日本の妖怪を描き続けているアメリカ出身の男性が福井市にいる。紙のように絵が描ける電子タブレットを使い、浮世絵の手法で妖怪を生み出す。妖怪の伝承も英語に翻訳しており、「忘れ去られつつある妖怪を世界に発信したい」と意気込む。

福井で活動する「妖怪絵師」

自らを「妖怪絵師」と名乗るのは、アメリカ・ニュージャージー州出身のマット・マイヤーさんだ。アメリカの芸術大学在籍中に浮世絵版画の色遣いに興味を持ったという。

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マット・マイヤーさん:
伝承とか神話とか昔話が好きだったし、日本のアートを見ると、浮世絵でも絵巻でも妖怪がたくさん描かれている。(日本の)妖怪の話はほとんどが単純で短い。だからもっと(妖怪を)知りたくなる

福井に来たのは2007年。2009年10月のハロウィーンの時、ブログで日本に伝わる幽霊などを紹介しようと思ったのが、妖怪を描くきっかけとなった。

タブレットを使うが、絵の描き方は浮世絵版画と同じだ。色を何度も上に重ねることで、色彩豊かな世界を表現する。「カッパ」や首の長い「ろくろ首」などのイラストに英語で解説を付けて、毎日1作品ずつ投稿した。すると、海外から予想を超える反響があった。

マット・マイヤーさん:
日本の文化が好きだけど、(妖怪)文化があったことは全く知らなかったという声が多かった。なぜなら、昔話や民族伝承など妖怪が出てくる話は外国語に翻訳されていない

日本の妖怪を広く知ってもらいたいと、イラストに英語の解説を付けた本を制作した。これまでに4冊出版され、フランス語、イタリア語、スペイン語にも翻訳されている。累計で2万冊を売り上げた。

マット・マイヤーさん:
妖怪のムードを表現できるよう、怖い話だったら絵も怖く、面白い話なら絵もかわいく仕上げる。浮世絵が好きなので、木版画の作り方と似たように描いている。一つの色を描いて、その上に新しい色を入れて

“妖怪の伝承”をイラストで語り継ぐ

福井県文書館はマイヤーさんの評判を聞き、企画展を依頼した。展示されたのは全て新作で、福井に関連する妖怪などを描いた。

マット・マイヤーさん:
福井に住んでいるから、ローカルな妖怪を(描けるのは)すごくうれしい。できるだけ本当にあった場所を絵に入れたい

自分で行くことができる場所には足を運んでいるというマイヤーさん。福井市にある九十九橋(つくもばし)もその一つだ。

マット・マイヤーさん:
柴田勝家が死んだ日に柴田勝家の幽霊がここ(九十九橋)に現れた(という言い伝えがある)。今の九十九橋は江戸時代と全然変わっているが、ここに来たのは、ここから見る足羽山とか川の形を知るため。できるだけあったままを絵に描きたい。今はもう見えない風景だけど、江戸時代に戻ったらどのように見えたかなって

昔から語り継がれてきた日本の妖怪。ただ、その妖怪の存在が忘れられつつある今の日本を、アメリカ出身のマイヤーさんは「もったいない」と話す。

マット・マイヤーさん:
妖怪(の伝承)がなくなってきているのは昔から言われていた。私もそれがすごくもったいないと思うから、こういう仕事をしている。消えつつある妖怪(の絵)を描いて、話を書いて(残していくのは)大事なこと

(福井テレビ)

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