災害関連死を含めて67人が死亡し、2人が行方不明となっている2020年7月豪雨から7月4日で3年となった。熊本・人吉市や球磨村では、多くの人がサイレンにあわせて黙とうを捧げ、犠牲者を悼んだ。
2020年7月4日 あの日から3年
7月4日午前10時ごろ、人吉市役所では、防災無線のサイレンに合わせて職員が犠牲者に黙とうを捧げた。

また、木船に乗って球磨川を楽しむ「球磨川下り」で有名な人吉市下新町にあるHASSENBAでは、船頭たちが黙とうを行い、犠牲者をしのんで花を手向けた。

球磨川くだりの船頭 藤井和彦さん:
メンバーのほとんどが水害を経験していない。その当時の社員の思いもつなげながら3年たったが、あっという間

船頭の藤井さんは、3年前の豪雨を経験していない船頭も多くいることから、「氾濫した球磨川の脅威も伝えたい」と話した。
球磨村でもなじみの店の店主しのび献花
また、7月4日午前8時半ごろ、球磨村渡の球磨川では、球磨川ラフティング協会の会員14人がサイレンに合わせて黙とうを捧げた。この場所は、球磨川を下るラフティングの急流コースの起点で、参加した人たちは球磨川に花や線香を手向けた。

また、被災前の急流コースの終点だった球磨村一勝地にあるJR肥薩線の球泉洞駅近くでは、メンバーが世話になったなじみの商店があった場所に向かった。

この場所では、店主の川口豊美さんや愛甲和子さんなどが犠牲となっていて、その祭壇に花や焼酎を手向けた。
球磨川ラフティング協会 渕田拓己代表理事:
長いようで短かった3年。九州管内を回れるような(ボートの)レスキューチームを編成して、しっかりとした団体になりたい

また、入所者14人が犠牲となった特別養護老人ホーム・千寿園の更地には、花が手向けられていた。
「坂本に帰りたい」 短冊に記した願い
一方、八代市坂本町にあるさかもと復興商店街では、7月2日に七夕の飾り付けが行われた。
3年前の豪雨で甚大な被害に遭った坂本町では、その翌年から、犠牲者への追悼の思いや復興への願いを込めた七夕飾りが行われている。

長さ5メートルほどの竹に、地元の住民や仮設団地で暮らす人たちの願いが書かれた短冊が飾られた。
住民:
いっぱい書いた。「元気ですごせるように」と
住民:
坂本が早く復興できますように
住民:
「早く復旧が進みますように」と。安心安全でないと、みんな戻って来られない

短冊には、復興への願いや「坂本に帰りたい」など、ふるさとでの生活再建への思いが込められていた。
「災害はいつ起こるか分からない」 教訓生かし防災へ
両親を亡くした西村直美さん:
3年たつけど災害によってね、両親を失った悲しみは変わりません。つらいですね

3年前の7月豪雨で災害関連死を含む21人が亡くなった人吉市では7月2日、犠牲者追悼式が営まれた。

式には、蒲島知事や遺族など約50人が参列。遺族を代表して伯母・アヤ子さんを亡くした倉岡伸至さんが今の気持ちを語った。
倉岡伸至さん:
私はあの日見た惨状、大切な伯母を亡くした悲しみは忘れることはありません

倉岡伸至さん:
災害はいつ起こるか分かりません。教訓を生かした防災対策を行い、当事者として経験を伝え、これからも協力していきたい
そして、遺族などが献花台に花を手向け、鎮魂の祈りを捧げた。
両親を亡くした女性 一番の後悔は…
両親を亡くした西村直美さん:
大雨が降る度に怖くて、命を守る行動をしてほしいなと
西村直美さんの両親はあの日、自宅から避難せず、逃げ遅れにより命を落とした。

両親を亡くした西村直美さん:
私の場合、本当に両親と災害について話したことがなかった。それが一番の後悔…。同じ思いをしてほしくない

西村さんは、「命を守る行動、避難の大切さ」を今後も伝え続ける覚悟だ。
一方、4人が犠牲となり、いまなお1人が行方不明となっている八代市でも、被害の大きかった坂本町で追悼式が営まれた。

叔父を失った蓑田政晴さん:
短かったと言えば短かった。アッという間の3年だった。悔やみます。(叔父が)起きていたら助かったんじゃないかと。でも水の量がすごかった。想像もつかない量だった
ピーク時の約7割が生活再建 復旧復興進む
一方、熊本県庁では7月4日、7月豪雨の復旧復興本部会議が開かれ、冒頭、犠牲者に黙とうが捧げられた。
県が取り組む復旧復興への進捗状況などが示され、仮設住宅の入居者について2023年6月末時点で537世帯1,128人となり、ピーク時の約7割が住まいの再建を果たしたと発表した。

ピーク時は、2021年1月末で1,814世帯・4,217人も仮の住まいを余儀なくされた。その上で、2023年度中には約9割が再建を果たし、残り1割についても再建のめどが立つ見込みとしている。
また、観光面については、人吉市内の宿泊施設の復旧率が6月末時点で93.9%に達したと発表。7月7日から豪雨被災地への宿泊旅行を助成するキャンペーンなどで、さらなる後押しを進めるとしている。

蒲島知事は、復興に向けて計画通りに進んでいるとし、「今後も被災地の創造的復興と、緑の流域治水を進めていきたい」と述べた。
(テレビ熊本)