岸田首相は9日、長崎の原爆犠牲者を追悼する平和祈念式典にビデオメッセージを寄せた。

原爆犠牲者を追悼する平和祈念式典(9日)
原爆犠牲者を追悼する平和祈念式典(9日)
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岸田首相はビデオメッセージの中で「七十八年前の今日、長崎で起きた筆舌に尽くしがたい惨状、そしてそれによりもたらされた苦しみは、二度と繰り返してはなりません」と述べた。

その上で「我が国は、世界で唯一の戦争被爆国として核兵器のない世界を実現するため、非核三原則を堅持しつつ、たゆまぬ努力を続けてまいります」と語った。

さらに岸田首相は、ロシアによる核の威嚇に言及し、「核兵器のない世界の実現に向けた道のりは一層厳しいものになっています。しかし、こうした状況だからこそ、我が国は核兵器不拡散条約を、国際社会が結束して維持・強化するよう訴えつつ、国際社会の取り組みを主導してまいります」と強調した。

岸田首相がビデオメッセージを寄せた(9日)
岸田首相がビデオメッセージを寄せた(9日)

今回、岸田首相は、台風6号の影響で長崎市が平和祈念式典の規模を縮小したことに伴い出席が見送りとなり、ビデオメッセージを寄せた。首相が長崎の平和式典に出席しないのは、1999年以来。

岸田首相のメッセージ全文

本日ここに、被爆七十八年目の長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典に当たり、内閣総理大臣として、犠牲となられた方々の御霊に対し、謹んで、哀悼の誠を捧げますとともに、今なお、後遺症に苦しむ方々に対し、心からお見舞いを申し上げます。

一木一草もない焦土と化したこの街が、市民の皆様の御努力によりこのように美しく復興を遂げられたことに、私たちは改めて、乗り越えられない試練はないこと、そして、平和の尊さを強く感じる次第です。

七十八年前の今日、長崎で起きた筆舌に尽くしがたい惨状、そしてそれによりもたらされた苦しみは、二度と繰り返してはなりません。

我が国は、世界で唯一の戦争被爆国として、「核兵器のない世界」を実現するため、非核三原則を堅持しつつ、たゆまぬ努力を続けてまいります。これは我が国の使命であり、それは、これからも変わりません。

核軍縮をめぐる国際社会の分断が深まり、ロシアによる核の威嚇が行われる中で、「核兵器のない世界」の実現に向けた道のりは一層厳しいものになっています。しかし、こうした状況だからこそ、我が国は、G7議長国、国連安保理非常任理事国として、その実現に向け、核兵器不拡散条約を国際社会が結束して維持・強化するよう訴えつつ、国際社会の取組を主導してまいります。

あわせて、G7広島サミットの確かな成果を土台として、国際賢人会議の議論の成果も活用しながら、「核兵器のない世界」の実現に向け、核軍縮の進展に向けた機運をより一層高めてまいります。

被爆の実相を世代と国境を越えて伝えていくことは、核軍縮に向けたあらゆる取組の原点として重要です。これからも長崎や広島を訪れる世界中の多くの人々に、被爆の実相に触れ、そして、平和への決意を新たにしていただきたいと思います。そのために、我が国は、「ユース非核リーダー基金」のプログラムなどを通じ、被爆者の方々と手を取り合って、被爆の実相への理解を促す努力を続けてまいります。

被爆者の方々には、保健、医療、福祉にわたる支援の必要性をしっかりと受け止め、高齢化が進む被爆者の方々に寄り添いながら、今後とも、総合的な援護施策を推進してまいります。特に、原爆症の認定について、できる限り迅速な審査を行うよう努めてまいります。

結びに、永遠の平和が祈られ続けている、ここ長崎市において、核兵器のない世界と恒久平和の実現に向けて力を尽くすことを改めてお誓い申し上げます。

原子爆弾の犠牲となられた方々のご冥福と、ご遺族、被爆者の皆様、並びに、参列者、長崎市民の皆様のご平安を祈念いたしまして、私の挨拶といたします。

政治部
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日本の将来を占う政治の動向。内政問題、外交問題などを幅広く、かつ分かりやすく伝えることをモットーとしております。
総理大臣、官房長官の動向をフォローする官邸クラブ。平河クラブは自民党、公明党を、野党クラブは、立憲民主党、国民民主党、日本維新の会など野党勢を取材。内閣府担当は、少子化問題から、宇宙、化学問題まで、多岐に渡る分野を、細かくフォローする。外務省クラブは、日々刻々と変化する、外交問題を取材、人事院も取材対象となっている。政界から財界、官界まで、政治部の取材分野は広いと言えます。