仙台市に次ぐ宮城県で第二の人口を擁する港町・石巻市の住宅街で、サルの目撃情報が相次いでいる。市や警察が警戒を強化しているが、いまだ捕獲には至っていない。もし、外でサルに遭遇したら…どう対処すればいいのか、専門家に聞いた。
「ヤバい！ヤバい！」突然飛び掛かってきたサル
２８日朝、石巻市で取材班のカメラがとらえたのは、空き家の屋根の上で木の実を食べ、どこかで拾ったのだろうか、灰皿のような缶を手に持ち、時折その缶を、珍しそうに、振ったりたたいたりする様子が見て取れた。人的被害が出ないよう、付近には警察官の姿も見られた。
前日には、この場所からほど近い集合住宅でもサルが目撃されていた。「この場所でサルを見たのは初めて」と話す住民のスマートフォンには、その一部始終がとらえられていた。
ベランダの手すりの上を我が物顔で闊歩するサル。
住民：
「待って待って待って！え！え！ちょっと！サルです！」
住民がスマートフォンで撮影し初め、声を発した次の瞬間！
住民：
「やばい！やばい！」
サルは、住民の声に反応したかのように、突然、窓ガラス越しに飛び掛かって来たのだ。突然の出来事に恐怖すら感じたという住民は、当時の様子を次のように話してくれた。
住民：
「腰を抜かすというか…信じられないと思いました。2回目に来たときはベランダでおしっこをして…。窓をバンバンずっと叩いたり、網戸を何度も開け閉めされたり…。怖すぎて震えが止まらなかった」
部屋の中には生後11カ月の子どももいたと話す住人。もし窓を閉めていなかったら…。
港町でなぜ？内陸部から来た「ハナレザル」か
5月以降、石巻市では、市の中心部を含め、サルの目撃情報が急増。出没範囲は広範囲にわたっているが、離れた場所で、かつ同じ時間帯に目撃されるケースがないことから、市は、同じサルが移動している可能性が高いとみている。付近の住民からは、「小さい子供が家にいるので、何かあると怖い」などと不安の声が挙がっている。
そもそも、太平洋に面した港町でなぜ、サルの目撃情報が相次ぐのか。近くでは、石巻市・牡鹿半島沖に浮かぶ離島・金華山にサルの生息地として知られているが、海を泳いで渡ってきたとは考えにくい。サルの生態に詳しい石巻専修大学の辻大和准教授は、県西部の山沿いに生息しながらも、群れから離れて移動してきた「ハナレザル」の可能性があると話す。
石巻専修大学・辻大和准教授：
「ニホンザルの基本的な生態として、オスザルというのは、大きくなると産まれた群れを離れて、新しい群れに入り込む習性がある。今回目撃されたオスは産まれた群れから離れて新しい群れを探している最中の個体だと思います」
さらに、映像を見てもらうと、辻准教授はあるポイントに目をつけた。サルがしきりに灰皿を触る様子だ。この動きは、若いサルにみられる習性で、辻准教授は、このサルは「３歳から５歳ほどの若いオス」だと分析する。
石巻専修大学・辻大和准教授：
「そのくらいの年齢のオスというのは、まだ少し子供っぽさが残っている年代。何か面白いものを見つけると、それをおもちゃにして遊ぶということがある。たまたま見つけた灰皿に興味を持って、いじっているという感じではないでしょうか」
「じっと見つめるのは危険」
では、実際にサルに遭遇したら、私たちはどうすればよいのか。辻准教授は、万が一、出会ってしまった場合でも、慌てず、目を合わせないことが大事だと話す。
石巻専修大学・辻大和准教授：
「野生のサルが一番嫌がるのが自分をじっと見つめられること。カメラとか向けられることもすごく嫌がる。『威嚇されている』と彼らは捉えるんです。自分を守るため、威嚇して相手を驚かすという行動は、野生のサルでもよく見られる。むやみに人を噛みついたりはしないと思いますが、ある程度大きくなると牙も鋭くなる。万が一けがでもしたら大変なので」
今回、連日サルが目撃された現場は住宅街。住民たちの間では不安が募る中、市では急遽ネットランチャーを手配したほか、山下町２丁目に新たにわな１基を設置し、捕獲に乗り出した。
石巻市では、サルと遭遇しても近づいたり刺激したりせず、市や警察に通報してほしいと呼びかけている。
一方、辻准教授は、このサルはいずれ交配相手を求めて別の群れを探しに行くとみていて、この場所に今後もずっと留まることは、考えにくいとしている。住民が穏やかな気持ちで過ごせる日は来るのだろうか。
（仙台放送）
