2025年には5人に1人が75歳以上という高齢化社会を迎え、人手不足が深刻化する介護業界。そうした中、誇りを持って仕事に向き合う新人介護福祉士に密着した。

日々勉強!新人介護福祉士

高木紫帆さん:
ちょっと一回お部屋の方でゆっくりしませんか?

入所者:
もうえぇ。ここでえぇ

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高木紫帆さん:
ここでいい?一回お部屋でゆっくりしてからまたここでお茶飲みませんか?コーヒーかな?

入所者:
めんどくさい…(笑)

2023年3月に国家試験に合格し、2023年春から岡山・倉敷市の特別養護老人ホーム「ますみ荘」に勤務する新人介護福祉士の高木紫帆さん、20歳。(※高木さんの「高」ははしご高)

高木紫帆さん:
現場に出るとあまりうまく意思疎通ができないときがあるので、そのような場合ほかの職員の協力を得ながらちょっとずつ(会話)をつないでいっている

ますみ荘は、65歳以上で要介護度3以上の認定を受けた人など約110人が入所している。高木さんはそのうち1フロア約45人を担当していて、日々の食事や排せつ、入浴など日常生活全般をサポートしている。

高木紫帆さん:
少しずつ業務の流れが理解でき、業務以外のイレギュラーな対応も自分から進んでできることが増えた

この日、高木さんは87歳の女性のリハビリに参加した。

先輩に「重心がぐらつきやすいから、前かがみになったときに倒れこんでしまう可能性があるので、体を支えてあげながらいきますね
」などと、補助の仕方を教えてもらいながら、女性と一緒にトマトの苗を植えていく。

入所者:
いいのができますように

高木紫帆さん:
ね!いいのができますように。しっかりできたよ。ありがとうございます

トマトを植えた後、女性の手を洗い、ティッシュで拭こうとする高木さんだが…

先輩:
(ゴシゴシ)拭くと、皮膚が弱いので内出血や皮膚がやぶれたりするので、手を拭くときは優しく包んであげるように

全ての作業に思いやりを込めて…勤務してから約1カ月、少しずつ入所者との距離が近づいてきた。

入所者:
良いんですよあの子は。本当に素晴らしい子です。思いやりがあってすてきな方です

母の勧めで介護業界へ

高木さんが介護業界に興味を持ったのは高校生のころ。同じ資格を持つ母親の勧めがきっかけだった。

学生時代の高木さん
学生時代の高木さん

高木紫帆さん:
(最初は)介護に全く興味なかったが、母親が働く職場の話や入所者、職員との関係性の話を聞いて、さらに興味を持った

ーー高木さんの母が勧めた理由は?

高木紫帆さん:
性格や周りの人との関わり方をみて向いているのではと(勧めてくれた)

岡山市の専門学校に入学した高木さんは、国家資格の取得に向けて介護を取り巻く現状を学ぶうちに、資格の取得が自分の将来にとってプラスになると考えるようになった。

学生時代の高木さん
学生時代の高木さん

高木紫帆さん:
これから先、高齢者が増えていく中で何か一つ役に立つ資格があったら、絶対に不利にはならないし、必ず力になると思って、介護の資格や知識・技術を持つことが大事なんだと感じた

そうした高木さんの姿に、2年間担任を務めた先生も一目置いていた。

岡山医療福祉専門学校・角江津子専任教員:
みんなの前に立てるような学生だった。その先どうなるかを予測して、確認しなければいけないことをちゃんとわかって声に出して言える学生だった

尊敬してくれる職業・介護福祉士

昼食の時間は先輩と協力して食事介助に入る。自立支援のため、食事はできるだけ入所者自身で食べてもらうようにしていて、気付いたことがあれば積極的に手伝う。

高木紫帆さん:
うまく飲み込めない人はスプーンの3分の2や半分の量じゃないとむせにつながる人も多いので、先輩職員に確認したり本人の様子を見ながら、次の一口も時間をあけたりしている

食べ終わった後は、一日で最も力を使う大仕事、入所者の体位変換だ。

先輩:
上向きますよ。どうぞ上向いてください。しっかり声出して

高木紫帆さん:
はい。こっち向きますよ

一人一人、介助の仕方が違うため、次に何をするのか、しっかり声に出して共有する。

介護福祉士・矢野詔子さん:
声に出すことで利用者にとって間違いのない行動をとる意識づくり、それから介護は2人の息を合わせる日々のトレーニングに(重要)

岡山県によると、2025年の75歳以上の人口の割合は19.05%、約5人に1人が後期高齢者となる想定で、超高齢化社会に突入する中、介護業界は2025年問題を抱えている。

特別養護老人ホームなどの需要が高まる一方、介護福祉士の数は足りておらず、岡山県で1,543人が不足すると推計されている。

特別養護老人ホームますみ荘・小森弥彦施設長:
介護業界の特徴として、(介護職員の数)が減っているわけではなく、増えてはいるが追いついていないというところがある

入所者に「高木さんはどんな人?」と聞いてみると「やさしい」と話す。

高木紫帆さん:
祖父や祖母の世代を支えられる仕事は、自分の誇りにしても良いと思うし、周りの人も尊敬してくれる職業だと思う。入所者の皆さんの声に耳を傾けられるような介護福祉士になりたい

自分の理想とする介護福祉士を目指し、高木さんの奮闘の日々は続く。

(岡山放送)

岡山放送
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