長野県中野市で4人が死亡した事件から6月25日で1ヵ月。出動した岳南広域消防本部が当日の救急対応の状況を明らかにした。猟銃を持った容疑者が立てこもる異例の事態。現場では救命措置よりも救急車への収容を優先したこと、2発の発砲音で隊員たちが一時避難したことなど緊迫した状況が浮かび上がっている。
午後4時31分、目撃者から通報
NBSが公文書公開請求した「災害記録表」。
岳南広域消防本部が事件を覚知したのは、5月25日午後4時31分、目撃者からの通報だった。村上幸枝さんが襲われた直後とみられる。
目撃者の証言―。
目撃者:
畑作業していたんです。そしたら「助けて、誰か助けて」と声がして、男が追いかけてくるのを見て、これはやばいかなと思って。左胸にサバイバルナイフみたいなでかいナイフで刺したんです
7分後(午後4時38分)、現場に到着した救急隊。「けが人が複数人いることが判明した」として、現地指揮本部の設置を要請した。
そして―。

40分余りの間に…
(災害記録表より)
「5時19分、要救助者、車内収容」
「5時33分、要救助者と接触、車内収容」
「6時2分、傷病者、車内収容」
40分余りの間に3人を収容。
3人は村上幸枝さんと中野警察署の池内卓夫さん、玉井良樹さん。

現場は猟銃を持って青木容疑者が立てこもっていた自宅の近く。
消防は「現場での安全が不明瞭だったため、その場で処置は行えず救急車への収容を優先せざるを得なかった」としている。
警察の見張り用に自宅の部屋を貸した男性の証言―。
警察の見張り用に自宅の部屋を貸した男性:
窓越しに(容疑者は)良く見えるので見ていたら(自宅に)出たり入ったりしていた。冷静な顔に見えた。怒りの顔ではなく普通の顔。(Q. 銃は)持っていたかな。容疑者宅の近くにもう1人、被害者がいることがわかっていましたが、近づけませんでした

2発の発砲音 その時…
午後8時前―。
(記者リポート)
現場の方から発砲音が聞こえました
午後8時前後、2発の発砲音が鳴り響きました。
警察が報道陣にも避難を呼びかけた後に容疑者が自殺を図ろうとして、発砲したことがわかった。

午後7時54分「避難指示」
(災害記録表より)
「午後7時54分避難指示。現地指揮本部を設置した場所から指揮隊は避難」
「8時5分、現地指揮本部引き揚げ」
銃声を受けて隊員たちは現場近くの指揮本部から避難。その後、本部をおよそ500メートル離れた公民館に移しました。

容疑者の身柄確保 その直後…
翌日の午前4時半ごろ、青木容疑者が投降し身柄が確保された。
消防もすぐに動く。
(災害記録表より)
「午前4時38分、救急車にドクターを乗せ(容疑者の自宅)付近に来るよう現場指揮本部から要請あり」
容疑者宅の敷地内で倒れていた竹内靖子さん。現場で医師が死亡を確認した。

PTSDを予防する「デフュージング」
事件では全職員の半分近くにあたるおよそ50人が対応し非番の職員も招集された。救急車も7台中5台が出動。
未曽有の事件だった。
岳南広域消防本部によると、ショックを受けた職員もいたという。
5月30日、31日には経験を語り合ってPTSD(心的外傷後ストレス障害)を予防する「デフュージング」を行い、北信総合病院の精神科医療チームによる面談も実施。31人の職員が参加したという。

事件から1カ月。
消防本部では「職員のストレスは今後も注意深く経過をみていかなければならない」としている。
(長野放送)