フジテレビ南極取材班が、帰国後「Dr.コトー診療所」のモデルとして知られる鹿児島県甑島(こしきしま)で、南極出前授業を開催した。
フジテレビ南極取材班は、第64次南極地域観測隊に132日間同行し、地球最後の秘境とも呼ばれる南極で、地球温暖化に関する調査研究の最前線を取材撮影した。南極出前授業の目的は、取材班が南極に行って感じたことを子供たちに伝え、そこから地球温暖化について授業で話し合うこと。地球の未来についてどのようなシナリオが考えられているのか、子供たちは地球温暖化についてどのように考えているのか、“先生役”の筆者にとっても大変興味があった。
ペンギンの姿に大リアクション
私が向かった甑島は、県本土からおよそ40キロ西にある。
3700人が暮らす小さな島、甑島にある「下甑手打診療所」にはかつて、約40年もの間、所長として島の医療を守り続けた医師、瀬戸上健二郎さんがいた。
瀬戸さんは、ドラマ「Dr.コトー診療所」のモデルとして知られている。
東京からは羽田空港から鹿児島空港、車でフェリー乗り場まで移動、フェリーに乗船してから1時間弱で甑島の港に到着した。
授業は、KTS鹿児島テレビの協力を受け、フジテレビ「南極プロジェクト」の一環として薩摩川内市甑島の海星中学校で実施され、下甑島の海星中学校の生徒と、長浜小学校・手打小学校・鹿島小学校の5・6年生46人が参加した。
授業では、南極取材班が自分たちで撮影した南極の映像を見てもらった。
一番リアクションが大きかったのは、やはりペンギンたち。「かわいい!」という歓声があがったり、隣同士顔を見合わせて笑ったり、うれしいリアクションを見せてくれた。
授業は質問形式で進められ、南極にいる動物や南極の気温などを映像や画像で説明した。
子供たちが真剣な表情に変わったのは、南極の氷が溶け始めているということを説明した時だった。南極の氷が溶けることで海水面が上昇し、陸や島が水没してしまうという未来を紹介したほか、氷が溶ける原因は二酸化炭素の排出がその1つとなっていることにも触れた。
「パチパチって音が聞こえる」南極の氷に興味津々
そして、授業のクライマックス。甑島に1万4000キロ離れた南極から氷が届けられた。
この氷は今年、南極の氷山から削り取って日本に持ち帰ってきたもので、2万年前につくられたものだとされている。南極の氷には、当時の空気が閉じ込められているため、2万年前の空気がそのままの状態で氷の中にある。2万年前といえば、日本は縄文時代だ。
南極の氷を手にした子供たちはみな興味津々の表情で、授業を主催した側としては、しめしめ、といった感触だった。
「パチパチって音が聞こえる」子供たちから次々と声が聞かれた。
水につけた南極の氷から、パチパチという音が聞こえるのは、氷のなかに閉じ込められた空気が勢いよく飛び出してくるときにする音。「2万年前の空気が飛び出しているんだよ」と子供たちに伝えると、驚きの表情を返してくれた。
「南極の本を読んでみたい」「地球温暖化に国境はない」
授業に参加した子供たちからは様々な感想を聞くことができた。
「南極の氷が溶けていると聞いたことがありましたが、大量に溶けていることは知らなかった。地球の自然や未来を守るためにSDGsなどに取り組みたい」
「海水面が上がったら自分の島がなくなってしまうなど考えた時はびっくりしました」
「南極の氷は中が真っ白で、水をかけるとパチパチ音がなったりして面白かった」
「南極は遠くて日本とは関係ないと思っていたので、関係があると知ってびっくりした今度南極の本を読んでみたい」
「地球温暖化に国境はないんだなと思いました」
「南極にはペンギンやアザラシしかいないと思っていましたが、海の中には多くの生物がいることを知りました」
今後もこうした活動を続けていきたい。
(フジテレビ南極取材班 大塚隆広)