政府は、東証プライム上場企業の女性役員の比率を「2030年までに30%以上にする」という目標を掲げている。専門家からは「今後、女性役員を置かない企業は投資されなくなる」という声もあがり社会の変化が求められているが、街からは「現状では難しい」という声が多く、課題は山積みとなっている。こうした中、いち早く取締役常務執行役員に就任した女性を取材した。

まだ日本で珍しい女性役員

福岡市博多区にある西日本シティ銀行本店。少し緊張した表情で出勤したのは小湊真美さんだ。

この記事の画像(8枚)

この日の朝礼で報告されたのは…

小湊さんの「取締役常務」就任だった。

西日本シティ銀行取締役常務 小湊真美さん:
これからもまずは地域のため、お客様のためになるような広報活動を行っていきたいと思います。身が引き締まるような思いもありますし、より一層、地域、お客様のために頑張ろうという思いでいっぱいです

日本ではまだまだ珍しい女性役員。しかし、政府は「2030年までにその比率を30%以上にする」という目標を掲げている。

2023年6月5日
2023年6月5日

政府が決定した「女性版骨太の方針2023」。この中で掲げているのが東証プライム上場企業の女性役員の比率を「2030年までに30%以上にする」という目標だが、あと7年で実現は可能なのか?

G7各国の女性役員比率との乖離

G7、先進7カ国の企業の女性役員比率をみると、日本以外が30~40%台であるのに対し、日本は15.5%と大きな差がついている。方針では「日本経済の今後の成長のためにも”女性登用の加速化”が喫緊の課題」とした。

女性役員“ゼロ”企業に迫る危険

企業の経営戦略を研究する専門家は、今後、女性役員を置かない企業は投資されなくなる可能性があると指摘する。

福岡大学 合力知工教授(経営戦略論):
“ESG”っていうのは環境のE(=Environment)、社会のS(=Social)、ガバナンス(管理・統制)のG(=Governance)なんですけれども、それぞれにおいて卓越したものを持っている企業に対して投資家たちが投資をしようという“ESG投資”の動きがある。少なくとも“S”(社会)の部分に関して非常に日本は魅力が薄いということで投資家たちからも見放されてしまう。こういう現状は変えていかなければいけない

“育児や家庭”現状では厳しいとの声

しかし、あと7年で女性役員比率を30%に増やすことはできるのか?街の声を聞いてみると…

60代男性(金融業):
女性の役職者が一定数、まだいないので、急には難しいのかな

20代男性(不動産業):
なかなか難しい。どうしても女性は子育てとかそういう部分で一時的に働く場から一回出て行かなければいけない場面があるので、そういう部分が日本は整っていない

30代女性(金融業):
「女性が入っていく隙があるのか」と、「チャレンジする女性がどれくらいいるのか」。私自身は昇格はしたいが、役員はちょっと…。仕事面でそこまで自信もない。家庭との両立も実際めちゃめちゃ大変で

30代女性(金融業):
女性が活躍できるのは大事なことだが、どうしても男性役員が多いというのが現実だし、育児とか家庭を考えたときに諦める女性のほうが多いのでは

男性からも女性からも「現状では難しい」という声が多く聞かれた。

女性役員“社外から”も…数追いつかず

こうした中、いま全国的に、女性役員を“社外”から招こうという動きが活発化している。人材紹介会社に話を聞くと…

プロフェッショナルバンク 呑田好和さん:
社外役員の紹介に関する問い合わせは、2022年度に関しては“前年のほぼ倍を超える状況”になっている。社外役員には経営者の経験っていうところは割と共通して求められる。かつ女性ということになると本当に日本は少なくてニーズに対して数は追いついていないと思う

誰もが挑戦しやすい環境作りを

今後、役員への女性登用を進める上で大きな課題となる「人材の確保」。企業には何が求められるのか。

西日本シティ銀行で役員を務める小湊真美さんは、「性別に関係なく誰もが挑戦できる環境づくりが大切」と話す。

西日本シティ銀行取締役常務 小湊真美さん:
入ったときは、男女雇用機会均等法も終わってますから、男性の新入行員も女性の新入行員も同じようにその仕事をさせてもらえるというか、そういう環境にあるかと思ったんですけど、男女で業務が全然違う。もうひとつは昇進、昇格のところが全く違っていた。そもそも男性と女性ってもちろん性別的な差はあるんですけど、“能力に差はない”と思うんですよね。やっぱり男性とか女性とかじゃなくて能力とか適性とかをきちっと評価した上で、男性も女性もなく、こういう構成でいくとか、こういう視点のあり方でいくとかそういうことはやっぱり考えるべき

「家庭=女性」の風潮撤廃へ

さらに、日本の社会にいまだ根強く残る「家庭=女性」という風潮もなくす必要があると指摘する。

西日本シティ銀行取締役常務 小湊真美さん:
子どもが熱を出したといったら迎えに行くのは、やっぱり女性の方に電話がかかってくるとかね、それ、やっぱりまだまだそういう感覚が残ってるんだろうと思うんですよね。そんなの行きやすい方とか行ける方が行く、そんな時代に全体がなってこないと企業がどれだけ変わっても駄目ですし、やっぱり社会の風潮も含めて変わっていかないと、なかなかその”数字ありき”のところは厳しいかなって気がしますよね

求められるのは目標数字の達成ではなく、「本当の意味で女性が輝ける社会」。

女性役員30%。日本は今後、変わることができるのか―。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
テレビ西日本

山口・福岡の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。