DV被害は、男女関係なく存在する問題だ。しかし被害者が声を上げ、実態が明らかになることはなかなかない。DV被害を受けた女性が語る苦しみから、宮崎県内の状況、そして社会全体に求められる対応について考える。

暴力はどんどんエスカレートし…

「殴る蹴るとか、馬乗りになって殴られるとか正座させられるとか。お金を要求されたら渡さざるをえなかったのでお金を渡していた」

これは、かつて元交際相手から暴力を受けていた女性の声だ。

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警察によると、2022年のDV被害の認知件数は890件で過去最多。そのうち男性は26%、女性は74%となっている。2023年は5月末時点ですでに419件と、2022年の同じ時期と比べ69件増えている。

そんな中、今回、被害者がDVの苦しみを語ってくれた。
宮崎県内に住むA子さんは、20代の時に交際していた男性から様々な暴力を受けていた。

A子さん:
私はですね、身体的なものもありましたし、経済的なもの、精神的なもの、あとは性的なものもDVの種類としていえばすべて含まれていたんだと今思えば思うんですけど、性的なものに関しては恐怖を感じている相手なので拒むこともできない要求を

約3年の交際期間で、暴力はどんどんエスカレート。「お前が俺をそうさせている、殴らせているんだ」「調子に乗るな」などといった言葉を日常的に浴びせられ、男性の機嫌をとることに必死だったという。

A子さん:
本当に相手から逃げたくて逃げたくて仕方なかったんですけど、私の家族に危害を加えると脅されていたので、本当に最後は夜逃げ、逃げるしかないかなと思って、両親にも何も言わずに

A子さんはこのタイミングでDV被害を知人に相談。それがきっかけで警察に被害届を提出した。その後、男性は脅迫の疑いで逮捕された。

2024年4月からは改正DV防止法が施行

DV被害について支援者は、社会の情勢も要因になっていると話す。

一般社団法人ハートスペースみやざき・財津三千代代表:
力の弱い人たち、賃金が安い立場のない人、仕事のない人、安心安全に生きるという権利は憲法で保障されているんですけど、それが奪われている。小さな家庭の中、カップルの中で。最近のデータでは4人に1人は何らかのDVを受けている。これは国民全体の心身の健康問題にあると私は思いますね。宮崎の若い女性の自殺率が増えているのがありますように、家庭の中でのDVがいろんなところに波及していく。DVというのは社会的な問題

こうした中、DV被害の防止と被害者の保護を図るための法律「DV防止法」の改正案が5月に国会で可決され、2024年4月から施行されることになった。

現在のDV防止法では、裁判所が加害者に対し、被害者に近づくことなどを禁止する「接近禁止命令」は原則、身体的な暴力だけが対象だが、改正法では言葉や態度などによる精神的な暴力も対象となる。

一般社団法人ハートスペースみやざき・財津三千代代表:
やっと日本でも精神的DVがいかにその人の心を壊して打撃を与える、殺してやるとかですね、今までDV防止法は売春防止法が根拠だったんですけど、それも関わっていくので、DV被害者の現状に沿った支援現場に変わっていくことを期待しています

体の暴力よりも重篤な“精神的DV”

2024年4月から施行される改正DV防止法では、DV防止法に基づいて出される保護命令の1つ「接近禁止命令」の対象が大きく変わる。
接近禁止命令は、加害者が被害者につきまとったり、被害者の家や勤務先などに近づくことを禁止したりするもので、これまでは原則、殴る・蹴るなどの身体的な暴力が対象だった。
今回はこれに加えて、言葉や態度による精神的な暴力で重大な危害を受ける恐れが大きい場合も対象となる。

また、接見禁止命令の期間も6カ月から1年に延長。保護命令を違反した場合の罰則も強化され、2年以下の懲役または200万円以下の罰金に引き上げられる。改正の柱ともいえる「精神的な暴力」について支援者はこう話す。

一般社団法人ハートスペースみやざき・財津三千代代表:
とにかく最近増えているモラハラ、精神的DVでは巧妙に言葉で追い込むんですよね。帰ってきて「どうしたの?」とか聞くと、「お前いつもどうして聞くのか」とか。言葉尻をとらえて巧妙に追い込む。けがとかは治療すれば治りますけど、心の奥に残った自分を壊されたというのは、本当にずっと残るんですよね。なので私は体の暴力よりも、DV被害者にとっては精神的DVは重篤なDVだと思っています

DVの実態を語ってくれたA子さんは、法改正は大きい変化である一方、申請などの手続きでは、けがをした際の医師の診断書や写真の証拠が求められるなど、その負担は大きく、立証の難しさを課題にあげていた。そして「被害者は物事を小さく見る傾向がある」とも語った。

少しでも「あれ?」と思ったら、相談しやすいところにぜひ相談し、まわりに助けを求めてほしい。なによりも、一人一人が相談相手になれるようDVの実態を理解していく努力が必要だ。

(テレビ宮崎)

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