自分の人生を振り返って生き生きと過ごしてもらいたいと、富山・南砺市の女性絵本作家が「高齢者向けの絵本」を出版した。その絵本を使って、認知症予防にもつなげたいと取り組む女性作家の活動を追った。

人生を振り返る「ありがとうアルバム」

絵本作家(南砺市在住) みなみまあささん:
小さいころ、どんな遊びをしていましたか

男性:
チャンバラ

女性:
遊んだことはない。田んぼの手伝いばかりで

女性:
まりつきとか、石けり。川で水泳もした

ワークショップには13人が参加
ワークショップには13人が参加
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南砺市で開かれたワークショップには、60代~90代までの13人が参加。子どものころの思い出を振り返りながら、「自分のアルバム絵本」を作っていた。講師を務めたのは、南砺市在住の絵本作家・みなみまあささん。

絵本作家のみなみまあささん
絵本作家のみなみまあささん

絵本作家(南砺市在住) みなみまあささん:
子どものころから順番に振り返って、写真を貼ったり、書き込みができる内容です

みなみさんは、2023年4月に高齢者向けの絵本「ありがとうアルバム」を出版した。ページには、設問とそれを書き込む空欄があり、読者本人が完成させる。

人生を振り返るアルバム
人生を振り返るアルバム

この絵本は、自分の子どものころから今までの出来事や思い出を書き込んだり、写真を貼ったりしながら、人生を振り返ることができるもので、家族や知人がメッセージを入れられるページもある。イラストは介護福祉士のさえぐちさよさんが担当し、温かみのある絵本に仕上げている。

絵本作家(南砺市在住) みなみまあささん:
普通に絵本アルバムを作ろうと思っていたが、高齢者向けで、認知症予防につながればいいなと思った。回想法を取り入れることで、過去を思い出すことは認知症予防につながるとされているので、それを取り入れた絵本アルバムにしたいなと思った

懐かしい話題で自然と笑顔に

みなみさんがこの絵本を書くきっかけになったのが、地元の建設会社で働いていたころ、退職する同僚や義理の母に、これまでの思い出や人生を振り返るアルバムを作り喜ばれたことだった。

退職後、夢を描くも…
退職後、夢を描くも…

地域の高齢者にも「自分だけの思い出のアルバムを作ってあげたい」。2022年に退職し、そんな夢を描いていたみなみさんだったが…。

絵本作家(南砺市在住) みなみまあささん:
コロナ禍だったので、高齢者施設に行くことも、作ってあげることもなかなかできなかったので、絵本にすればたくさんの高齢者に届けられると思いついた

ボランティア活動を開始
ボランティア活動を開始

行動制限がなくなり、日常が戻り始めた2023年の夏、みなみさんの夢が動き始めた。「ありがとうアルバム」を使ったボランティア活動だ。

この日は、子ども時代を思い出してもらい、子どものころの遊びやおやつ、小学校の思い出について参加者1人ひとりに聞いていった。中でも盛り上がったのが小学校の給食の思い出だ。

盛り上がったのは「給食」の思い出
盛り上がったのは「給食」の思い出

絵本作家(南砺市在住) みなみまあささん:
脱脂粉乳がまずくて飲めなかったという思い出のある方は?

男性:
いや~、まずかったね。吐いてたもん

男性:
イナゴをいったのを、はじめは食べるのが気持ち悪くて。ちょっとつまめなかったけど、食べてみたらおいしかった

女性:
きな粉をまぶした揚げパンがおいしかった

懐かしい話題に思わず笑顔
懐かしい話題に思わず笑顔

参加した人たちは子どものころを思い出し、懐かしい話題に自然と笑顔があふれていた。

このワークショップは2024年3月まで行われ、参加者それぞれが自分史のアルバム絵本を作ることを目指してほしいという。

参加した男性
参加した男性

参加した人:
いつもは、昔のことはあんまりね。思い出すことはあるが。(こういうイベントを)やってもらって思い出すと、いいね

参加した人:
楽しかった。なかなかこんな機会ないから。人生の川の流れが河口に来ているから、思い出してリフレッシュするのもいいかなと思う

家族とのコミュニケーションツールにも

みなみさんは、この「ありがとうアルバム」を、家族とのコミュニケーションツールの1つとして活用し、絆を深めてもらいたいと考えている。

家族とのコミュニケーションツールとしても
家族とのコミュニケーションツールとしても

絵本作家(南砺市在住) みなみまあささん:
家族と、このページに貼る写真を撮ろうかとか、おばあちゃん、お花を習っていたからその時のお花を出してこのページに貼ろうかとか、そういったコミュニケーションを取っていただきたい。そういう働きかけで認知症予防にもつながるし、思い出すことでもつながるし、イラストを見て質問内容を見るだけでも心が和んだり落ち着いたりすると思うので、ぜひ手に取っていただきたい

みなみさんの絵本には人生のいろんな時代の設問があって、この1冊をまとめると自然と自分史ができるようになっている。

みなみさんはぜひ、お孫さんやお子さんから、おじいちゃんおばあちゃんにプレゼントして、コミュニケーションをとってもらったり、高齢者施設などでも活用してもらったりしたらと話していた。「ありがとうアルバム」は、南砺市の書店や道の駅などでも販売されている。

(富山テレビ)

富山テレビ
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