:
闘病中は薬の副作用で自分の外観が変わり、鏡を見るのがいやだった。鏡を避けるような生活だった。きょう鏡に映る自分を見て、病気を乗り越えてきて本当によかったと思った

大向さん「闘病中の人のエールになれば」
大向さん「闘病中の人のエールになれば」

大向貴子さんは「今 闘病している方に少しでもエールを贈れれば。『必ず未来は待っている』と伝えたい」と話す。

「たぶん次も頑張れる」

2023年6月に手術を終えたばかりの山本さんは、「自分へのご褒美。ちょっと泣きそう」と涙ぐむ。

山本さん「自分へのご褒美」
山本さん「自分へのご褒美」

山本さんは「乳がん10年検診で無事だったので、がんに“勝ち誇った”気になっていた」と振り返る。でもまた肺がんが見つかり、「がんは“敵”ではないな。“友達”感覚でつきあわないと」と思ったそうだ。「 “友達”がまた悪さをしたら、病院で直してもらえばいい」と考えるようになった。

山本千鶴さん:
治療を頑張ってよかった。これから何があるかわからないけど、たぶん次も頑張れると思う

乳がんサバイバーのドレス撮影会
乳がんサバイバーのドレス撮影会

3回目を迎えるこの撮影会は、乳がんを乗り越えた女性たちに勇気と元気を与えているようだ。
参加者は徐々に増えていて、企画したウェディングプランナーの松永さんは、「来年以降も続けていくためにスポンサーを募り、より多くの人たちに笑顔になってもらえるような撮影イベントを企画していきたい」と話している。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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