2024年秋に健康保険証を廃止してマイナンバーカードと一体化する、いわゆる「マイナ保険証」の普及を推し進める岸田政権。しかし、移行に向けては回線工事の問題や高齢者施設での管理の問題など課題が山積している。

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1年ほど前から準備も回線工事は未完了

「マイナ保険証」を巡り、現場は戸惑いを隠せない。その1つが「回線」を巡る問題だ。

2023年4月に義務化されたオンラインでの資格認証は、NTTの光回線でなければ事実上難しく、なかなか環境が整わない。

福岡・宗像市の林外科医院の林裕章医師は「回線も通っていないので、機器が届いたままですね」と語り、頭を悩ませていた。この医院では「マイナ保険証」を使ったオンライン資格認証をするため1年ほど前から準備を進めているが、肝心の回線工事がまだ終わっていない。

林外科医院 林裕章医師:
新しく回線を引かなければいけないので、現地調査すると。結局、伸び伸びになって(業者側が)「すぐに現地調査ができない」と

結局、回線工事は7月末に行われることになったという。

「回線工事に10万円」納得いかないの声

オンライン資格認証に必要な工事を巡っては、歯科クリニックから「テナントビルでクリニックを経営しているが、NTTの光回線工事に約10万円かかった」「補助金を使っても工事費分は、ほぼ自己負担しなければならず、納得がいかない」などの声も聞かれている。

医療機関の約6割からトラブル報告

福岡県保険医協会が行ったアンケート調査によると、「マイナ保険証」の資格認証システムを導入した医療機関の約6割からトラブルの報告があったという。具体的には「無効」や「資格なし」など情報の不正確な表示が152件、機器やパソコンの不具合で「マイナ保険証を読み取れなかった」が118件あったとしている。

保険証廃止は拙速の声も

医療情報の情報共有など一体化のメリットもある「マイナ保険証」。しかし、マイナカードが任意である以上、いまの保険証を廃止するのは拙速だとの声もある。

福岡県保険医協会の会長を務める林裕章医師は…

林外科医院 林裕章医師:
救急車で運ばれて大病院で手術となったとき、家族が保険証を持って行ったりする。もし廃止で保険証がなくなっていたら…、もしマイナカードを持っていなければ…、医療機関としては手術費に何十万円、ICUに1泊10万円、そのような金額を「とりあえず10割負担で支払って下さい」と。これは(患者や家族にとって)無理な相談。マイナカードを持っていない人のために資格確認書という資格を新たに作ると言っているが…新たに制度を作るのなら今ある制度を使えばいいだけの話

高齢者施設の「マイナ保険証」管理は?

「マイナ保険証」を巡っては、高齢者施設でも問題に直面している。宗像市の住宅型有料老人ホームでは、健康保険証のコピーを各部屋に置いて、緊急の対応に備えている。しかし、今後、一体化された「マイナ保険証」を施設で預かるのはかなり難しいと話す。

ラディアむなかた 金子洋志施設長:
マイナカード自体を管理できない。居室内に置いているのを管理できない。紛失したときはどうするのかという問題。事務室で管理して、金庫に入れてもいいが、夜間救急のときには、どうやって保険証代わりに持っていくのか。施設として考えると非常に難しい

「マイナ保険証」を巡る様々な課題。トラブル続きのマイナカードとの一体化で今後の本格運用に問題はないのか。国の丁寧な説明と検証、柔軟な対応が求められている。

(テレビ西日本)

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