岡山は“フルーツ王国”とも言われ、モモやブドウなどが有名だ。しかし、都道府県別の出荷量では、ブドウは3位、モモは6位。(令和4年産 農林水産統計調べ)シェアも決して多くない。それでも岡山は独自の「高級路線」で地位を築いている。そこにはどんな戦略があるのか?そして課題は?旬のフルーツ最新事情を探った。
岡山の桃はとにかく白い!
県内有数のモモの産地、岡山市北区の一宮地域。
ここで4年前からモモを栽培する高木直哉さん。高木さんは長野県出身で東京で営業職をしていたが、モモが大好きでモモ農家になったという。

その岡山を代表するモモといえば「白桃」だ。
値段は1玉1000円を超え、デパートなら3割、4割増しになる。

品種は時期によって様々だが、共通するのはどれも白いこと。例えば川中島白桃は、他県のものと比較すると白さが歴然だ。

なぜこんなに色が違うのか?
その理由は、栽培時の袋掛けにあった。
岡山では、収穫まで袋を取らず、日に当てないためモモが白くなるという。

モモ農家 高木直哉さん:
閉じている袋なので、チラッと開けてみて、どんな色か確認して、熟れていたら収穫。熟練の技術で、僕も教えてもらいながらやっている

袋は、底の空いたものや二重になったものなど、品種によって最も適したものを使う。
袋を取ると、たとえ岡山のモモでも真っ赤になってしまうという。
モモ農家 高木直哉さん:
赤くなると食感が固めになる。糖度は赤い方が上がるけど、肉質が荒めになる

厳しい基準でブランド力保持
収穫されたモモは、選果場でベテランスタッフが品質を分類。傷みやすい白桃の扱いは、慎重を要す。
さらに機械で糖度を図り、厳しい基準を通過したものだけが、最高級品として箱詰めされる。品質の低いものは加工用などに回され、ブランド力を保っている。

「ブドウが一万円札に見える」
モモと並んで岡山を代表するフルーツがブドウだ。
2022年6月に「種なしのブドウ、シャインマスカットの売り上げが好調で、産地が潤っている」というニュースを放送した際は、ネットで大きな反響を呼んだ。
「ぶらさがったブドウが一万円札に見える」という生産者の声もあるほど市場は盛況。

モモでも、こんな景気のいい話があるのかと思いきや…
モモ農家 高木直哉さん:
正直難しい。一番の違いは収穫時期の短さ。モモは一発勝負。一つ熟れ始めたら1週間くらいで全部収穫しないといけない。日持ちの悪さがどうしても付きまとう
収穫時期の長さに違い
1つの品種で1シーズン収穫できるブドウ。一方、モモの収穫時期は1~2週間程度と短く、時期の違う様々な品種を栽培する必要がある。


ブドウを先発完投型とするなら、モモは複数のピッチャーの継投策といったところ。

このため、ハウスものが4月に出荷される極早生の「はなよめ」、クリスマスやお歳暮を狙った極晩生の「冬桃がたり」など、時期をずらした新しい品種が次々投入されてきた。
備前広域農業普及指導センターの高橋知佐主任は「生産者の方は色んな品種を持ち、タイミングを分けて出荷。それがリスク分散になっている」と語る。

モモバブルの鍵は輸出
収穫時期が短く、天候によって出来が左右されやすいため、栽培が難しい白桃。
収益性を高める策とは?
モモ農家 高木直哉さん:
いいものを沢山作れる技術のある農家は儲かる。モモのおいしさを、国内だけでなく海外にも評価してもらえるような施策が必要

岡山の白桃をもっと知ってもらおうと、高木さんたち生産者は、飲食店とコラボしたスイーツも企画した。
果たして、ブドウのようなバブルが白桃にも来るのか…?
一つのカギが輸出だ。岡山県のぶどうの輸出額は10億円。一方、モモはわずか5000万円で、20分の1しかない(岡山県調べ)。
傷みやすいなどのハンディはあるが、高値で売れる海外展開など、モモにはまだまだ販路開拓の余地があると言える。
(岡山放送)