マイナ保険証や税金などで国民から批判が上がっている岸田内閣。かつては「聞く力」をアピールしていた岸田首相だが、その耳に国民の声は届いているのか。テレビ西日本は、政策のあおりを直接受ける高齢者やサラリーマンから“生の声”を聞いた。

不安視される「マイナ保険証」

マイナンバーカードと健康保険証を一体化したマイナ保険証を巡る問題で、8月4日に岸田文雄首相は、2024年秋に廃止するとしている現行の健康保険証について、廃止時期の延期を含め判断を先送りした。

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岸田文雄首相:
現行の保険証を来年(2024年)秋に廃止するのは乱暴ではないか、廃止ありきではなく国民の理解が必要とのご指摘を国民、国会審議でもいただいています。こうした国民の声、現場の声を重く受け止め、不安払拭を最優先としていく

迷走するマイナ保険証を巡る問題。政府の対応に街の声は…。

街の​人:
一応、私は(マイナカードに)紐づけしてます。ただ使ってはいないです

ーーマイナ保険証としては使っていない?

街の​人:
機器に反応しなかったんです。なので、しょうがないから紙の方(保険証)を出しました

街の​人:
確認書よりも、私は紙の保険証がやっぱりいい、ねぇ。もう、せからしか(面倒くさい)。もう年だからついていけない

ーー資格確認書は紙の保険証同様に使えるとしているが?

街の​人:
そんな面倒くさいことをしだしてね。何で岸田さん、そんなことばっかり言うちゃろうね

「サラリーマン狙い撃ち」に憤りの声

こうした中、政府が7月に閣議決定した「骨太の方針」では、退職金を皮切りに、サラリーマンを“狙い撃ち”にしたさまざまな控除や税制の見直しが盛り込まれた。

街頭インタビューでは「負担になりますね」「サラリーマンの弱いところに、しわ寄せがいっているような」「あんまり政府には期待してないですけど…」などの声が聞かれた。多くの人にさらなる負担が懸念される控除見直しの動きに、戸惑いと憤りの声が上がっている。

7月30日、首相の諮問機関である政府税制調査会がこれからの税金のあり方について専門家の意見を取りまとめた。この中で、サラリーマンの退職金について「労働市場の動向に応じて、税制上も対応を検討する必要が生じている」と指摘した。

現行の制度では、勤続年数による控除額は20年までは1年につき40万円、21年目からは70万円の控除となっていて、「長く働けば税金が楽になる」となっている。しかし、政府税制調査会は「勤続年数で控除額を変えるべきでない」とし、優遇措置の事実上の撤廃についても検討すべきとした。

退職金の平均額は、大企業で約2,230万円、中小企業で1,100万円余り(いずれも大卒)。老後を安心して暮らすための資金となる退職金。控除見直しについて現役世代からは強く憤る声が聞かれた。

建設業(60代):
もう長く、40年勤めています。私は、もうそろそろ定年を迎えるので、非常に際どいところなので「困った増税だな」というふうに、ちょっと思っています

建設業(40代)
今後の退職後の生活の考え方が変わってきますよね。いろいろ使い方とかがですね、それはちょっと困りますね

勤務医(50代):
長く働きたい人には残しておいてほしい制度ですよね。多様性がある制度になるんだったらいいですけど、どっちかがダメっていうのは、ちょっとつらいですよね

退職金控除の見直しは、事実上の「サラリーマン増税」だとの批判も上がる中、政府の税制を実質的に取り仕切る自民党の宮沢税調会長が岸田首相の言葉を代弁した。

自民党・宮沢洋一税調会長:
首相からは、自分がまったく考えていない“サラリーマン増税”といった一部マスコミの報道があると…

あくまで増税ではないと火消しに走る岸田政権。しかし、7月に決定した「骨太の方針」では、雇用の流動性を阻害しているとの指摘から、退職金にかかる所得課税の見直しを行うと明記していて、退職金への実質的な増税は避けられないとの見方が強まっている。

退職金は「従業員へのねぎらい」

戦後日本の経済成長を支えた日本型の終身雇用制度。その制度が色濃く残る業界のひとつが製造業だ。

オーレック 生産本部・松石悠平部長:
ここの製造ラインは草刈り機を作っているんですけど、人が乗ってゴーカートみたいにして草を刈るタイプの草刈り機ですね

約400人の従業員を抱える福岡・広川町の農業機械メーカー「オーレック」。草刈り機や耕運機などを組み立てる製造部門には、20代から60代までの幅広い世代が働いている。退職金控除の見直しは、まさに会社を支えてきたベテラン世代の将来の生活に直結する課題なのだ。

オーレック 生産本部・松石悠平部長:
個人も対応を考えないといけないというか、「NISA」とか「iDeCo」とか、ああいうのもやらないといけないのかなって。退職が近々の人は気の毒かなって

この会社では若手を確保するために、退職金制度の見直しに着手した。

オーレック 人事部・木村友一課長:
世の中の変化に合わせて、流動的に体系を変化させていくことが今後必要なのでは

これまでと違って、勤続年数にとらわれず、能力や成果に応じた賃金体系を退職金にも反映させる事を検討している。一方で、制度が変わっても、会社にとって退職金は従業員へのねぎらいの思いも込められていると話す。

オーレック 人事部・木村友一課長:
長くやはり会社に貢献していただいた結果として、退職金っていうのをお支払いしておりますので、やはり感謝の気持ちっていうところが一番

技術を磨き、継承するために必要となる永い年月。若手には可能な限り経験を積み、さまざまな現場で活躍してほしいと考えている。

オーレック 生産本部・松石悠平部長:
1年、2年で転職したって、そこで経験は積んでないんですよ。「ちょっと、もったいないな」って思いますよね、正直。いろんな経験を積んでいくことで、やっぱり成長していってほしい。長くうちに勤めていただいて、活躍してほしいですけどね

3年連続で過去最高の日本の税収。本当に無駄な支出はないのか、どこまで国民に負担を強いるつもりなのか。政権の動向に厳しい目が注がれている。

(テレビ西日本)

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