7月の記録的な大雨から1カ月。徐々に復旧の兆しが見えてきた秋田・五城目町では、地域の人々を支える内科医院が診療を再開した。馬場目川の氾濫によって甚大な被害を受け、決して被災前の設備には戻れない状況でも、懸命に患者と向き合う診療所の現状を伝える。

“地域のライフライン”が診療再開へ

田口慧一記者:
68cmの高さまで浸水した五城目町の胃腸科内科。水害から1カ月たち、ようやく診療再開へ動き出している

大窪胃腸科内科医院を訪れる患者たち
大窪胃腸科内科医院を訪れる患者たち
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五城目町の中心部、馬場目川沿いにある大窪胃腸科内科医院。お盆休み明けとなった16日は、早朝から顔なじみの患者が次々と訪れていた。

大窪天三幸院長は、患者に「外に出るのも暑くてね。買い物は自分でするんですか。では脱水に気を付けて」と声をかけた。

患者:
医療機械も全部流されてしまったと聞き、しばらく先生と会うことができないと思っていたので、本当に涙が出る。ありがたくて

患者:
患者を思う心は、医師としてトップクラスだと思っている

大窪胃腸科内科医院・大窪天三幸院長:
(患者が)親戚一同で(復旧作業の)手伝いに来てくれて、非常に助かった

馬場目川が氾濫した7月15日、診療所は夕方から翌朝にかけて浸水した。レントゲンや胃と大腸の内視鏡、超音波検査装置などの医療機器、電子カルテのデータ、院内処方の薬など、ほぼすべてを失った。

大窪胃腸科内科医院・大窪天三幸院長:
レントゲン室です。医療機械では価格が一番高い。1400万円くらい。これがみんな泥をかぶっていた。もうさびている。部品がないから駄目だという業者の話

規模縮小も「使命として続けたい」

大窪天三幸医師の専門は消化器学だ。診療所での内視鏡検査の数は、1年間で大腸が100件、胃が400件に上る。

患者:
2~3年前にポリープを取ってもらった。去年(2022年)、おととし(2021年)は大腸検査をしてもらった。(大窪医師の内視鏡の腕前は)素晴らしい。痛くもない、かゆくもない。町民にとって必要な病院

特に大腸の検査に力を入れてきたが、被害を受けてからは必要な医療機器を新しくそろえる余裕はなく、診療規模を縮小せざるを得なくなった。

大窪胃腸科内科医院・大窪天三幸院長:
レントゲンさえあれば大腸内視鏡検査もやれるが、レントゲンは(価格が)高いので。業者に「中古でも」とお願いしたが「そういうのは無い」と…。大腸は諦める

8月18日には新しい電子カルテのシステムが入り、診察を再開できる見込みで、9月中旬には胃の検査も始めたいとしている。

大窪胃腸科内科医院・大窪天三幸院長:
かえって私どもがありがたい、患者さんが来てくれることで。自分の使命として続けなければいけないと感じている。これからも続けさせてもらいたいと思っているので、頑張ります

“国の復旧支援制度”から外れる可能性

秋田県医師会によると、今回の大雨では県内48医療機関で浸水被害が発生し、7月25日時点で9医療機関が休診していた。県医師会は日本医師会を通じて、国に被災した医療機関の復旧費用の補助や融資を求めている。

国は、被災した医療機関に復旧費用を補助する制度を設けている。ただ、対象は「公的医療機関施設」「へき地診療所」などの区分のみで、大窪胃腸科内科医院は当てはまらない可能性が高い。窓口となっている県は、対象から外れた医療機関に対し、県独自の補助ができないか今後検討するとしている。

地域医療を支える拠点の復旧に向け、いち早い支援が求められる。

(秋田テレビ)

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