全国で相次ぐ「闇バイト」による事件。福岡での実態、そして巧妙化する闇バイト募集の手口に迫る。
「闇バイト」による事件が連続で
警察官に取り押さえられた26歳の男。2023年6月11日に神奈川・川崎市の時計店に強盗に押し入り、逃走したところを現行犯逮捕された。

■川崎市 時計店強盗未遂事件(2023年6月11日)
警察「友だちか?」
男「分かんない」
警察「なんで?」
男「本当に分かんない」

そのわずか2日後には、愛知・名古屋市の時計店にも22歳と18歳の男2人が押し入り、金品を奪おうとして逮捕された。

相次ぐ強盗事件に共通しているのは、逮捕された若い容疑者が「闇バイトに応募して、秘匿性の高いアプリで指示を受けた」という趣旨の供述をしていることだ。全国で相次ぐ、若者たちの闇バイトによる事件。福岡も例外ではない。
「パパ活」危機意識は薄く…
福岡の夜の街を見回り、行き場のない若者たちの支援活動を行ってきたNPO法人「あいむ」。代表の藤野荘子さんは、若者たちの相談に乗る中で、福岡にはびこっている闇バイトの一端を知ることになった。

NPO法人「あいむ」藤野荘子さん:
福岡では、女の子のいわゆる「パパ活」。売春をあっせんするような「闇バイト」が横行している

藤野さんによると、犯罪組織は、まず闇バイトを集めるリクルーター役の少年を確保。少年はSNSなどを使って闇バイトをしたい少女を募集し、場合によっては売春をあっせんしているという。売春やそのあっせんは違法だ。

しかし藤野さんが話を聞いた少女たちは経済的に困窮しているケースも多く、危機意識が希薄だという。
NPO法人「あいむ」藤野荘子さん:
本人たちは「闇バイト」をしているという意識はないのではないか。抜け出せなくなったり、ほかの大きな犯罪に巻き込まれたりしないかが、心配
特殊詐欺グループ主犯格の男性が語る
SNSなどで高収入をうたい強盗や詐欺などの実行役を募る闇バイト。安易に手を出すことがいかに危険なのか。かつて、闇バイトを使う側だった男性は…。

元特殊詐欺リーダー格・フナイムさん:
「闇バイト」は、基本的には犯罪ですし、犯罪者の生けにえなんですよ。捨て駒なんですよ

特殊詐欺グループの主犯格として8年前に逮捕され、2021年に刑期を終えた男性。現在は、刑務所で呼ばれていた番号「2716」にちなんで「フナイム」と名乗り、闇バイトをはじめとした犯罪の撲滅活動に取り組んでいる。
元特殊詐欺リーダー格・フナイムさん:
いま「闇バイト」というのは非常に簡単になってますね、入り口が。僕らがやっていた2015年とか、それ以前の段階では「闇バイト」と言われるものに関しては、そうそう見つけることって容易ではなかった

以前は、闇バイトを集める際、地元の後輩や闇金に借金がある人などを人づてで集めることが多かったというが、いまは…。
元特殊詐欺リーダー格・フナイムさん:
勧誘の仕方が簡単になってしまったというとこですよね。インターネットの掲示板やSNSで「高収入」とか「日払い」とか「ホワイト案件」とか書くわけです。そういううたい文句ですね。気軽に応募できるような時代になってしまったのかなとは感じます

SNSや掲示版を検索してみると、闇バイトを募る投稿であふれかえっている。しかも、「高収入」「日払い」「ホワイト案件」といった、一見クリーンに思えるキーワードで、実際は闇バイトに誘導するよう、募集手口は年々巧妙になっているという。
元特殊詐欺リーダー格・フナイムさん:
あの手この手で言葉を変えてですね、募集をかけているというのが現状だと思います
さらにフナイムさんは闇バイトのリクルーターにとって、以前よりもリスクが回避しやすくなったことも闇バイトが横行する理由のひとつになったと指摘する。

元特殊詐欺リーダー格・フナイムさん:
秘匿性の高いツールというのが、どんどんアプリとして開発されてきた

リクルーターが闇バイトの応募者と実際にやりとりをするのは、テレグラムなどのメッセージアプリ。メッセージは暗号化され、サーバー上にもデータが残らないようにできる。
元特殊詐欺リーダー格・フナイムさん:
要はリクルーターに対してなかなか捜査の手とかね、そういうのが及ばなくもなってきましたし…

犯罪組織は自分たちに足がつかないようにする一方で、一度、つかまえた応募者を逃がさないようにする仕掛けも作っている。

6月のはじめ、フナイムさんがだまされたフリをして、闇バイトのリクルーターとテレグラムでやりとりをした画面には、応募者本人の個人情報はもちろん、両親の名前や連絡先、さらには顔写真付き身分証を持った自撮りや、自宅の場所が分かるような動画まで送ってくるよう求めてきている。
元特殊詐欺リーダー格・フナイムさん:
「あんたは逃げられないんだよ」と要は脅すこともできるわけですよ。やっぱり人間って、そこまで自分の個人情報を握られてしまったら、恐怖心がわくと思うんですよ
自らも23歳のときに闇バイトから犯罪に手を染めはじめ、5年以上の刑に服したフナイムさん。いまの若者たちに強い警鐘を鳴らす。

元特殊詐欺リーダー格・フナイムさん:
「疑うこと」っていうのがまず大事ですね、ひとつは。応募しないことですね。あなたの人生も破滅する。親の人生も破滅する。「闇バイト」は破滅しか生まないんですね。だからこそ絶対にやめてもらいたい
入り口は簡単でも、その結果、闇バイトには悪質で凶悪な犯罪の実行役を担う可能性が大いにあることを認識しなければならない。
(テレビ西日本)