6月17日から23日の日程でインドネシアを訪問された天皇皇后両陛下。今回の訪問では、陛下が急きょスピーチをされるなど“予定外”の場面もあった。フジテレビ皇室担当の橋本寿史解説委員は、「“両陛下流”ともいえる国際親善の在り方というものが垣間見られた」と指摘する。

ダルマ・プルサダ大学で日本語を学ぶ学生と交流された両陛下(6月20日)
ダルマ・プルサダ大学で日本語を学ぶ学生と交流された両陛下(6月20日)
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自信につながる訪問

――天皇皇后両陛下の外国への公式訪問は即位後初めてのことでした。

即位後初めてでもあり、国際親善を目的としたお二人での訪問は約20年ぶり、オーストラリア、ニュージーランドを訪問されて以来ということになります。

植物園では色とりどりの蘭を観賞された(6月19日)
植物園では色とりどりの蘭を観賞された(6月19日)

――今回は1週間の日程でしたが、この期間についてはどのように見ていますか?

これまでの国際親善での外国へのご訪問ですと、訪問先で地方に行かれるケースもありましたし、1週間という期間は決して長くないと私たちはとらえています。

こういった外国訪問などをなさっていただくことで、一つ一つのステップを上がられていると思いますし、今回は、両陛下の自信につながる良い訪問になったのではないかと私は感じています。

垣間見えた“両陛下流”

――現地では両陛下の笑顔も多く拝見できました。どのような場面が印象に残っていますか?

両陛下がゴルフカートに乗られたり、皇后さまが大統領夫人と二人で伝統の染め物をご覧になられたり、陛下がボロブドゥール寺院にサンダルを履いて登られたり、一つ一つの場面が印象的でした。

ジョコ大統領が運転するゴルフカートでボゴール宮殿内を移動された(6月19日)
ジョコ大統領が運転するゴルフカートでボゴール宮殿内を移動された(6月19日)

昼食会では、本当は「おことばの交換」があるはずだったのですが、インドネシア側の配慮もあって、急きょなくなったんです。気兼ねない雰囲気、温かい雰囲気の昼食会をしたいとインドネシア側が思ったようです。昼食会で「おことばの交換」をするのは、少し堅苦しいと思ったのかもしれません。

予定になかったスピーチを行われた陛下(6月19日)
予定になかったスピーチを行われた陛下(6月19日)

その一方で、記者会見のような場所で大統領が挨拶をし、それを受ける形で、急きょ陛下がスピーチをされるということもありました。

両陛下が臨機応変にその場に馴染まれていろんな時間を過ごされたというのも、面白い経験をされたのだろうなと思います。

――橋本解説委員が記者としてずっと皇室を取材してきたなかで、こういったことはめずらしいですか?

前日になって「おことばはない」と聞いてびっくりする、というような流れはあまりなかったですね。海外に行くと、相手国もサプライズを用意するようなこともあります。今回の経験によって、ということもありますが、“両陛下流”の国際親善のあり方のようなものが垣間見られたような気もします。

ボロブドゥール寺院で取材に応じられた陛下(6月22日)
ボロブドゥール寺院で取材に応じられた陛下(6月22日)

――陛下がカメラの前で記者団の取材に応じられるのもめずらしいのでは?

皇太子時代には、ああいった形で記者団の質問に現場で率直に答えられることもありました。
天皇陛下に即位されても、あの形というのはやっていこうと。堅苦しいというよりは、フランクなイメージになりますから、とてもいいやり方だと思います。

皇太子時代には富士山に登頂し、記者団の前でご感想を述べられた(2008年8月)
皇太子時代には富士山に登頂し、記者団の前でご感想を述べられた(2008年8月)

未来志向の国際親善

――現地のダルマ・プルサダ大学を訪問された時は、日本語を学ぶ学生の皆さんと言葉を交わされ、愛子さまと同じ大学4年生の学生と卒論の話題に触れられていました。

国際親善の中でのテーマ設定の中に、「未来志向」というのがすごく強く出てこられたような気がします。

ダルマ・プルサダ大学では日本語を学ぶ学生と交流された(6月20日)
ダルマ・プルサダ大学では日本語を学ぶ学生と交流された(6月20日)

陛下は「若い世代との交流」をとても望まれていました。上皇さまの時代にそういうものがなかったわけではないのですが、どうしても戦争のイメージというのがついてきてしまっていました。もちろん両陛下も今回、元日本兵の子孫の方たちと交流されています。ただ、それ以上に、陛下は「若い世代」というおことばを会見で述べられているように、「若い世代との交流」がこれから先、両陛下のスタイルになっていく一つなのかなと思います。

皇后さまへのお気遣い

――排水施設や世界遺産のボロブドゥールの視察など、陛下お一人での日程もあったのは、皇后さまの体調を気遣われてのことでしょうか?

昼食会や歓迎行事、そして、カリバタ英雄墓地で慰霊碑に花を手向けるといった、国と国との向き合いといった公式行事には皇后さまも出られましたが、地方都市への視察というのは、皇后さまは控えられました。

ただ、今回は皇后さまの主治医は同行をキャンセルしました。体調やスケジュールをみて、同行の必要がないと判断をされたのでしょう。

ダルマ・プルサダ大学での学生らとの交流に急きょ参加された(6月20日)
ダルマ・プルサダ大学での学生らとの交流に急きょ参加された(6月20日)

皇后さまはご体調の面も考えた上で、いろいろなことができたと思います。ダルマ・プルサダ大学と職業訓練学校には皇后さまは同行を控えることも検討されていましたが、急きょ参加され、皇后さまの強いお気持ちを感じることができました。

――インドネシアの方も、両陛下が喜ばれるようにと一生懸命考えてくださっているのだなと感じました。

本当にそうだと思いますね。やはり、お迎えする国は本当に温かくもてなしてくださります。

国際親善で最も大切なのは、相互理解です。お互いのことを知るというところにつながっていく部分ですし、それと同時に、もう一つは、未来志向の中であるのは「切磋琢磨」という言葉だと私は思っています。お互い対等の立場、そして、先へ先へとお互い一緒に切磋琢磨して進んでいこうということです。

上皇ご夫妻の時代もそういった国際親善の考え方を持たれていて、そういう言葉を私も聞いていました。そういった考え方は、受け継ぐというよりは、同じ考えを理解されて、今後も続けられていくのだと思います。

――新型コロナの規制が緩和されて以降、両陛下はとても忙しく活動されていますね。

お帰りになってからが私は心配で、少し休んでいただきたいと思っています。これは私の推測ですが、皇后さまを一番気遣われたのは陛下だったと思うんですね。

陛下の“NARUTOジョーク”(人気アニメ『NARUTO -ナルト-』が好きだと話す現地の学生に対し、陛下が「私は徳仁(ナルヒト)です」と返された)で周囲は笑いに包まれたわけですが、実はあのジョークは皇后さまにリラックスしてほしくて、仰ったのではないかと私は思います。

また、秋は忙しくなりますから、両陛下には、夏にはご静養もしていただいて、しっかり休んでいただきたいと思います。

(FNNプライムオンラインYouTube「皇室親話」より)

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プライムオンライン編集部
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