2023年4月の統一地方選で鹿児島県内では、女性議員が大幅に増加した。県議会では女性県議が倍増したほか、大崎町のように初めて女性議員が誕生した議会もある。
有権者が求めた「変化の現れ」という声もある中、女性議員たちが目指すもの、そして、女性議員が誕生したことで浮き彫りとなった議会の課題を取材した。
大崎町初の女性議員は会社員と両立
2023年4月に実施された統一地方選挙で、鹿児島県内では、女性議員が躍進した。
この記事の画像(14枚)県議会では5人から11人に倍増。多くの自治体の議会でも女性議員が増えていて、大隅半島にある大崎町議会では、初めて女性議員が誕生した。
その大崎町議選でトップ当選を果たしたのが、藤田香澄氏。この日は、一般質問に向けて町民と子供たちが自由に集える場所について話し合っていた。
町民:
フリースクールが実際、正解かどうかも分からないと私は思う
大崎町議会・藤田香澄議員:
必ずしも子どもだけではなく、よく言われるのは年配の方も集える場所
藤田氏は長野県出身の28歳。リサイクル率日本一の大崎町の取り組みに興味を持ち、循環型社会を目指す会社に転職して2021年、大崎町にやってきた。
大学院で地域政策や行政学を学んだ経験を生かし、今回、初めて出馬。現在、会社の理解を得てフルタイムで勤務しながら議員の仕事との両立を図っている。
大崎町議会・藤田香澄議員:
住民の方と話しながら一般質問を一緒につくってみるとか、できる限りいろんな性別関係なく声を拾っていきたい。それが多様性を担保することだと思っているので
専門家「有権者が変化を求めている」
なぜ今、女性議員が増えているのか?自治体に男女共同参画のためのアドバイスを行う専門家は、背景をこう指摘する。
県男女共同参画審議会会長・オフィスピュア代表 保ゆかりさん:
「男性を中心とした政策の意思決定のあり方にこれでいいのか」「女性をはじめとする多様な人たちで考えていかないといけないのではないか」という意識が働いた。有権者が変化を求めているシンボル
女性県議が懇話会「注目されている」
前回の5人から倍以上の11人に女性議員が増えた鹿児島県議会。県議会の会議室では、会派の垣根を超えた女性議員だけの懇話会が開かれた。
柳誠子議員(県民連合・5期目 鹿児島市・郡区選出):
すごく注目されている。県民の皆さんの期待は高いと思うので
岩重礼議員(自民党・2期目 鹿児島市・郡区選出):
県民の声をとりまとめていければ
今回、県議初当選の宇都恵子議員は、1歳2カ月の子どもを育てながら議員活動に臨んでいる。5月に行われた常任委員会の奄美視察では、子どもを一緒に連れていけるのか、悩んでいたという。
宇都恵子議員(県民連合・今回初当選 鹿児島市・郡区選出):
「子どもを連れて行って大丈夫ですか?」という時に、中村素子委員長がすぐOK出してくださって「できる配慮は何でもさせるので言ってください」と事務局の方に言ってくれた。(子どもの視察同行は初めて)ありがたいことだなと。女性が委員長だったからかなと
岩重仁子議員(無所属・3期目 鹿児島市・郡区選出):
宇都議員がいるからこそ、今つくっておくみたいな。やらないといけないことの予算を上げないといけないと思っている。母子室、託児の仕組みとか
集まった女性県議たちは、議会の課題をそれぞれの目線で話し合っていた。
藤田議員の初登壇日に予想外の展開
6月14日、大崎町初の女性町議・藤田香澄氏は、本会議で初登壇した。緊張しながらも、町民と一緒に考えた質問を町当局にぶつけた。
議長:
1番、藤田香澄君の質問を許可いたします
大崎町・藤田香澄議員:
不登校、および不登校とは定義されないが学校に通いづらいと感じている子などは、現時点で本町にどのくらいいるのかについてお答えをいただきたい
ところが、1つ目の質問が終わると「ここで報道関係者の撮影機材については撤収していただきますのでよろしくお願いします」と、議長から、カメラは議場から退出するよう命じられた。一般質問のやりとりを事前に議会に取材申請していたが、冒頭の質問部分しか許可されなかった。
「開かれた議会」への壁
本会議は原則公開で、インターネットでもライブ配信されているのに、なぜか? 議長の答えは…
大崎町議会・富重幸博議長:
一般質問の流れのこともあり、冒頭部分のみにしていただいた
記者:
(撮影が)進行の妨げになるとは思えないのですが?
大崎町議会・富重幸博議長:
そこのところを切り込まれると、ちょっとこう…あとはノーコメントで
女性議員だから取材できなかったというわけではないが、今回、注目されたことで「開かれた議会の在り方」に対する課題が浮き彫りとなった。
さらに、こんな現状もあった。
大崎町議会の本会議場がある3階のトイレは男女共用。藤田氏や傍聴に訪れた女性は、1、2階にある女性用トイレを利用しているようだ。
初登壇を終えた藤田氏に手応えを聞いた。
大崎町・藤田香澄議員:
大崎町のこれまでの経緯、(行政施策で)足りていない部分を探し出していく作業が面白かったし、楽しみながらさせていただいた
同じ女性でも立場は多様
この春、鹿児島県で一気に誕生した女性議員たち。有権者の期待をひしひしと感じているようだ。
鹿児島県議会・平原志保議員(無所属・今回初当選 霧島市・姶良郡区選出):
男性女性にかかわらず、若者、高齢者に関係なく、変化、今までと違うものを求めていらっしゃる
鹿児島県議会・米丸麻希子議員(自民党・2期目 姶良市区選出):
私たちが女性代表と言われるが、私は独身で子どももいない。皆さん、立場はそれぞれなので、これだけ多様な女性が県議会に入ったことは本当にうれしいですよね
取材した日、女性県議らは、ベテランの柳議員の音頭で「鹿児島を変えよう!おー!」と気勢を上げた。
多様性が求められる現代社会において、議会や社会に一石を投じる存在になるのか?女性議員たちの挑戦が始まった。
(鹿児島テレビ)