母親が病院の担当者にのみ身元を明かし出産する、“内密出産”に取り組む慈恵病院で、先進地・フランスの現状ついての講演があった。世界的に進んだ福祉政策が、予期せぬ妊娠に悩む女性を支えるためのヒントになりそうだ。
匿名出産”取り組むフランス
7月27日、慈恵病院で講演したパリ在住の安發明子さんは、大学卒業後、生活保護ワーカーを経て2011年にフランスに渡り、子ども福祉政策を研究している。

安發明子さん:
フランスのスタンスとしては、子どもを育てることを望まない場合もパブリックヘルスとして、合法的に安全に産む選択肢を用意する

安發さんによると、フランスには200年以上前の1793年から匿名で出産できる制度があり、予期せぬ妊娠をした場合、専門機関で心理士などが寄り添って対応。

匿名の出産で生まれた子どもは、生後2カ月あまりという早い段階で、養子縁組の親の元に預けられ、子どもの心理面でのケアも充実しているということだ。
「日本でも苦しい中、暮らす人いる」
慈恵病院 蓮田理事長:
孤立した妊娠女性と接していると絶望的になる。どうやって支援して、平穏無事な人生をたどれるかとなったときに、自分の人生かけるくらいでないと無理だなと…

安發明子さん:
これだけケアしても、フランスの匿名出産は年間500人から600人いるわけです。日本でも、それ以上の数、かなり苦しい中、暮らしている人がいるんじゃないかということです

安發さんは5月に、熊本市と慈恵病院が共同設置した、“出自を知る権利”の検討会のメンバーでもあり、女性や子どもをめぐる課題にフランスの取り組みが参考になりそうだ。

8月2日に、2回目の“出自を知る権利”の検討会が開かれる予定で、こうした海外での取り組みについて検討会の場でも改めて報告され、議論が進められることになっている。
(テレビ熊本)