長野県中野市で男女4人が殺害された事件。逮捕された青木政憲容疑者(31)は「ぼっち」という言葉を使い女性2人に「バカにされたと思った」などと供述している。「ぼっち」はひとりぼっちという意味。ただ、女性2人との接点はほとんどないとみられ、専門家は「被害妄想的な思い込みだったのでは」と指摘する。一方、独りでいることを悩む人は多いものの、決して恥ずべきことでないと話している。
“ぼっち”とばかにされたと思った
事件の第一通報者:
表情も変えず、ちゅうちょもせず、動作流れるままつかんだ、刺した。これでいて平然として息も切らしてないし
強い殺意があったとみられる青木容疑者。女性2人に対し「ぼっちとバカにされたと思った」などと供述している。 女性2人は毎日一緒に容疑者の自宅近くを散歩していたものの関係はほとんどなく、一方的に恨みを募らせていたとみられる。

犯罪心理学が専門 新潟青陵大学大学院・碓井真史教授:
彼の心の中では殺意が非常に強く、そして揺るがなかったんだろうと思います。こんな大それたことをしたら大変なことになると(通常)ちゅうちょする。ひたすら被害者を殺害する、その一心だったんだろう

犯罪心理学が専門の新潟青陵大学大学院・碓井真史教授。容疑者が供述している「ぼっち」と事件への影響を解説してもらった。
人間関係苦手に…孤立感
中学校までは同級生から「普通だった」と言われ、野球部にも所属していた青木容疑者。 須坂市の高校を卒業後、東京の大学に進学したが、中退した。「いじめに遭い人間関係が苦手になった」と話しているという。

その後、地元で農業をしていたが、「あいさつもしなかった」などと話す人も多く、孤立感を深めていったとみられる。
犯罪心理学が専門 新潟青陵大学大学院・碓井真史教授:
(成長するにつれ)実際に社会との関わりは薄くなっていたんだと思う。その状態を本人が納得していれば良かったけど、本人もそういう自分のことを否定していたのだろう。自分自身が否定していますから、社会全体も自分を否定しているだろうと思い込み、それがたまたま家の前を笑いながら歩いているその人たち、その人こそが(自分を)バカにして笑っているのだろうと思い込んで激しい敵意を向けたのか。自分の思いに全く疑いを持っていない被害妄想的な強い思い込みか

“独り”恥ずべきことではない
一方、碓井教授は「ぼっち」を気に病む若者は多いとしています。「恥ずべきことではないと理解してほしい」と呼びかけている。

犯罪心理学が専門 新潟青陵大学大学院・碓井真史教授:
一時的に独りになることは恥ずべきことではない。決してそんなあなたを笑ってもいないし、バカにしているわけでもない。一時的に独りになったとしても、そこからエネルギーを蓄えて自分なりに世の中と関わっていく方法を探していくことができるんだって思いを持ってほしい。学校や仕事を挫折する人、たくさんいると思う。そこで失敗があったとしても、やり直すことができる。周りも本人に世間一般的な成功を求めるのでなく、本人なりの人生を歩めるようサポートしていくことが大事
(長野放送)