天皇皇后両陛下は6月17日から23日まで、即位後初めての公式外国訪問としてインドネシアを訪問されました。

そのうち、22日には、陛下おひとりでジャワ島中部にある世界遺産で世界最大級の仏教遺跡「ボロブドゥール寺院」を訪問されました。この寺院には、日本人が修復に深く関わり、陛下もその道のりに心を寄せてこられました。
インドネシアの伝統的な染め物とサンダルをお召しに
陛下は(現地時間)午前8時ごろ、インドネシアの伝統的な染物「バティック」のシャツにサンダル姿で、うっすらと朝もやの残るボロブドゥール寺院に到着されました。

陛下はガイドの男性の軽妙な説明に時折笑顔を浮かべながら耳を傾け、約1時間にわたって視察されました。

このサンダルは、遺跡の保護のためのもので、履き心地を尋ねられた陛下は「思っていたより履き心地が良かったです。サンダルを履くことによって、寺院を保存しようという、そういった方々の熱意を強く感じました」と笑顔で答えられました。
火山灰に埋もれていたボロブドゥール寺院
8世紀頃に建てられたボロブドゥール寺院は、幾度となく繰り返されたムラピ山の噴火によって、かつて火山灰に埋もれていました。約1000年近く経ってから発見され、1970年代に入ると、日本人建築家の故・千原大五郎氏など、UNESCOのもとに世界から集められた専門家によって修復・保存の方針が議論され、その後本格的な修復作業が行われました。

陛下はこうした活動に長く心を寄せ、1981年に東京でボロブドゥール寺院に関する特別展が開かれた際には、当時大学生の陛下が上皇さまとともに会場に足を運ばれました。
ボロブドゥール寺院の保存官を務め、当時千原氏とともに修復について説明した、マウラナ・アブドゥラヒム・イブラヒム氏は「陛下はボロブドゥール寺院の保存について理解されていた」と振り返ります。

千原氏と親交があり、カンボジアの世界遺産アンコール・ワットの修復に携わった上智大学の石澤良昭教授にも話を聞きました。
当時のボロブドゥール寺院は「ある部分は保存されているが、ほとんど火山灰の中にあったこともあり崩れ落ちて、見る影もなかった」ということで、千原氏は、火山灰をよけながら1つずつ石を外して修復する地道な作業の傍ら、インドネシアの人たちに技術指導を行っていたそうです。
千原氏の特訓を受けた“愛弟子”たちは、その後、カンボジアのアンコール・ワットの修復にも携わり、ボロブドゥール寺院とアンコール・ワットの石材の違いに戸惑いながらも「ボロブドゥールで学んだとおり、きちんと修復」し、インドネシアチームが修復を手掛けた小さな遺跡は今も残されてるそうです。

石澤教授は、陛下のカンボジア訪問時にアンコール・ワットを案内するなど、陛下と親交があります。その際に陛下は「石の修復保存に雨の気候や環境がどういう影響を与えるかということにかなりご関心をお持ちだった」と振り返っていました。
「末永く保存されることを心から願っております」

実際にボロブドゥール寺院を訪れ、保存についても耳を傾けた陛下は視察後、
「前にカンボジアで訪問しましたアンコール・ワットでも遺跡の修復、あるいは保存に多くの人々が、現地の人々が関わっていて、そしてそれをまた、日本の指導者が、上智大学の石澤先生をはじめとする方々がいろいろ指導して育てておられる。このような文化交流などが行われていることも、その時知ってとても嬉しく思いました」
「素晴らしい寺院がこれからも末永く保存されることを心から願っております」
と話されていました。

ところで、陛下が寺院を訪れる前日、今回陛下のガイドを務めた男性の案内でFNNは遺跡を取材すると、男性はニワトリのレリーフを示して「秋篠宮さまが以前いらした時に長い時間をかけてニワトリのレリーフを探していた」と話していました。

男性は翌日、陛下への説明でもこのことを伝えると、陛下は愛用のカメラで撮影し、「日本に帰って見せます、必ず喜ぶでしょう」と話されていたということです。

帰国後の26日、陛下は秋篠宮さまから訪問中の国事行為の臨時代行について秋篠宮さまから報告を受けられました。 側近によりますと、その際にインドネシア訪問の話題になり、陛下は撮影した写真を秋篠宮さまに手渡されたということです。
40年以上前から上皇さまとともに修復に心を寄せてきた寺院に実際に足を運び、弟の秋篠宮さまのエピソードにも触れられた今回の視察は、ご家族との思い出もたくさん散りばめられたものでもあったのかもしれません。