7月10日に開山した富士山・静岡側。8月に入り、夏山シーズンもまもなく折り返しを迎える。新型コロナが5類に移行されてから初めての夏とあって登山者数が急増する中、救助要請も増えている。

登山者数は過去10年で最高水準

コロナ禍前を超す人が訪れている富士山
コロナ禍前を超す人が訪れている富士山
この記事の画像(5枚)

7月10日午前9時。静岡側にある富士山の3つの登山道(須走ルート・御殿場ルート・富士宮ルート)は冬季閉鎖が解除され、夏山シーズンに入った。

霊峰の頂を目指す登山者たち
霊峰の頂を目指す登山者たち

新型コロナウイルスの法律上の位置づけが5類へと移行されてから“初めて迎える夏”ということで、2023年は富士山を訪れる人が多い。環境省では登山者数を把握するため、各登山道の8合目付近に赤外線カウンターを設置して調査を行っているが、7月20日に発表された中間発表によれば、開山日から17日までの県内3ルートの登山者数の合計は1万1435人を記録した。これはコロナ禍前の2019年より4割も多く、過去10年間の同期間での比較で最多の数字だ。このことから2023年の登山者数はコロナ禍以前の水準に戻っているどころか、それを上回る勢いとなっていることがわかる。

22日間で31人から救助要請

夏の富士山
夏の富士山

こうしたことが影響してか救助要請も相次いでいる。静岡県警察本部によると7月10日から31日までの間に助けを求める通報が31人からあり、内訳は高山病や低体温症などの病気が13人、転倒が8人、疲労が6人などとなっている。2022年の開山期に富士山で救助を要請したのは51人だったので、すでに半数を上回り、県警地域課は「外国人からの救助要請が目立つほか、疲労により助けを求める高齢者も多い」とした上で「山も大変混雑していて救助にも時間がかかっている状態」と現況について説明する。

また「体調がすぐれないまま登山する人や山に慣れていない人が散見される」と指摘し、特に2023年は登山者が増えている反面、感染対策から山小屋が収容人数を3割から5割ほど減らしていることで週末や祝日を中心に予約が取りづらい状況になっているため、夜間に5合目を出発し十分な休憩を取ることなく夜通しで山頂を目指す、いわゆる“弾丸登山”には例年以上に警戒感を持っている。

隊員にとっても救助は“命懸け”

発足から51年の静岡県警山岳遭難救助隊
発足から51年の静岡県警山岳遭難救助隊

県警では山岳遭難に対応するため、地域課、警備課航空隊のほか、主に富士山を管轄する御殿場署・富士宮署・裾野署、主に南アルプスを管轄する静岡中央署のメンバーで救助隊を編成し、日々、訓練に励んでいる。山岳遭難救助隊の発足から半世紀以上となるが、卓越した登山技術と専門的な知識により、これまで救助活動中に命を落とした隊員はいない。ただ、その任務は常に危険と隣り合わせで、県警地域課は「1日に複数回救助に向かう日があるなど、隊員も非常に過酷な状況の中で現場に向かっていて、救助する方も命懸け」と話す。

このため「余裕を持った計画を立てて万全の装備での登山を心がけると共に、天候や体調によっては登頂を断念する勇気も持ってほしい」と呼びかけている。

(テレビ静岡)